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愛しきぬくもり、新生児期の終わり。

先月、この世界にやってきて、わたしの日常の1番真ん中に居座るようになった娘ちゃん。

産んだその日から、文字通りわたしの世界は一変してしまった。仕事にしろプライベートにしろ、今日はあれをしよう、これをしよう、と一日の流れやしたいことの決定権が自分にあったのに、その一切がなくなり一日の中心は我が子のことになった。

産後間もない頃は、身体のあちこちが不調の中、授乳、ミルク作り、おむつ替え、泣いているのをあやすことを一日の中で幾度となく繰り返す。お世話と家事であっという間に時間が溶け、気づけば一日が終わっている。 
そんな産後の娘ちゃんとの暮らしは、想像以上に大変だけれど、我が子の可愛さは特別である。

元気良くぱたぱたと動かす小さな手足。
つるつるでぷくぷくのほっぺた。
抱きあげたらわたしの方に身体を向けてぱくぱく動かす小さな口。
最近、じっとこちらを見つめるようになってきた可愛い目。
お腹が空いた、眠い、要求によって微妙に違う泣き声。
ご機嫌な顔、きょとんとした顔、不満げな顔、くるくる変わってゆくその表情。

何をとっても可愛いで満ちている。
毎日毎日、なんだこの可愛い生き物は…と思いながら育てている。少し前まで、わたしのお腹にいたことが何だか信じられない。

この1か月で我が子が好きなこともそうじゃないこともわかってきた。


身体を洗われるのが好きじゃないようで、お湯に入ってしばらくは、「まあ、悪くはない」みたいな満更でもない顔をするのに、ボディーソープで洗い出すと、もれなく泣きだす。特に首を触られるのが嫌らしい。

わたしが彼女の手を握りながら、「わあ〜」と高い声を出すのが面白いらしく、高確率で笑顔を見せてくれる。

授乳後、わたしの身体の上で寝るのが落ち着くのか、心地良いらしい。毎回ぽっかり三角形の形に口を開けながら寝ている。 

大きな病気も怪我もせず、健やかに育ちますように。
犯罪にも事故にも巻き込まれませんように。
周りの人に愛され、そして愛しますように。
穏やかに、実りのある人生を送れますように。

わたしの想いが言霊となって、この子を守ってくれるよう、茶色くてほわほわと柔らかい髪の毛を撫でながら、しょっちゅうそう念じている。
「生まれてきてくれてありがとうね。」
無垢な寝顔を見つめながら、そっと娘ちゃんに語りかけていると、結構な頻度で頬に涙が伝っており、慌てて鼻をすすりあげる。

大好き、可愛い、大切、愛おしい、尊い。
どんな言葉で表すにも足りなくて、この感情をなんと名付ければ良いのかわからない。


元々、どちらかというと感情の起伏は激しい方だと自覚しているけれど、産後は特に情緒のメーターが振り切っている気がする。
ああこれがいわゆる産後メンタルか…と思ったけれど、恐らく程度や頻度の差はあれど、これから一生、子の平穏と幸せを願い続けるのだと思う。


また、眠っていればちゃんと息をしているのだろうか、と小さな胸の上下を確認せずにはいられない。あらゆることにおいて、これでいいのだろうか、と気がかりになってしまう。  

月齢が浅いうちは、寝返りをうったり、手で払いのけたりできないので、布団で口元や鼻が覆われてしまうと、息が出来なくなってしまうことがあるらしい。
また、ミルクを飲んだ後寝て、吐いたもので
喉がふさがってしまうことがあるらしい。

戦慄した。親のちょっとした不注意がまさに命取りになってしまうとは。
なんてか弱く儚い命…。わたしだけでなく、この小さく、か弱い命を生かすためにどれだけの親が必死になっているんだろう。

事情があって生みの親の元で育てられることが叶わない子もいるけれど、どの子も周りの大人が細心の注意を払いながら、育ててきたに違いない。
この世界にいる誰もが、周りの大人からこうやって育てられて大きくなってきたんだよなあ…としみじみ実感する。


****

産む前、「母性」ってなんだろう、いつから芽生えるんだろうと考えたことがあった。

よくドラマなんかで、母子共に危険にさらされ一刻を争う場面で、
「わたしはいいからこの子を助けて…!」
なんて息も絶え絶え発する母の姿を目にする。けれど、わたしはまだ、そうはっきり言えないなあ…なんて冷静に思っていた。

「わたしを優先してください!」と言うのははばかられるものの、「この子を助けてください」と自分の命をさし出せる覚悟は、持ち合わせていなかった。

しかし、もし今後わたしにそんな瞬間が降りかかってきならば。もちろんあって欲しくはないけれど、間違いなく、自分の命より我が子の命を優先すると思う。それは、
この子に生きていて欲しい、
自分よりも寿命が長いだろうから全うして欲しい、
という思いもあるけれど、厳密にはどちらも違う。1番はわたしが、失う悲しみを背負いたくないから、という自分本位な思いである。 

この世界で共に過ごすようになってまだ1か月ちょっと。誰よりも短いお付き合いなのに、そう思わされる我が子の存在はすごい。



今日もお腹が満たされた娘ちゃんは、わたしの胸に身体を預けて、すうすうと寝息をたてている。
半開き口のちょっと間抜けで最高に可愛い寝顔。小さくて大きなぬくもり。

「新生児期」と呼ばれる1か月は飛ぶように過ぎ去ってしまった。

あなたが成長したら、新生児のときの記憶なんて微塵も残っちゃいないだろうけれど、わたしはどんな瞬間も目と心に焼き付けて、ずっと覚えていたい。

#育児 #新生児期

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