見出し画像

画像生成AIと対峙して

試行錯誤を魅せる時代が来た。
そう感じています。
イラストレーターの三堂いずみと申します。

さて、しばらく前のこと。
SNSにとあるメッセージをいただきました。
『素敵な方だと感じフォローしました。仲良くしてもらえると嬉しいです!』とのこと。

あらうれしー、と思いお返事をするため送信者さんのホームを拝見してみましたら
プロフィールに「AIイラストレーター」の文字が。

……??
AIイラストレーター?????
『仲良く』の意味、ちょっとよくわかんないな……!?

***

この時をきっかけに
『自分が、画像生成AIについてどう思っているのかを表明すべきだ』と強く感じるに至りました。
各種プロフィールには既に明記していますが……今回はこれについて記事として語りたいと思います。

まず、先ほどのメッセージにどう返答したのか。
そして、今自分に何ができるのか……を考えた過程と、結果の話をしていきます。


メッセージへの返答


以下のようにお返事しました。

こんにちは、メッセージありがとうございました。
恐縮ながら、私はAIイラスト技術にフレンドリーな印象を持っておりません。
フォローは解除していただいてもそのままでも結構ですが、相互に情報を共有しあうことは心理的に困難に感じております。どうぞAIフレンドリーな方々との空間をお楽しみください。

すると、端的かつ丁寧なお返事が返ってきてフォローは解除され、やりとりは終了しました。
よかった、聞く耳を持ってくださる方で……。

このお返事、私の気持ちは
『どうぞAIフレンドリーな方々との空間をお楽しみください。』の一文に集約されていて
このやわらかな包装を紐解いて並べますと
『知らんがな。』
と、なります。

画像生成AIの生成した画像は、綺麗だし、多くの人にとって魅力的に映るのもわかるし、それを愛でる文化ができるのも頷けます。
しかし……
知らんがな〜〜!!
私はそれを鑑賞する楽しみがわからないし、画像生成AIで絵を編集し発表する人間のことをイラストレーターだとは思わないし、自分の作品をそれに使われることも良しとしません。
故に仲良くはできません。
以上だ……!!

しかし、あれです
私がきちんとSNSのプロフィールに明記していなかったのもいけなかったなと反省しました。
そこで
『無断転載AI学習禁止』
と、端的にプロフィールに追加しました。これで良かったかなあ。何も書いていなかった頃は、AIフレンドリーな人物としてうつっていたのかもしれないね。勘違いさせて申し訳なかった。

…… ……いや、うーん。
画像生成AIを使う全ての人が「AI学習にイラストレーターの絵を無断使用している」とは限らないとは思うのですが、そうして組み上げられたシステムを利用することには同意しかねるといいますか。

そもそも、なぜいい印象がないのかというと、この「自力で絵を描いている人々に嫌がられることを無断でしているシステム」がベースにあるからなのですよね。


『禁止』と書かれなければ、していいのか?

たとえば街中には
『ポイ捨て禁止』『無断駐車禁止』『万引き禁止』
など、書かれていることがあります。

じゃあ書かれていないところならしてもいいのかというと……良くないですよね。
今、SNSに絵を上げる方々は皆がんばって『無断転載AI学習禁止』を訴えなければならない状況なわけですが、これは……『この人からは言われてないから、この人の絵をAI学習させたり、似たような絵を出力して儲けたりしてもいいよね!』と思う人間が多いことを警戒せざるを得ない世の中だからですよね。

かなしー、かなしー。
AIの成長速度に、人間の倫理観の成長速度がついていっていないと思うのよ……!!!
そもそもの「著作権」に対する重要性がこの10年ほどでやっと育ってきたかしらというところでの、画像生成AIの登場。

なんかもっといい登場の仕方はなかったものか……と、私は日々悲しく思っています。そしてもちろん怒りもあります。なんてものを野放しにしてくれやがったんや……。

画像生成AIは、封じ込められるのか?

無理でしょう、と思っています。
何しろ人間は便利で綺麗なものが大好きです。ダメと言われても進化は止まらないでしょう。

そして、『誰もが認める美しい絵』を目指して描くとして、自分がAIイラストレーションを超えることは不可能だな、とも感じています。
その領域に至るまでの努力を楽しんで行えるか……そして達成したとして、そこに喜びを感じることができるか、と考えると、おそらく無理そうです。

では、私には、一体何ができるのでしょうか。
考えずにはいられない問題です。


今自分に何ができるのか

外の意見

さてここで【絵をまったく描かない・理工学部出身のオタク】代表として私の旦那氏にインタビューをしてきましたので、彼の意見も引用しておこうと思います。
絵を描く人間とのご縁ばかりのなかにいる私にとっては、身近ながらも貴重な意見!!

織物の歴史と一緒かなと思う。
機械が機織りをするようになって機織り屋は仕事が奪われて、しかしたとえば『西陣織り』とかは残っている。
絵の位置感も『伝統工芸』の領域により近づいていくんじゃないかな。

作品のバックグラウンドや、素材、個性に光るものがあれば、それを好む界隈の人たちには支持されるだろうし、
一方で、こだわりのないシーンや消費者にとっては機械製品であることに問題は感じなくなっていく。

ちなみに自分は、そのイラストが自分の好みにすごく合っていれば、描いたのが人間かAIかはあまり考えずに『いいな』って思う。

BY 【絵をまったく描かない・理工学部出身のオタク】
旦那氏

なるほどー。
だいたい私も同じようなことを考えていましたが、最後の一文は、自分からは出てこない意見なのですごく、ふむふむ、と思いました。

(かつて漫画家さんたちが一斉にデジタル作画に進出した頃……デジタル特有の、コマ割りの正確すぎる感じやトーンの削りの癖、線の端の処理が、漫画を読んでいる間じゅう気になって気になって、話が頭に入ってこなくて困った時期が私にはありました。
AIイラストレーションからも、似たような『隅が気になってしまって頭に入ってこない感じ』を、たまに感じます。)

内の意見

内……というか、私自身への自問自答です。

では、絵が『バックグラウンドを有する伝統技術』としての価値を問われる時代が来ていると仮定して、私はどうしたいのか……と考えると、

  • それでもやっぱり、描くのは好きだし続けたい。

  • バックグラウンドがないなら、今からでも見せていきたい。幸いなことに私はたくさんのことを考え続けているし、それなりに長く生きてきたし、そこをお見せすることはきっとできる。

  • もっともっと、オーダーメイドなことをしてみたい。

というようなことを、思いました。

ですから、たとえば……ずっと気になっていることのひとつに『ストックイラスト』があるのですが。
ストックイラストは、自分が新しく描き続けている間も、過去に描いた絵が売れたり使ってもらえたりするという点に素晴らしさがあるなーと思っていて。やってみたほうがいいかな、どうしようかな……と、いつもチラチラ思うのです。

それをやることに向いている方もおられますし、やることには大きな意味があると思います。
しかし同時に、私には向いてないのかも、とも思うのです。
なぜなら私は、オーダーメイドなことをしていきたいと感じているから。

絵や作品で、誰かにとっての『あなただけの宝石のような、輝く気持ち』を贈りたい。
それは仄暗かったり、見たこともない色だったりしてもいい。
私はそういうものを創り上げたいんだよなあ……と感じています。

オーダーを受けてお作りするのももちろんですが
自分から発信するものについても、そういう気持ちで作っているし、作り続けていきたいのです。
まだまだごちゃごちゃしていて拙いかと思うのですが……それでも、挑み続けたいなと。

限られた魂の時間をどこに削っていくか。

私はここに、削って、ちょっとでも光らせて、いきたいのです。

考えた結果

やること① 意思表明

これは冒頭に述べた通りなのですが
『無断転載AI学習禁止』と、名言する。

もう……なんか……言わないと伝わらないので、言うしかないっ!
今はそういう時代なのだと割り切って、ちゃんと言っていこうと思います。

一方で、絵自体にたくさんのノイズをかけて絵が見えづらいくらいまで保護する……というのは、出始めのころならまだしも、今はもはやあまり大きな意味を持たないのかなとも感じています。
もうAI学習は行くところまで行っちゃっているし、どこまで画像上で保護しようとも剥がす側とのいたちごっこになっている感じがするのです。

でも、自分の絵が自分に著作権があるよ!ということを表明し続けられるようなデータの構造が実装されたらいいのになあとも、同時に思っています。それはとても大切なことです。今後のインターネットや画像保存形式そのものの構造を担う企業さん方に、期待したいところです。


やること② 表現の場を増やす

これは今ここで、やっていることです。

実はね……私はAIが出てきてからずっと、水面下で怒り続けていて。

私はSNSに積極的に参加することがちょっぴり苦手で、でも楽しくワイワイとTLを賑わす様々なイラストレーションが流れていく様は好きなのです。
遠くの祭りを少し離れて眺めているような風情。

それが……画像生成AIの登場によって、『どうしよう!絵を守らなきゃ!』という騒ぎで、誰もが疑心暗鬼におそるおそる、これでいいのか?と色々工夫を凝らす感じになって。
しばらくの間、私はすごく……怒っていました。
何てことしてくれやがんだAI、祭りにボヤが起きてんぞ、と。

でもなんていうか、見てる場合じゃなかったですよね。

少なくとも、祭りに参加してない私には怒る場所も悲しむ場所も存在していない。みんなと同じにできなくてもいいから、私なりにできる場所から参加してみよう!表現しよう!

……と、思って始めたのが、このnoteです。

書き始めてみたら思った以上に話してみたいことがたくさんあって。さらに想像以上に読んでくれる方もいらっしゃったことで、『意味はあるんだ』と感じることができています。

いつも長い話になりがちで恐縮です……
ここまで読んでくださってありがとうございます!!


おまけ・画像生成AIのクリーンな活用を考える

画像生成AI という技術自体は、本当にすごくて、人間ってば未来に来てる~!とは思うんですよね……!!だからこそ、クリーンな活用法はないのか?とも考えました。

私の思う活用法は、こうです!

画像生成AIプロデュース会社『〇✕企画』
所属する絵師8名によって描かれたイラストレーションのみを学習させた独自の画像生成AIを、月額〇〇でご利用いただけます! 内部交流所にて、生成した画像をお互いシェアしあって楽しむこともできます。
我々が育てたAI独自の絵柄や個性の広がりをお楽しみください!
※外部で使用する場合、『〇✕企画』のロゴが自動的に付与されます。

ロゴ無しの商用利用にはプレミアムプランとしてプラス〇〇円、さらに学習内容をリクエストするにはプラス〇〇円~~ です!

みたいな!

もしくは、こうです。

新作格闘ゲーム、『〇✕』!
当社の新進気鋭のイラストレーターたちによって鍛え上げられた画像生成AIシステムを搭載! あなた好みのキャラメイクを無限大の可能性でお楽しみいただけます!
※スクショ等の共有は可能ですが、ゲーム内で作られたキャラクター画像や動画は基本的にはゲーム内のみでご利用ください。

みた~いな!

つまり、
学習先のイラストレーター対象を公的に絞ってほしい。
生成された画像の使用エリアも絞ってほしい。

そうなったらいいのにな~、と、思っています。
実際前者は面白そう!って思う団体はいるんじゃあないかしら。
どうかしら。

どちらにしても、私はあまり興味はないのですが……。

ああ、もっと、生き生きとした、描く人の心の籠った絵を、見たい!
埋もれるほど、見たい……!!
そして私も、描きたいです!

2013年制作 『できたよ!』
画用紙にアクリル絵の具・神奈川県の絵画展にて展示


いいなと思ったら応援しよう!

三堂いずみ
お読みくださりありがとうございます!記事のシェア、ご感想等いただけましたら嬉しいです。 もしもチップで応援いただけた場合には、ありがたく、絵や文の学びに使わせていただきます。