香港中央圖書館で昔の音楽を聴く
私は普段「広東語カバーソング事典」という記事をほぼ毎日upしていましす。これらの記事はすべてマガジンにまとめています。
あまりにも特殊な趣味なので説明がしづらいのですが、なにそれ?と思った方はまずこちらをご覧ください。もっとも記事は長いので、興味のない方はスルーを推薦します。
そしてこちらが「広東語カバーソング事典」のマガジンです。記事はまだ増え続けます。もちろんこちらも興味のない方はスルーを推薦します。
私は長年広東語カバー音楽を調べてきました。しかし、70年代以前の古い曲や、いわゆる一発屋、あるいは早々に作曲家に転身してしまった歌手などは、動画サイトでも見つからず現物のレコード類も入手困難です。
これまで様々な方法で調べて来ましたがいよいよ限界を感じ、ついに香港中央圖書館で試聴することを思いつきました。中央圖書館は日本で言えば国会図書館に該当します。
香港公共圖書館のホームページを開き「多媒體資訊系統」にアクセスすれば、香港にあるすべての公共図書館にある収蔵品を調べられます。ただサーバが弱いらしくたまに落ちますが、時間を置いて再度アクセスしてください。目当てのアイテムを見つけたら「館藏使用地點」をクリックして、収蔵されている図書館を確認します(ただし、レコード類は中央圖書館にしか収蔵されていないと思います)。
今回訪問するにあたり、どんなレコード類があるか事前にこの「多媒體資訊系統」で調べました。聴きたいアルバムすべてが揃っているわけではありませんが、これぞ!と思うアルバムを15枚ほど見つけました。
中央圖書館の場所はMTR銅鑼灣駅と天后駅の間にあります。高士威道をはさんで維多利亞公園の反対側です。
今回泊まっているホテルのある尖沙咀からMTRに乗り、天后駅で降りて歩きます。到着して入口ドア脇の受付らしき女性に声をかけ、旅行者なのでIDがないことを伝えると、利用する部門に直接行くように言われました。そのまま「視聽資料圖書館」のある6階までエスカレータで登ります。
ここはDVDも観られるフロアで、日本では入手困難なテレビドラマがいくつも展示されています。香港のDVDはリージョンコードが日本と違い、ビデオ屋で買って帰ってもそのままでは観ることができません。一瞬「ここならあのドラマのDVDが観られる!」と思いましたが自重しました。あれを観はじめたら一日では終わりません。
私は広東語の聞き取り力が弱いので、つたない英語で受付カウンターに「旅行者でIDがないけれど、こちらのレコードとCDが聴きたい!」と伝え、予め聴きたい曲を調べてプリントアウトした紙を見せました。
日本人が訪問するのは珍しいようで(そりゃそうでしょうね)、後ろで何か相談しています。いくつか質問のやり取りの後、無事申し込み用紙を出されました。
名前とパスポートナンバーを記入して、レコードとCDを出してもらいます。ただ、一度に借りられるディスクは限られているので受付と試聴ブースは往復しました。
国会図書館だとプレーヤーはすべて職員が操作しますが、ここのブースでは自分でやらなくてはいけません(ちょっと管理ゆるくない?)。傷をつけたりしないよう慎重になります。なお、レコードとCDの外部への持ち出し(貸し出し)はできません。
何枚かのCDを返して、さて次は?と思ったら、残りのCDは10階にあるのでそちらで聴いてくれとのこと。
10階は「藝術資源中心」と事務所になっています。と言うことは、私の目当てのCDは貴重?でめったに聴く人がいないのかな?普段こちらに来る人も少ないらしく、エスカレータは9階までしかないのでエレベータで移動します。なおレコードは全部6階にあるので、10階に移動することはありません。
早速10階の受付カウンターで事情を説明すると、話が通っていたようで割りとスムーズに対応してくれました。パスポートも不要でした。
ちなみに10階で私に対応してくれた職員は明らかに新人アルバイトで、上司に当たると思われる中年女性が常に指示を出していました。ゴメンね特殊な事例で。でもこういう経験は、あなたのキャリアには決して無駄にはならないよ。
このフロアは6階とは違い、CDはプレーヤーでなくPC上で聴くシステムだと説明してくれました。
ただここで一つ問題が。
私は香港で主流の「倉頡輸入法」の漢字入力ができません。そこで、キーボードを「ピンイン入力」に切り替えられるかと聞いたところ、結局職員におまかせになりました。重ねがさね手間のかかる利用者ですみません…。
ここでくだんのアルバイト君が試聴ブースのPCを操作してくれたのですが、どうも様子が変です。
聴けることは聴けるのですが、部分的にマウスが反応しないので曲の早送りもリピートもできず、CDの1曲目から最後まで通しで聴くしかできないのです。
これは大変、今日中に聴き終えられるかな?とあきらめつつ1枚目のCDを聴いていました。
すると、これはマズいかも?と判断したアルバイト君が動きます。試聴ブースから受付に戻った彼を含め、3〜4人の職員が受付のPCモニタの前で相談し始めました。恐らくは「主任、マウスが反応しません…」「ちゃんと手順どおりやったの?」「やったけどダメです」「どれどれ…あれっ!なんで動かないの?」みたいな会話が展開されていたのだろうと想像します。街中では声の大きい香港人ですが、さすがに図書館ですから声は小さいです。
結局隣のブースに移動し、足元にある鍵のかかったキャビネットを開けて「CD-R專用」と書かれたPCで聴くことになりました。こちらはちゃんとマウスが反応します。
1枚聴き終えるたび受付に戻り、次のCDを出してもらいアルバイト君の手でセットされるのですが、その間も職員が受付のPCに頭を寄せ合っている光景が見えます。どうやら私の依頼により、図らずもシステムのバグが発覚したようです。
私がすべてのディスクを聴き終えたあとも、職員はPCをいじり続けていました。みんな頑張れ〜。(←無責任)
こんな感じでアクシデントはあったものの、私的には大きな収穫がありました。
試聴したディスクに思わぬカバー曲が入っていたりして、ある意味予想以上の結果になりとてもうれしかったです。
もちろん、CDジャケットに意味不明な記述があったり(「作曲:タイカワンキメラ」←誰やねん)、また「これは違うじゃん!」という曲もありましたが、違うということが分かったこと自体収穫です。
今回利用して感じたのは、「職員の皆さんはとても親身に対応されていた」ということです。つたない英語であっても、こちらの意図をくみ取ろうと努められているのがわかりました。旅行者の私を香港市民と同様に対応していただいたのですから、そこは感謝しかありません。
本当は北京語で会話すればスムーズだったのかな、とも思ったのですが(英語よりはマシな程度ですが)、香港で北京語を使うということに私は若干の気後れ感があるのです。
香港に長い方・詳しい方にはお察しいただけるとは思いますが、考えすぎかな?
今回私は音楽を聴く目的で訪問しましたが、もちろん本を読みたい方にもおすすめです。旅行者などでIDを持っていない人でも、18歳以上であれば1冊当たりHK$170のデポジットとパスポートで貸し出しが許可されます。当日の時間に余裕がある方ならそのまま館内で読めばいいですし、何よりゆったりしていて日常の喧騒を忘れさせてくれます。
中央圖書館、いいですよ。
《香港公共圖書館のホームページ》(英, 繁, 簡)
https://www.hkpl.gov.hk/tc/index.html
《参考文献》
※追記
「広東語カバーソング事典」書籍化しましたのでご覧ください。
アマゾンか楽天で購入できます。