「口の立つやつが勝つってことでいいのか」
頭木弘樹さんの新作エッセイ集。頭木弘樹さんは、文学紹介者という肩書きで活動されており、ご著書は好きでよく読んでいる。
noteもされていて、そこに載っていたエッセイも含まれているのだけど、今回もまたとても良かった。
頭木さんの本の面白いところは、徹底して弱いところだ。弱くても良いんだ、と思えるところだろうか。
なんとなく社会が能力がなくてはダメ、強くならないとダメ、みたいなところがあると思う。私も最近内科に行って結局血液検査に異常がないとなると、強く生きてください、とか言われた。
強く生きるってなんだ?と反発したけれど、この行き場のない気持ちは頭木さんの本で和らいだ。またささやかに救われた。
個人的には、台風の夜にいろんな生き物が集まってきた話は良いし、夜道でライトを使ったら闇がより深く見えて、というのも好き。あまり色々書いてしまうと、読んだ時の「ほぉ〜」という何ともいえない納得感みたいなものが薄れるような気がして。
そんなに大きく心が震えるというよりかは、一滴の水が落ちて波紋が広がるような感覚だ。
「絶望名人カフカの人生論」もそうだけど、そんなに明るくはないけれど、ささやかな灯りが見えるような本で、良かった。あまり明るい灯りももう眩しいから、これくらいがちょうど良い。