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『どうする家康』 第22回「設楽原の戦い」 感想

概要

放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年6月11日(日曜日) 18時00分~18時45分(BSP、BS4K)
     2023年6月11日(日曜日) 20時00分~20時45分(総合)

脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ

番組公式サイト リンク

感想

血族という重圧

 「武田信玄という存在」の重圧。それは敵だけでなく味方にも大きくのしかかっていました。特にそれを受けていたのは武田勝頼。「信玄の息子」という他者からの眼差しや「信玄を超えうる器」と評されたことからの焦りが、今回の勝頼には色濃く見えました。
 設楽原の戦いにおいて、武田軍が敗れた最大の原因はこの"焦り"だと考えています。敵の挟み撃ちを気取った時点で一時退却し、機を待って攻勢に出るという方法もありました。ところが、勝頼は重臣に「信玄なら退くだろう」と言われたため、「信玄を超える」ことだけを考えて兵を進めました。天下取り目前で病死した父の姿を見て「機を窺う」ことが悠長に思えるなどの思いは分かりますが、「一か八かで前進すること」が「勝てる戦のみ戦う(信玄)」より優れているとは限りません。そもそも信玄は周到な前準備・計略によって勝てる確率を底上げしているからそう見えるという点もあります。
 焦りで大局が見えなくなり、「信玄を超える」「信長と家康の首をとるまたとないチャンス」にばかり気を取られて敗れた勝頼は、かつて信玄の言った「勝者は、まず勝ちて戦を求める。敗者は、まず戦って勝ちを求める」を皮肉にも敗者として体現してしまいました。
 ともかく、この戦いを機に戦国乱世の勢力図は大きく変化するところとなります。

 一方、松平信康もまた、設楽原の戦いを機に大きく変わっていきました。
 かつて(冒頭での回想)は文字通り虫も殺せぬ優しい男の子だったのに、あの戦いから、「この戦で何人の武将を討ち取った」「儂の姿を見て逃げるものもおった」と自慢げに語る戦闘民族になってしまいました。先の合戦で「多くの人の死」を目の当たりにしたことが変貌のきっかけなのは言うまでもありませんが、つくづく「環境は人を変える」「朱に交われば赤くなる」ということなのだなと思います。
 とはいえ、かつての優しさも完全に消えたわけではないようです。ラストでは殺した兵がゾンビさながらに蘇って襲いかかるという悪夢にうなされていました。乱世と情の狭間で揺れる信康もまた、環境から来る重圧に圧された者と言えるでしょう。

 細かいところですが、合戦で武田騎馬隊の兵が次々と三段撃ちの餌食になっているのを見た時の各々の反応が印象的でした。
 はしゃぐ秀吉とそれを諌める信長にはある種"育ちの差"のようなものが見えましたし、「これが強者どもの死に様だ。よく見ておけ」という信長とただ呆然と眺めるしか出来なかった家康・信康では力や天下取りに際する"気概"の差を感じました。

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