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『ブラックペアン シーズン2』 第6話「メスを持った看護師&去り行く医師」 感想


概要

放送局:TBS系列
放送日時:2024年8月18日(日曜日) 21時00分~22時09分

原作:海堂 尊『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』(講談社文庫)

脚本:槌谷 健、守口 悠介、穴吹 一朗
音楽:木村 秀彬
主題歌:小田 和正「その先にあるもの」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
監修:山岸 俊介(イムス東京葛飾総合病院)
プロデュース:伊與田 英徳、武藤 淳、佐久間 晃嗣
演出:加藤 亜季子
製作著作:TBS

番組公式サイト リンク

感想

渡海先生が東城大を去ってから6年、
また一人東城大を去っていく者が現れた。

 世良先生の衝撃的なモノローグから始まる今回。
 今まで(主に天城先生に)辛酸を嘗めさせられた菅井教授が大胆な"攻め手"に転じます。それは大企業「ウエスギモーターズ」会長の上杉歳一氏(演:堺正章)への投資依頼と、それを餌にした天城先生への勧誘。天城先生は上杉会長の個人資産に釣られてあっさりなびきましたが、菅井教授ははなから天城先生を使い捨てにする予定。さながらキツネとタヌキの化かし合いかのようです。

 一方、猫田主任の過去も明らかになりました。それは8年前に維新大学で起こした「無免許での医療行為」。看護師として培った観察力や経験則からくる、良く言えば「("自分なりの"ではあるけれど)根拠に基づいた行為」・悪く言えば「良かれと思って」なのでしょうがそれを許したら「何のための医師免許なんだ!」って話ですからね。こればかりは仕方ない。
 それはさておき、仮眠室での天城先生との会話、意味深というかすごく"行間"を感じる言葉選びですね。「米派かパン派か」という話を「相容れない人間性」のメタファーとして扱い、双方の意味で「だから私(猫田)はあなた(天城)が嫌い」と言い放つ。海堂先生の「小説家としてのプロフェッショナル」を感じる会話でした。

 そしてエルカノ・ダーウィンのプロジェクトにも動きが。維新大の早川玲子先生(演:瀧内公美)が心疾患で倒れ、自身が開発に携わるエルカノでの手術を受けることに。それにしてもこの時の菅井教授の言葉にはちょっと外道さを感じました。早川先生に対して「君が被験者になれば、新たな被験者を探す手間が省ける」と笑いながら言うあたり、常日頃から悪い意味で他者を道具同然に見なしていそうなのが伺えてしまいます。
 そうこうしているうちに、早川先生の状況がのっぴきならないことになり、さらには天城先生がゴルフで腕を痛める(=すぐには"ダイレクト・アナストモーシス手術"はできない)という二重のピンチに。やむなくエルカノを用いた手術ですが、突如猫田主任がエルカノのアームを取り外し機能停止させるという暴挙に。彼女なりの判断によるものですが、まさか同じ轍を踏むとは…。彼女は同じミスを繰り返さないタイプの人だと思っていたので、関川先生(演:今野浩喜)に珍しく同調して「何やってんだお前ぇ!」と口走ってしまいました。
 大事には至らなかったものの、天城先生や世良先生が携わっていないとはいえ実に危なっかしい。ある意味では本作一ハラハラした手術でした。

 後日、早川先生の容態が再び悪化し、またしても猫田主任がメスを握るという暴挙に。「二度あることは三度ある」とは言いますが、なんでまたそこまで固執するのか…と思いきや、ここからが天城先生からの種明かし。なんと猫田主任は看護師を務めながら東城大医学部に入学し、医師免許を取得したのです。そして早川先生の手術は天城先生やエルカノのフォローもあってなんとか成功。手術シーンで流れた音楽はヴィットーリオ・モンティの「チャールダーシュ」。テンポの速い音楽で、(エルカノ&猫田先生のサポート付きとは言え)左手だけでも手術できる「天城先生の華麗な手捌き」と、遅れないので精一杯という「猫田先生の緊張」が上手く伝わる曲のチョイスでした。
 僕自身医学部在籍経験はなく、医学部生だった友人もいないので憶測にはなるのですが、佐伯教授の手助けや渡海先生の指導があったとはいえ「仕事をしながら医学部に通い、医師免許を取得するまで猛勉強する」って簡単な話じゃないですよね。サラッと流されていましたが、猫田主任の努力と「医者になるまで絶対に諦めない」という意志("意地"とも言えるかもしれない)の強さがこれだけでも推察できました
 ちなみに今回1度目の暴挙についても、エルカノの誤作動を止めるための措置。誤作動はかつてエルカノの責任者であった野田先生が(恐らく逆恨みから)仕組んだことで、これで警察の捜査が入るためエルカノ・ダーウィンのプロジェクトは打ち止め。悲嘆に暮れる早川先生に猫田主任が言った「生きていればやり直せる」は、月並みな言葉選びですが"やり直せた"猫田主任だからこその説得力がありました。
 その一方で菅井教授の"攻め"は大失敗。上杉会長にも見限られて天城先生に直接手術されることに(ちなみに"賭け"は「エルカノの手術が成功するか否か」で、上杉会長は"失敗"に賭けた)。いうなれば「負け確定の立場」だからとはいえ、ここまで大胆な攻めが裏返しになると掛ける言葉もないです…。

 そして、猫田主任は東城大を去って、"医師"として海外の大学病院に赴くことに。天城先生の「貴方なら絶対"良い医者"になれる」に対する猫田先生の「私は"悪魔のような医者"になる」という言葉、言葉選びは真逆ですがその意味するところは同じように感じられました。それは「どんな手を使っても患者を治す医者」。僕も猫田先生ならなれると思います。

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