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『ブラックペアン シーズン2』 第2話「神に愛された悪魔VS少女の祈り」 感想


概要

放送局:TBS系列
放送日時:2024年7月14日(日曜日) 21時00分~22時09分

原作:海堂 尊『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』(講談社文庫)

脚本:守口 悠介、槌谷 健
音楽:木村 秀彬
主題歌:小田 和正「その先にあるもの」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
監修:山岸 俊介(イムス東京葛飾総合病院)
プロデュース:伊與田 英徳、武藤 淳、佐久間 晃嗣
演出:西浦 正記
製作著作:TBS

番組公式サイト リンク

感想

 晴れて桜宮心臓外科センターのセンター長に着任する天城先生。日本に来るやいなや様々な先生のオペを"観察"したり新病院への赴任を「金のため」と称したりとやりたい放題。とはいえ、彼の「清貧的な考え方が日本の医療を死なせた」という主張は正論だと思います。医療に限らず、"清貧"を良しとし、利益を受けることは一事が万事"悪"として相互監視した挙句、余力がなくなってジリ貧になる。悲しい話ですが、今の日本もまたそういった状況と言えるでしょう。

 今回対処する患者さんは洋菓子店『シゲノ』店主の繁野隆道さん(演:誠直也)。心臓に疾患を抱えており、天城先生だけができるダイレクトアナストモーシス手術が必要。そこで天城先生が孫娘の結衣ちゃん(演:堀越麗禾)に持ちかけた"賭け"は「『シゲノ』看板メニューのアップルパイを完成させること」。そして彼がかけた言葉は「出来が悪ければおじいちゃんは死ぬ」。子供相手であってもこの言いよう。「一人の勝負相手として見ている」と言えば聞こえはいいですが、これは"悪魔"としか言いようがないですね…。
 天城先生は繁野さんの手術を自分のデモンストレーション舞台として用いることに決定。助手に各部門のエース級医師・看護師を招集しますが、"観察"の結果そこに黒崎誠一郎先生(演:橋本さとし)の名はなし。あの"観察"はただの冷やかしではなく、医師の技量から精神性に至るまで、文字通り「隅々まで観察し尽くしていた」というわけですね。こういう布石の敷き方はさすが海堂先生だと思います。
 一方の"賭け"は、猫田麻里主任(演:趣里)を"実験台"としたドッキリ形式で実施。花房美和さん(演:葵わかな)からアップルパイを渡されると、猫田主任は一口食べた瞬間『シゲノ』特有の「米粉を使ったアップルパイ」だと見抜き、見事"賭け"は結衣ちゃんの勝利。この時の天城先生の言葉遣いは"賭け"を持ちかけた時とは打って変わって、優しく誠実に患者やその家族に向き合っているように感じられます。彼自身は自分なりに患者に誠実に向き合っているとは思っているでしょうが…、「二重人格なのかな?」と戸惑ってしまうほどの言葉遣いや細かい言動の違いは流石二ノだなと感嘆しました。

 満を持して迎えたオペ当日。心臓以外取り扱わないという"縛り"やダイレクトアナストモーシス手術のリスク等をテキサス医科大学准教授でプレゼンターの安島恭也(演:新納慎也)にあげつらわれながらも、淡々と見事なオペを進める天城先生。このクールな態度や相手の攻撃を逆手にとって見事なカウンターを食らわせるところは、二ノそのものと言っても過言ではないくらい、迫真の演技でした。
 途中、僧帽弁周囲の石灰化(天城先生も気づいていたが、左心室破裂のリスクを鑑みて今回は見送った)に気づいた垣谷先生が天城先生に断りなく除去手術を行った結果、繁野さんを危険にさらすというピンチもありました。高階先生と天城先生の助太刀で事なきを得ましたが…、つくづく「報告・連絡・相談は大事」、かつ「自己判断だけで物事を進めるのは危険」だなって再認識しました。社会派的な側面もあるとはいえ、医療ドラマでこのことを学び直すとは思っていませんでしたが…。

 一方、東城大の佐伯教授、高階権太先生(演:小泉孝太郎)、維新大学の菅井達夫教授(演:段田安則)による権謀術数渦巻く政治劇も見逃せないものとなっています。この中では大局を見据え、盤上全ての駒を読み尽くす佐伯教授が一歩リードといったところか。海堂先生の著書はいくつか読んだことがあり、またドラマ化された『チーム・バチスタ』シリーズや前作『ブラックペアン』も見たことがありますが、医学会・医療現場ならではの政治劇や葛藤、人間ドラマを描く腕前は見事ですね。もしかして医師経験もある海堂先生の実体験に基づいたもの…だったりするんですかね?

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