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『どうする家康』 第34回「豊臣の花嫁」 感想

概要

放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年9月3日(日曜日) 18時00分~18時45分(BSP、BS4K)
     2023年9月3日(日曜日) 20時00分~20時45分(総合)

脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ

番組公式サイト リンク

感想

なんでもする秀吉

 石川数正が豊臣秀吉の下に出奔。そんな大事件から物語は幕を開けました。何しろ経験豊富で切れ者のベテランが敵軍に与したのだから、本多正信も言ったように「こちらの手の内は筒抜け」です。井伊直政ら若手はもちろん、酒井忠次ですら困惑と動揺を隠せません。(完全に余談ですが、谷繁元信が中日ドラゴンズにFA移籍した時の横浜ベイスターズファンもこんな心境だった…のでしょうか)
 家康に至ってはカンカン。数正が彫ったと思しき小さな仏像を「燃やせ」と命じる始末。何気ないこのシーンですが、個人的には同じ「仏を粗末に扱う」シーン(信長の比叡山焼き討ちは本作で描かれていないですが…)によって「『信長とは異なる方法での天下統一』を目指していたはずの家康が、信長と同じ道を歩みつつあること」を暗喩したと感じました。

 信長と言えば、その息子・織田信雄。今に始まった話ではありませんが、悪い意味で「あのV6天魔王信長の息子が…!?」と思ってしまいます。
 元はと言えば自分が秀吉に懐柔されたことが原因なのに、家康に「負けを認めろ」と言う。家康の態度や表情からして信を置かれていないのは明らかなのに上洛を勧める。なかなかのウザキャラぶりでした。悲しいなぁ。

意固地になって上洛しない家康に対して、秀吉は文字通り「なんでも」します。
その手始めが、妹の旭(演:山田真歩)を(夫と離縁させてまで)嫁がせること(=徳川への人質)。旭も気丈にひょうきんに振る舞いますが、心の奥底では責任感と寂しさ・悲しさで押し潰されそうになっているのは明白。それをわかっていながら応じない家康。秀吉が母の仲(演:高畑淳子)を人質に差し向けても態度は硬直。自分を天下人たらしめるためにここまでする秀吉も秀吉ですが、「『自分が』"戦なき世"を作る」ことに縛られて頑なな家康も家康。「立場が人を変える」とはよく言ったものです(変えたのは立場だけじゃないですが)。
「『自分が』"戦なき世"を作る」「そうしないと、瀬名や信康に合わせる顔がない」という想いを背負い込み自縄自縛の家康。於愛の方(演:広瀬アリス)や忠次の説得で「"戦なき世"を作るのは自分でなくてもいい」と思い直しました。そう、その先が"戦なき世"になるのであれば、「自分が作らなければいけない」なんてことはない。むしろ誰かが作った"戦なき世"を支え、1日でも長く保たせる側になったっていいじゃないか。何でもかんでも自分で背負い込むことはない。そうやって持ちつ持たれつすることが平和を築く…のだと思いたいです。
 個人的に『仮面ライダージオウ』で常磐順一郎(主人公・常磐ソウゴの大叔父)が言った作中屈指の名言「寂しい時ぐらい、大丈夫なんて言わないでちゃんと寂しいって言いなさい!寂しい時に寂しいって言えない人間なんて、人の痛みがわからない王様になっちゃうぞ!」を思い出しました。

 ついでに、数正が出奔した真の目的も明らかになりました。先述した通り、自分が豊臣方に付けば徳川方は「手の内が晒された」と思い、戦をやめる。そうすることで、豊臣と徳川が協力して"戦なき世"を作る。そういう算段でした。
数正の眼には「(今はともかく)最終的な勝者は家康」というビジョンは見えていたと思います。ただ、ここで意地になって戦ったらそれが台無しになる。前回も言った通り、「最後に勝つのは家康」にするための、偽りの裏切りなのでした。

 そして、秀吉が「"戦なき世"を作るにふさわしい男か見極める」ため上洛する家康。そこでの出会いは必見です。本作では石田三成(演:中村七之助)ともこの時に出会うんですね。しかも、予告を見る限りではなかなかの好印象。どうしてああなる。

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