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『どうする家康』 第45回「二人のプリンス」 感想


概要

放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年11月26日(日曜日) 18時00分~18時45分(BSP、BS4K)
     2023年11月26日(日曜日) 20時00分~20時45分(総合)

脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ

番組公式サイト リンク

感想

 関ヶ原の戦いから10年後。豊臣秀頼(演:作間龍斗(HiHi Jets))は立派な青年となりました。「秀頼が立派になるまで、彼の代わりに天下太平を保つ」という約束を家康との間にした茶々ですが、彼女の言動からは「その約束が果たされることはない(=家康が天下を持ち逃げする)」と感じている(=再び名実ともに豊臣の天下にするには、家康から力尽くで奪い返さねばならないと思っている)事が伺えます。漫画『カイジ』シリーズで主人公も言っていたように「口約束で得られるものは『紙切れ一枚に満たない安心感』だけ」とはよく言ったものですが…果たされない前提の約束をした彼らの心中は穏やかではないでしょう。
 一方の家康も、「天下は徳川のもの」と知らしめることが一筋縄ではいかないことを感じている様子。かように天下を治めるということは難しいものです。

 かくして、二条城に向かい家康と対面することを決めた秀頼。そこでの所作は非常に礼儀正しく品があり、それでいて家康の顔を立てることを怠らない、まさに"プリンス"です。その一方で、「上段に二人で座る」という提案を逆手にとって家康のみを上段に座らせることで、家康の顔を立てるように見せかけて「豊臣家は『武家として』徳川家と向かう」ということをアピールしつつ世論を味方につけるという親譲りの抜け目なさも見せつける。
 この一幕だけで「家康の前に最後に立ちはだかる敵として不足はない」と思わせる、流石の魅せ方です。

 徳川方に逆風が吹き荒れる中でも、家康は"戦なき世"を盤石なものにするための施策を進めていきます。そんな中で"かつての家康"を知る唯一の友・今川氏真(今川宗誾)と語らうシーンには感慨深いものがありました。会話は「紆余曲折を経て心から繋がった友とのひととき」でもあり「凄惨な世界を見てきた老人の諦観」「相手の核心を見ての励まし」でもある。「家康と氏真」だからこそ出せる深い味わいだと思いました。
 また、家康と秀忠の関係性の変化にも光るものがありました。家康は秀忠に「『自分の弱さを素直に認められる』という"才"を継いでいる」と言い、それを大事にするように、また"王道"で天下太平を保つよう激励しました。たしかに、現代でも「自分の弱さ」を認められない、あるいはひた隠しにする人は多いですね(僕も人のことは言えませんが…)。僕自身「弱みを抱え込みすぎて潰れる」タイプなので、「弱みを見せられる人」が「本当に強い人」だとは実感しています。そういう意味では、かつての家康も秀忠も「本当の強さ」を持っている、まさに「偉大なる凡庸」と言えるでしょう。

 ラストでは「鐘の銘(国家安康 君臣豊楽)」を巡って徳川と豊臣で対立が深まります。いよいよ"最後の戦"になりそうですね。

 余談ですが、松潤の老人メイク凄いですね。"松本潤"を消していないのに、ちゃんと老人感が出ている。あの松本潤にその塩梅の老人メイクを施すのって至難の業でしょうに、メイクさんは凄い。

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