『どうする家康』 最終回「神の君へ」 感想
概要
放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年12月17日(日曜日) 18時00分~18時59分(BSP、BS4K)
2023年12月17日(日曜日) 20時00分~20時59分(総合)
脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
番組公式サイト リンク
感想
人の一生は重荷を負うて
遠き道をゆくが如し
秀頼の決断により、開かれてしまった大坂夏の陣。太平の世へ向けて、最後の決戦です。
総大将である家康自ら前線に陣を構えたと聞いて、闘志むき出しの真田信繁ら牢人たち。家康の首を取ろうと本陣めがけて突っ込みますが、討ち死に。この場面の侍達の演技はまさに"迫真"。信繁(演:日向亘)の鬼気迫る切り込みや、家康(演:松本潤(嵐))・正信(演:松山ケンイチ)の乱世を終わらせるという気迫や老兵ならではのどっしりした雰囲気、「また生き残ってしまった」という悲哀など、ありとあらゆる一挙手一投足に"感情""信念"がこめられていました。
戦は大坂城天守閣の炎上により終幕。茶々や秀頼によって徳川本陣に逃がされた千姫は、祖父(家康)に彼らの助命を嘆願。「もう戦う力のない二人を殺す必要はない」という言葉は現代人からすれば一理ある…のですが、ここは乱世の最終幕。たしかに「もう戦う力のないものを処刑するのは見せしめでしかない」のですが、この時代はその「見せしめ」が要(そもそも戦を仕掛けたのが豊臣方だからというのもありますが)。そして何より、ここで「乱世とのしがらみ」を絶たないと、この後の太平は保てない。
家康は非情な決断を言い渡そうとしましたが、秀忠はそれを遮って「二人を処すこと」を宣告。彼曰く「最後くらい、将軍として決断したい」とのこと。大いなる初代を父に持ち、良くも悪くもその"後光"を誰よりも近い場所で受けた「偉大なる凡庸」だからこそ、「せめてもの自分にできること」として秀忠は「父の"最後の重荷"」を共に背負いました。この場面には秀忠の優しさや責任感が表れていると同時に、同じ「親の言いなり同然」だった秀頼との対比でもあると感じました。
かくして、乱世の禍根を断ち切り、"戦なき世"を確固たるものとした家康。
南光坊天海(演:小栗旬)が家康の逸話を厳選している時に言った「かの源頼朝だってどんな人間かわからない。周りが語り継いできたからこそ、今日偉人として憧れられる」という台詞には、歴史を学ぶ重要性と共に、前作『鎌倉殿の13人』で北条義時を演じた小栗くんだからこその"深み"がありました。現在"偉人"として語り継がれている者たちも、語り継ぐ者がいなければ歴史の闇に葬られていたかもしれない。あるいは「語られなかった"裏の顔"」があるかもしれない。ただ、語り継ぐことで歴史になり、後世へと繋いでいける(そして「語られている部分」以外を想像する余地が生まれる)ということでしょう。でも神格化はやり過ぎだと思います。
天海役に小栗くんをキャスティングしたのは、『鎌倉殿の13人』最終回冒頭で松潤演じる家康が出たことへの"お返し"でしょうか。
最期、家康は瀬名や元康らといった"懐かしい面々"と語りながら(そういう夢を見て)浄土に逝きます。本当に長い道のりでした。冒頭の言葉通り、「"戦なき世"を作る、そのための責苦を耐え忍ぶ」という"重荷"を背負い「日本を乱世から"戦なき世"へと作り変える」という"遠き道"を見事歩き終えた家康。お疲れ様でした。
しかし享年75か…。当時の平均寿命が30歳程度と考えるとめちゃくちゃ長生きだな…(現代日本(平均寿命85歳程度)に換算すると212.5歳生きたことになります)。