見出し画像

『HSPと家族関係 「一人にして!」と叫ぶ心、「一人にしないで!」と叫ぶ心』 感想


概要

著者:高田 明和

初版発行:2022年
発行者:伊藤 岳人
発行所:株式会社廣済堂出版

Apple Books リンク

発行者による作品情報

いつもそばにいる家族。
自分のことを一番わかってくれているはずの家族。
なのに、「家族といると疲れる」「家にいるのが辛い」。そんな人が増えています。
実は、増加傾向にあるHSP(とても敏感で繊細な人)の気質を持つ人たちの多くが、こうした家族問題に関係しているとしたら…。
脳科学の視点を交え解き明かす、家族関係がうまくいかない原因とその対処法。

Apple Books|高田明和『HSPと家族関係 「一人にして!」と叫ぶ心、「一人にしないで!」と叫ぶ心』

感想

理想的な家族などいない

 この言葉を聞いて、幾分か楽な気持ちになる方も多いのではないでしょうか。僕自身も「家族関係に悩むHSP」なのでこの本を手に取ったのですが、「自身がHSP(なのかもしれない)」という方はもちろん「家族にHSP(かもしれない人)がいる」という方の双方にオススメできる一冊です。

 タイトル通り、HSPやその周辺人物が陥りがちな家族間の問題やその解消への手助けをメインで綴られていますが、"家族間"以外にも生かせるポイントは多く見受けられました。
 たとえば、「自分の居場所はここしかない」という思い込み。おそらく(僕も含めて)心を病むほどの悩みを抱えている人は十中八九"苦痛の原因となる場所や相手"に対してこの思い込みを抱えているケースがほとんどで、それは家庭内にもそれ以外にも当てはまります(著者も「不思議なことにHSPには自分が傷ついた場所に固執する傾向がある」と述べています)。けれど、著者は「苦しむのならそこを飛び出し、"自分の居心地が良い場所"を見つける勇気が必要」「HSPは持ち前の察知能力を生かし、そんな場所を見つけることができるはず」と述べています。これは会社や学校でも家庭でも同じことで、苦しい時こそ視野を狭めず「他に自分が安らげる場所はないか」と探すことが苦しみから脱する最適解ではないでしょうか。

 また、冒頭にもある「理想的な家族はない」としたうえで、「理想像に縛られずにいれば、家庭の変化をそのまま受け入れられる」「家族と自己を同一視するのは問題の温床(=家族といえど自分とは別個の存在)」としています。これは本当にその通りだと思っていて、人の集合体である以上最低限の協力は必要ですが、一人一人人格も思考も異なるので、当然"理想"も異なる。そこで重要なのは独りよがりな"理想像"を押しつけることではなく、家族間の違いを「そういうものだ」と受け入れること。個人的に家族に対しては「互いが互いを尊重できていればそれでいい」くらいのスタンスでいるのがいいと感じています(大人同士でも難しいですが…)。子育てで言われる「(約束を反故にするなど)大人同士ならしないことは子供にもしない」も同じことではないでしょうか。
 ちなみに、人によっては「「普通の家庭」「理想の家庭」を維持しているほうが、その内部に怖さを抱えているかもしれない」という著者の意見を"極論"と捉えるかもしれませんが、僕は(恥ずかしながら我が家がまさにその状態なので)共感できる部分でもあります。

 また、「HSPと非HSPのカップル」というと「HSP(女性)と非HSP(男性)」という組み合わせが想起されると思いますが、その逆「HSP(男性)と非HSP(女性)のカップル」について前時代的な「男らしさ・女らしさ」を交えて述べられていたのも個人的には高評価ポイントです。著者自身の経験も踏まえて「どんな性格でも、見方によって良くも悪くも見える」という「人間関係の鉄則」が述べられており、説得力(と著者の亡き奥様への愛情)が強く感じられました。

 HSPの方々もそうでない方々も「家族関係や恋愛関係をより良く発展させたい」「そのためにどういう問題を押さえておけば良いか知りたい」という方は是非本書を手に取ってみてください。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集