116回 医師国家試験 公衆衛生関連
年末〜年始の毎年恒例の強制イベントもほぼ落ち着いてきたので、
こちらにも少しずつ復帰していきます。
さて、先日2日間に渡って医師国家試験が行われました。
受験された皆様お疲れ様でした。
私も過去を懐かしみつつ、今年の問題を見ていたのですが、
よく芸術家の方々が「この絵にはこういう意図があるのではないか」ということを仰っていますが、私も「この問題にはこういう意図があるのではないか」と考えながら問題文を読んでいます。(その解釈が絶対正しいというわけではありませんが)。
ということで今回は、先日行われた116回医師国家試験から、
公衆衛生の問題を例に『試験問題の意図』という視点から考えていきたいと思います。
医師国家試験で作成される問題にはいくつかのパターンに分けられます。
1.常識的に考えてこれ
これは勉強していなくても、常識的に考えればわかるでしょう、という問題。必修に多いパターンです。
今回の問題でいえば
・A26 産業医面談で相談された時の対応
・B9 医療面接におけるコミュニケーション
・B11 医師から患者への適切な説明
・E2 医師の適切な行動
・E5 倫理的配慮
・E23 医療面接
などがそうです。それでも間違える人がいるので、いつまでもなくならない問題です。
2.正解が1つ、その他の4つの選択肢に意味がない
これは単に知識を問うパターンです。ようするに、○は○だし、XはXという問題です。特に問うていることに強い意図は感じません。ただ知識を問われているだけなので、知らなければ点が取れない問題になっているはずです。
今回の問題でいえば
・B1 論文発表の際の適切な配慮
・B10 社会保障制度
・C5 地域保健医療
・C11 三次予防
・C15 統計における指標
・C19 1日摂取許容量
・C21 疾病リスク
・C23 個人情報
・C26 統計
・C30 生活保護
・C32 労働災害
・E9 地域医療構想
・E14 計算問題(尤度比)
・E16 患者満足度
・E20 安衛法
・E47 計算問題(検査後確率)
3.医師に対して「臨床ばかりではなく、こういう知識ももっておけ」と圧を感じるパターン
これは問題文を見てもらったほうがはやいと思います。
・B6 主治医以外に相談を希望する際の相談施設
・C28 へき地医療拠点病院
・C48 母権連絡カード
・C54 検疫法 ☆
・D59 スポーツ外傷
・E42 退院時療養支援における多職種連携
・F1 多職種連携
・F2 両立支援
・F10 へき地医療
このあたりになってくると、何かのメッセージ性を感じずにはいられなくなります。
4.正解が4つ、不正解が1つ。不正解肢にも意味がある。
私個人的にはこういう問題を見つけるために国試を見ていると言っても過言ではありません。
・C3 感染制御チーム
・C25 地方衛生研究所
などの問題がそうです。
例えば、C3は感染制御チームの問題に見えますが、この問題は、出題者から「今回のコロナ対策で1問つくるなら・・・」というアツいメッセージを感じずにはいられません。つまり、感染制御チームも重要であるし、一方で検疫のことも出題したい。両方を理解していればきちんと正解にたどり着く、こういう裏の意図まで感じられる問題が私はすごく好きです。
ちなみにC25の裏は保健所です。保健所、市町村保健センター、衛生研究所が地域保健には重要であるという意図を感じます。
ちょっと力尽きてFはしっかり見れませんでしたが、おおよそ上のようなイメージです。
当たり前ではありますけれども2.の単に知識を問う問題が圧倒的に多いです。各論をしっかりやらないといけないことがよくわかります。
一方で、私が注目したいのは3.と4.です。
3.は厚生労働省や国家試験作成委員から「都会や大学病院で症例を多く経験したい気持ちもわかるが、専門分野に深くなるばかりでなく、へき地医療も重要な役割を担っていることや、多職種連携を積極的に行い患者の医療体験をより良いものにするように」というメッセージを感じずにはいられません。今年の問題ではなんといってもC54 検疫法の問題から強いメッセージを感じました。
4.は、純粋に良問、という印象です。単に知識を問うばかりでなく、『なぜその不正解肢でなければならなかったか』ということまで考えさせられる問題だったと思います。繰り返しになりますが、C3は感染制御チームの問題に見えますが、コロナ対策というメッセージを感じました。C25は衛生研究所の問題ではありますが、地域保健に携わる施設についてのメッセージを感じました。
ということで、第116回医師国家試験 公衆衛生部門で私が最も良問だと思ったものはC3 感染制御チームの問題でした。