タイ国王に間接的に謁見する話。 後編
30秒で読める前編はこちらです!
とある日の夕暮れ。
陸の孤島とも揶揄されるカオサンロードを拠点にしていた俺は、バンコク中心部へ繰り出そうとバス停に向かっていた。
宿を出て、
お寺を経由して、
裏路地を進む。
これで、ほぼ完璧にカオサンロードの喧騒を避けることができる。シークレットルートである。
いつの間にかバス停を通り過ぎてしまっていたが、
それでも歩いていると、
遠くでお巡りさんたちが、交通整理をしているのが見えた。
どうやら国王が接近しているらしい。
既に何回か経験済みだ。すぐにピンときた。
国王が近づくにつれて、周囲の音はフェードアウトしていく。
段々と、ソワソワした空気になる。
シーン
静まり返る。
サー
サー
サー
高級車が10台くらい、颯爽と走り抜ける。
ぶっちゃけどの車に国王が乗ってんのか、よくわからない。
日中はこれで、いいもの見せてもらいましたわという感じで、日常に戻っておしまい。
でも、この時は夕方の五時を過ぎていた。
バンコクの五時とは、渋滞を意味する。
五時と国王は、渋滞に渋滞を重ねるようなもので、
バスに乗れたとしても、いつ中心地に到着できるかわからない。
タクシーは使わないが、似たようなものだろう。
その辺にあったカフェで時間をつぶすことにした。
1時間くらい経っただろうか。
会計を済まして外に出ると、
どこか違和感があった。
街が何か、いつもの感じではなかった。
それになぜか、
警官がいっぱいいる。
サー
国王が帰っていった。
<完>
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