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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2019年7月の記事一覧

【第1章】青年は、淫魔と出会う (12/31)【戦力】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (12/31)【戦力】

【目次】

【魅了】←

「……とはいえ、オークどもだけでは、いささか心細いのだわ」

 ぼそり、と『淫魔』はつぶやく。

 徒党を組んだオークの群れは、恐るべき略奪者となる。だとしても、『淫魔』が一戦交えたかぎり、これからしとめようとする怪物は、それ以上の規格外だ。

「他に、良い追加戦力を調達できれば助かるのだけど……」

 頭を上に向けたまま、『淫魔』は腕組みする。この次元世界<パラダイム>

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (11/31)【魅了】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (11/31)【魅了】

【目次】

【豚頭】←

「よし……あなたたち、さっきの叫び声は聞いていたわね。アレを追うのだわ」

「ヴルル」

 投げ捨てた武器と腰みのをふたたび身につけた豚頭どもは、『淫魔』のまえに整列し、その指示に対してうなずきを返す。

 肉の接触によって『淫魔』に精神を掌握されたオークたちは、驚くほどに豹変した従順さを示している。

「行きなさいッ!」

『淫魔』の命令を受けて、豚頭の一団はリーダーを

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (10/31)【豚頭】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (10/31)【豚頭】

【目次】

【直下】←

「あぁ、もう……一張羅がぼろぼろなのだわ」

 漆黒の獣が十分に離れたのを確認してから、『淫魔』は灌木の茂みの外へと這い出して、立ち上がる。破れ目だらけのドレスに付いた葉や泥、羽虫を手で払う。

 周囲には、野太くごつごつと節くれ立った杉の大樹が幾本もそびえ立ち、その幹にはつる状の植物がびっしりと巻き付いている。

 昼間であるにも関わらず、妙に薄暗いのは、森のなかにいる

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (9/31)【直下】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (9/31)【直下】

【目次】

【急転】←

「転移先の現出座標なんて、計算している余裕はなかったのだわ──ッ!」

『淫魔』は、泣き叫ぶように悲鳴をあげる。急造で開いた『扉』は、目標の次元世界の高々度座標につながっていた。

『淫魔』と、その足首に体毛を結びつけた漆黒の獣は、白雲と霞におおわれた空を自由落下している。二人のあいだには、ぴん、と張った一本の体毛がつながっている。

「どうするのだわ……これ!?」
 

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (4/31)【検分】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (4/31)【検分】

【目次】

【門口】←

「しかし、まあ……どこをどれだけさまよい歩けば、これだけくたびれられるんだか」

 部屋の主である『淫魔』は、自分のお気に入りの天蓋付きベッドに歩み寄る。寝具のうえに仰向けで寝ころんだ青年は、微動だにしない。

「……じゅるり」

『淫魔』は、思わず舌なめずりをする。その口角が吊りあがり、顔には淫靡な笑みが浮かびあがる。

 一見すると死にかけの青年の内側には、驚くほど濃

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (8/31)【急転】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (8/31)【急転】

【目次】

【厄日】←

「せめて、インターバルがほしいんだけど……」

 独りごちる『淫魔』を意に介する様子もなく、漆黒の獣はゆっくりと立ち上がる。

 黒い体毛におおわれ、表情もうかがえない無貌ながら、蒼黒の瞳には激しい怒りが宿っていると見て取れる。

「──グヌウラアァァ!!」

 漆黒の獣が、咆哮する。剛毛をまとった四肢には、すでに元通りの筋力がみなぎっている。無貌の怪物は、四足歩行の体勢

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (7/31)【厄日】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (7/31)【厄日】

【目次】

【敵意】←

「まったく、ラズベリーアイスは食べ損なうし……今日は、とんだ厄日だわ」

 頬の傷跡を手の甲でぬぐいながら、『淫魔』はつぶやく。無数のワイヤー鞭のごとき剛毛を引きずりながら、漆黒の獣がゆっくりと近づいてくる。

「決めた、本気を出す。悪く思わないことだわ」

 宣告するように『淫魔』は短く言い捨てる。刹那、『淫魔』は身を仰け反らせる。華奢な肢体の背後に、ばちばち、と音を立

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (6/31)【敵意】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (6/31)【敵意】

【目次】

【怖気】←

「うぐぅ……ッ!」

 うめきながらも『淫魔』は、着地してすぐにひざ立ちになる。とっさのことではあったが、空中で猫のように回転し、衝撃を逃がすことに成功した。

 攻撃の正体は、体毛だ。伸張した体毛の束を鞭のように叩きつけられた。無数の被毛は、一本一本がワイヤー並の強度を持っている。

『淫魔』は、若干ふらつき、軽くせきこみながらも、すきを見せぬよう立ち上がる。

「……

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (5/31)【怖気】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (5/31)【怖気】

【目次】

【検分】←

「な……なんなのだわッ!?」

 危機感を覚えた『淫魔』は、反射的に腰を引く。仰向けに横たわっていた青年は、小さくうめきながら背筋を仰け反らせる。

 眼下にぽっかりと開いたブラックホールのような双眸から、涙のような液体があふれ出す。まぶたの縁からこぼれ始めたのは、黒いタール状の液体だった。

『淫魔』自身、セフィロト社のエージェントを初めとした敵対者からは「女悪魔」呼ば

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (3/31)【門口】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (3/31)【門口】

【目次】

【青年】←

「結果的には、命の恩人なわけだし、ラズベリーアイスのぶんくらいは駄賃を払ってもらうのだわ」

 接吻をほどこそうと『淫魔』は、青年に顔を近づける。と、次の瞬間、行為を中断して頭を上げる。

 歓楽街の喧噪に混じって、規律のとれた複数の足音が近づいてくるのを、『淫魔』の聴覚が捉える。靴音は、路地の入り口手前でいったん止まる。

「あいつ……救援を呼んでやがったのだわ」

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (2/31)【青年】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (2/31)【青年】

【目次】

【淫魔】←

「おあいにくさま。おもらしプレイと猟奇プレイの趣味は、ないのだわ」

 自らの頭蓋を撃ち抜き、首無し死体となった男の死体が路地裏に倒れこむ。

『淫魔』と呼ばれたゴシックロリータドレスの女は、まき散らされる血飛沫をかわしながら、エージェントの胸元から銀色のネームプレートをかすめとる。

『SEFIROT corpration』

 そう刻印された金属製のカードを、『淫魔』

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (1/31)【淫魔】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (1/31)【淫魔】

【目次】

「んぢゅるっ。じゅぱ……っ。ぶぢゅ、じゅむる。れろ、れろぉ……」

 表通りを走り抜ける車両の喧噪と、過剰なほどにきらびやかな電飾の輝きから隠れた摩天楼と摩天楼の隙間。薄暗い灰色の路地裏に、卑猥な水音が響く。

 紫色のゴシックロリータドレスに身を包んだ女が、ハイヒールでつま先立ちになり、背伸びをして眼前の男に接吻している。

 男の胸元に付けられた銀色のネームプレートが、無機質に光を

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【第7章】奈落の底、掃溜の山 (20/23)【解錠】

【第7章】奈落の底、掃溜の山 (20/23)【解錠】

【目次】

【傷痕】←

 シルヴィアの意識は、薄暗く、湿って、かび臭い牢獄のなかにいた。四肢は鎖につながれて、自由を制限されている。

 拘束された獣人の目の前、牢屋の中央には鍵が転がっている。腕と脚をつなぎ止める鎖をはずすための鍵だ。

 身じろぎするたびに、じゃらりと音を立てる鎖は長く、ある程度の身動きはとれたが、あと少しのところで鍵にまでは手を届かない。

 幼いころのシルヴィアは、この鍵

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【第7章】奈落の底、掃溜の山 (23/23)【障壁】

【第7章】奈落の底、掃溜の山 (23/23)【障壁】

【目次】

【手懸】←

「社長は……本社の、中枢から……絶対に、出てこない」

 過呼吸気味のシルヴィアが、かろうじて口を動かす。アサイラは、怪訝な顔をする。

「引きこもっているとして……そんなに、警備が厳重なのか?」

「そりゃ厳重だわ、本社だもの……でも、それだけじゃない。それ以前の問題だわ」

『淫魔』は、シルヴィアを背もたれに寄りかからせて、呼吸のしやすい姿勢にしてやる。その後、自分は

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