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重度IBS患者は筋トレに救われるか?

はじめに、俺はIBS(過敏性腸症候群)と呼ばれる病気──”症候群”は病気じゃないんだっけか?まあ俺はIBSを難病だと考えているので病気ということでいいだろう。そう、その病気に罹患している。
診断されたのは10年くらい前なのだが、処方された薬を飲んでも胃腸の蠕動が抑えつけられるだけで結局ひどい便秘に陥ったり、抗不安の作用が切れた瞬間に薬を求めてゾンビの様相になったりの繰り返しになってしまったのでもう病院にも行っていない。

本題に入る前に当時の俺のことについて書き出しておく。
誰にも読まれないだろうが、もしひどいIBSで社会生活が困難な人が、当時の俺のように「もう誰でもよいので、俺を救ってくれ」という思いでこの文章に辿り着いた場合、こんな状態の俺でも今はどうにかなっているぜ、という希望になればよい。

  • 2023年夏当時の俺はIBS混合型で、自律神経失調症と鬱病を同時に罹患している。

  • 食事だけはしっかり摂ろうと心掛けていたが、適正体重より20キロ軽かった。拒食症患者の身体そのものだった。

  • なにを食べても食事の直後、あるいは食事中に急なパニック発作のようなものが起きてトイレに駆け込み、日によってまちまちな状態の排便があり、常に残便感がある。

  • 日に5、6回トイレに駆け込むこともあれば三日間排便がないこともあり、まともな排便習慣とはなんだったのか思い出せない。

  • 体調の変化を感じ取った瞬間に何も手につかなくなり、布団を被ってガタガタ震えることしかできなくなる。

  • 自宅から徒歩5分以上かかる場所に出かけるのに決死の覚悟が必要で、トイレの場所が分からない場所には行けない。

  • 公共交通機関を利用できない。

こんなところ。筋トレによってこれらすべてが完治したわけではないことに留意されたし。そんなうまい話があるわけがない。

インターネットを見渡すと、筋トレで心身のあらゆる悪いところがたちどころに治る!!という情報が時々目に入る。
こんな題で書き始めた文章だが、これは嘘だと思う。
だが、当時の俺は藁にも縋る思いだった。筋トレがすべてを救ってくれると妄信し、とにかく自宅でできる種目を片っ端から試した。

結果から記してしまうと、筋トレによってIBSの諸症状はかなりマシになるが、パニック発作は今でも起こりうるし、胃腸が強くなるということはない。
排便習慣はいくらかマシになり、調子の悪い日はあるものの日常生活が比較的まともに送れるようになった。自転車ですこしは遠出ができるようになった。公共交通機関はまだ利用できない。
食事は以前より摂れるようになった。体重もほんの少しずつ増えている。食事の量を増やすのではなく回数を増やしたのが良いきっかけになったと考える。

重度IBS患者に筋トレがもたらす効果として一番大きいのは運動中にほかのことを考える余裕がないという部分だと思う。
俺は暗くて狭い部屋で頭を空っぽにしてダンベルを上げ下げしているが、運動中に突然胃腸が暴れはじめたという経験はほとんどない。
脳を支配するという意識を持ってダンベルを上げ下げしたり腕立て伏せをしたりすればよい。

下半身の筋トレは調子が悪くないなという自覚がある時にしかしない。
スクワットをはじめとした下半身のトレーニングは姿勢の問題か運動中の俺に便意をもたらすことがある。
今では便意をまっすぐ受け止めることができるようになってきてはいるが、一番症状がキツく出ている時期は便意を感じた瞬間冷や汗が止まらなくなっていたし、トイレに行くのが怖くなっていた。
はじめのうちは寝る前に余裕があればすこし下半身のストレッチをするくらいでよいと思う。ストレッチだってしっかりやれば運動である。

筋トレといえば筋肥大というマインドがどこかにあるかもしれない。俺もそうだった。せっかく筋トレするんだから、かっこいい筋肉をつけたいと思うのは当たり前だ。だが、IBS患者にとっての筋トレは脳の意識を胃腸から遠ざけるための行動だということをまず第一に考えるべきだと俺は思う。
それに、筋肥大にはどうしたってIBS患者にとってはすこし無理をした食事が必要不可欠だ。なので筋肥大のことは一先ず置いておく。そんなことを考えるのは胃腸がまともになってからでよい。プロテインなんて間違っても飲むな。ただ、マルチビタミンのサプリはかなり良かった。俺の場合、便秘に悩む頻度が減ったので一度試してみるとよい。自分に合うと思えば続ければよい。

参考までに、ダンベルを使ったおすすめの種目の動画をいくつか貼り付けておく。
どこにどう効いているとか、そういうことは気にしなくてよい。
まずはどれか楽にできそうな種目ひとつからでよい。30秒からでよい。頭を空っぽにして、動きだけに集中するとさらによい。

ダンベルがなければ水を入れたペットボトルでもよい。それも無ければ自重トレーニングでよい。腕立て伏せやプランクも正しいフォームで行うことを意識すれば充分に胃腸から意識を逸らせる。
何度でも書くが、IBS患者にとっての筋トレは筋肥大を目的としたものではなく、多少なりとも痛みや苦しみを伴う運動によって意識を運動に集中させることが主目的になる
そしてそのうち、筋トレをしていない時間も胃腸のことを考えていない時間が増えていく。

さいごに、俺は筋トレをはじめて丸一年になるが、人に自慢できるような引き締まった身体なんて手に入れられていない。そりゃあ多少は腕は太くなったし肩も胸も大きくなったが、ちゃんとデカくなるための筋トレをしっかりしている人と比べたら失礼なくらい、相も変わらず痩せこけている。
ただ、すこしだけポジティブな人間になり、生活を胃腸に振り回される頻度が減った。
布団を被って一日を無為に過ごし、効かない整腸剤やら漢方を飲んで悲しい気分になることも少しずつ減っている。今では朝起きたらウォーキングに出かけたりしている。一年前の自分では考えられなかったことである。
筋トレで全てが良くなったとは思わないしそんなことは書かないが、筋トレがきっかけになったことはたしかだ。
まだまだ健康な人間には程遠いが、筋トレは間違いなく俺を救っている。現在進行形で。

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