
額縁の中の街
たくさんの人の足音が交差する
数人の人の囁き合う様な会話が微かに聞こえる
名立たる名画を貯蔵する美術館は他のどんな建物より特別な空間だと思う
陽気な人や雰囲気 愛嬌溢れる人柄を感じるスペインにいて
美術館だけは背筋がピンと張る雰囲気
しかし美術館を出てもなお
街を歩いているだけで 芸術的な匂いがする
車が通れないような細い路地
サルバドール・ダリに関する小さな展覧会を開いている建物
建物といっても全て繋がっているレンガ造りなので
その中の一つの部屋、と言う方が正しいかもしれない
路地の終点には開かれた大通りが見えたけれど
耳に入ってきたとても懐かしい音楽に呼ばれるようにして
ガラス扉が大きく開いたカフェテリアに入った
頼んだカフェを手に席に座り
タイルが敷き詰まった壁にもたれながら
カウンターの中で働く人や 女性たちの賑やかな話声
思い出深い店内の音楽に身も心も浸りながら
さっきまで歩いていた路地を眺めていた
自分の国ではない場所を歩くのはあまり容易ではない
しかしこんなにも気持ちが凪ぐ
自分達の生活する世界と 何百キロ離れている所も
それほど変わりはなく
繋がっていると教えられたようだった