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パリのデパ地下を査定する【前編】 ギャラリー・ラファイエット
日本では昔からデパートの地下で弁当や惣菜、スイーツなどが売られてきたが、2000年前後になると、高級化するなど品揃えが充実して「デパ地下」と呼ばれるようになった。
その売上はデパート全体の6割以上を占め、各店舗の「目玉」として位置づけられている。
持ち帰りの弁当や惣菜は、レストランなどでの「外食」や、家庭での「内食」のあいだにあるものとして、いつしか「中食」と呼ばれるようになった。
以前にも書いたように、デパ地下はその都市の文化的成熟度を査定する一つの重要な尺度であると思う。
というわけで、パリをデパ地下という観点から眺めてみよう。
少し偉そうな言い方をすれば、デパ地下という指標でパリを査定してみる。
最初に断っておくと、デパートの地下で惣菜や食料品を売るデパ地下というスタイルは、日本独自のものだ。
日本以外の国では、地下であろうと地上であろうと、デパートで必ず惣菜や食料品を売っているとも限らない。
「中食」の文化には、単身者の割合、女性の社会進出、性別役割分業の実態、高級グルメに対する関心、食の多様化など、その社会のさまざまな事情や変化が反映されているのだろう。
そういうさまざまな社会的文脈を無視することはできないわけだが、厳密なことを色々と言ってみても仕方がない。
とりあえず査定を始めよう。
パリには代表的なデパートが4つある。
そのうち、オペラ座の裏にあるプランタン(Printemps)と、オテル・ドゥ・ヴィルのBHVには、食料品売り場はない。
旅行者向けにクッキーやチョコレートを売るフロアがあるが、まあ、空港のみやげ店が引っ越してきたようなレベルだ。
残るのは、プランタンの隣にあるギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)と、左岸のボン・マルシェ(Le Bon Marche)だ。
今日は、ギャラリー・ファライエットに行ってみよう。
ロンドンのハロッズ、新宿伊勢丹と並ぶ、世界三大デパートの1つと言っていいだろう。
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本館のクリスマスツリーは、パリで最も人気のクリスマスイルミネーションとされている。
「百貨店」の名にふさわしく、ありとあらゆるものを揃えている。
世界中のお金持ちたちがここに集い、日本人や中国人のスタッフも待ち構えている。
宝石や化粧品のことはまったくわからないので論評できないのだけれども、見る人が見れば垂涎ものの充実ぶりなのだろうと思う。
さて、グルメはどうか。
数年前に改装されて、食料品は本館から道路を挟んだメゾン館に移された。
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2階のワイン売り場の充実ぶりは頼もしい。
ここまでの品揃えは、パリでもトップクラスだろう。
1階のスイーツコーナーもすさまじい。
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フランスを代表するパテシエのスイーツが一堂に会する。
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この売り場を歩くだけでも、パリに来る値打ちがあると思う。
さて、地下の食材売り場はどうか。
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日本でいう明治屋や紀伊国屋を拡大したような、ありとあらゆる食材が売っている。
コロナ前には、ここでフランス土産を揃えようと、物知りの旅行者たちが集まっていた。
というわけで、2階のワインショップ、1階のスイーツ、地下の食料品はどれも一級品だ。
圧倒的な品揃えと言ってよいだろう。
ただし、惣菜の充実ぶりには物足りなさを感じた。
1階のスイーツコーナーの奥に、スモークサーモンやキャビア、フォアグラ、などの高級食材に加えて、中華やイタリアン、トルコ料理の惣菜が売られている。
ところが、フランス料理の惣菜というのは、ほとんど売っていない。
日本のデパートであれば、FAUCHONやイタリアンのPECK(ちなみにここは本当に素晴らしい)があるのは稀だとしても、それなりの洋惣菜が(もちろん和惣菜や中華惣菜とともに)並んでいる。
そういう観点からすれば、ギャラリー・ラファイエットの惣菜店は寂しい限りと言わざるを得ない。
街を歩けば惣菜を売る店はあるし、たいていのレストランは(コロナ禍だからだろうけれど)テイクアウトもやっている。
そういうものをデパートで一括して扱うということはやっていないようだ。
通りすがりの旅行者として来たときには気がつかなかったけれど、中食用の惣菜の充実という点ではもう少し頑張ってほしい。
そういえば、近年では日本の弁当スタイルが世界各地で人気らしく、パリでも「Bento」をよく見かけた。
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アジア好きの一つ星レストランL'Essentielのブティックでは弁当箱も売っていた。
気軽においしくお腹を満たせる弁当や惣菜といった食文化は、フランスでも徐々に広がりつつあるようだ。