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ゲンジ物語0605(ノコギリクワガタ)
ノコギリクワガタがたくさん見られるようになってきました。
ノコギリのオスことを、このあたりの方言では「テンチ」といいます。
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左から、小歯、中歯、と大きくなって、
一番右のようになると「水牛」と呼ばれることもある大歯です。
ちなみに、成虫になってからは大きくなることはありません。大きさは幼虫時代の栄養状態によります。
大歯のノコギリクワガタはかなりの迫力で、ゲンジ採りとしては、憧れの存在です。
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ケンカっ早いのか、アゴが欠けるほど強く何かを挟むこともあるようで、写真のようなテンチにもたまに出会います。
その名の通りノコギリのようなギザギザで、カブトムシや他のゲンジの上翅に穴をあけることも。
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一度でもケンカに負けると、
臆病になります。泥に落とされて、震えているテンチを見つけると、
「大丈夫、お前はまだやれるさ!」
と、声をかけたくなります。
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脚が細くて長く、
スマートなボディがかっこいい。
標本にしやすいクワガタです。
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おおきい個体もよく飛んで、
カブトムシが出てくる前の樹液場では王者の風格です。
大型のテンチはとくに、
パートナーを見つけると「メイトガード」と呼ばれる行動をとります。
普通はライトをあてるなどの刺激があると、脚を縮めてポロリと下の薮へ落ちたり、こそこそと逃げていくのですが、
メイトガードをしているテンチは、絶対にメスを置いて逃げることはありません。
他のオスや、他の昆虫はもちろん、カラスやたぬきに狙われたときも、身を挺してメスを逃します。
なかなか男前です。
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ノコギリクワガタのオスは越冬せず、
ひと夏でその命を終えます。(メスは越冬するものもいる)
娘と虫取りに行ってテンチが採れると、
夏が来たなと嬉しくなります。