お悩み相談室のうらがわ0611(空海展)
先日、奈良へ行ってきました。
牡鹿の角が生え始める頃。
柔らかい産毛の生えたこの角を「袋角」といいます。初夏の季語です。
最終日ということもありますが、
大人気の「空海展」はなかなかの混み具合との情報をキャッチ。
正倉院展など混雑が予想される展示は、
当日であっても博物館でチケットを購入するのは避けた方が無難です。
難しいことはなくて、ただ、駅前のローソンで機械を操作して、買うだけ。
これで入り口までの列に並ぶ時間が軽減されます。
来年、130周年だそうです。
展示室に入り、すぐ目の前には、
五智如来坐像による立体曼荼羅が。
手を伸ばせば触れる距離に、
ガラスもプラスチック板も無しです。
おもわず、「おお…」と声が漏れました。
今回は、お坊さんがたくさん来館されていたのも印象的でした。仏像や曼荼羅の前で合掌し、一礼されています。
そして、国宝と重文の多いこと。これでもかと国の宝を惜しげもなく配置。
私が良かったと思うものをピックアップします。
①空海が唐から持ち帰った法具
独鈷とか、羯磨とか、名前もかっこいいのですが、
使われたためか、金属表面がなめらかに摩耗しているんです。装飾やその輝きは渋く、空海が握っていたんだ!という感動がありました。
note友のちかいさん好みの逸品です。
②高雄曼荼羅
紫の布に金銀泥で描かれた、空海がプロデュースした曼荼羅です。現存する唯一のもの、ということでしたが、とにかく大きい。
紫は退色して限りなくブラックに近くなり、金泥以外の線や色は剥げ落ちています。仏の細部は見えませんが、丸や四角の輪郭は残っていて、それが、光の加減でキラっ、キラっ、と浮かび上がるイメージです。
「羽織りたい…」
そう、思いました。
③崔子玉座右銘断簡
掛け軸になった、空海の書です。
「ひとの短所を言ってはならない、己の長所を言ってはならない」ぐらいの意味です。
これが、終わりの方に展示されています。
ここまで展示を見てきて、
空海はおそらく、自分のことをきちんとアピールできる、日本人らしくない人物だったのだな、と思っていたのです。
もちろん実力も申し分ありません。が、正しく「己の長を説く」ことのできる人間だったからこそ、唐でも、帰ってからの日本でも、ここまでの仕事ができたのに。
この掛け軸の前で、しばらく自分の仕事のことも合わせて感慨にふけってしまいました。
なお、
次はトップの画像の特別展示に向かう予定です。
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