空區地車の力学25.この街に住んでいると体から祭りが抜けなくなる
この街に住んでいると体から祭り、とりわけ鳴り物が頭から抜けないと感じることがあります。特に印象に残った年は、サ終にもかかわらず鳴り続ける時間が長くなります。頭のネジがゆるんでいるからではありません。誰でも体験する好きな音楽が頭の中でリフレーンしているのと同じ状態が1年間続くのです(笑)
地車の爪痕
雨が降るとよくわかるのですが、道路に地車のコマ跡がくっきり浮かび上がります。重さ約4トンの地車が4つのコマのそれぞれ1点で支えるのだからアスファルトに轍(わだち)ができるのも致し方なしです。
この轍(わだち)現象は、住吉に限ったことではありません。地車のある町、例えば灘や御影、芦屋なども同様に、アスファルト道路にはコマの跡がクッキリ残っています。それを見ると「この町にも地車があるんだ」となぜか哀愁にふけってしまいます。
私は、出社時の道すがら轍(わだち)を見ると、祭りでの楽しかったことを思い出してしまいます。”祭りの傷跡”なのだが、轍の跡を雨の流れる情景を見ると、梅雨のうっとおしい気分をスッキリさせてくれます。
遮断機のカン、カン、カンの音
基本的に中学生になると「鳴り物」を始めます。
郷ひろみがバラエティ番組で「ダンスがトブこと(忘れてしまう)はありませんか?」の問いに「体に染み付いているのでトブことはない!」と答えていましたが、鳴り物を担当すると、体にリズムが染み込んでしまいます。
するとおかしなことに阪急電車の遮断機の「カンカンカン」の音が、鳴り物の音に聞こえてしまうらしいのです。
この「遮断機の鳴り物化現象」は、酒の席では定番!
中学の帰り道に鐘の音が聞こえたので鐘の鳴る方に走ったら阪急電車の遮断機だったという笑い話を年寄り連中からよく聞きます。
「俺だけやないで!行ったらカズヤンもおったし」「あれは間違えるよなぁ」「ほんま紛らわしいわ」としばし盛り上がります。ただこの笑い話は人を変えて、世代を超えて、翌年も笑い話になります。
私は現役の中学生の若中からも、同じ話を聞いたことがあります。
「誰や?鳴り物の練習を勝手にやってるヤツは?って走ったら阪急の遮断機でしたわ」
中学生の体にも鳴り物が染み付いているのです。
ちなみに、空區の管内には阪急電車の踏切は2ヶ所。
下写真①は住吉中学校の南西角にあり、校庭や校舎の窓から見えるので、まずこの遮断機の音で集まることはないか!?
下写真②は①から200mほど西。踏切の音は聞こえますが中学の校舎や校庭からは見えないので、恐らく歴代の猛者が走ったのは②と思われます。阪急神戸線なので頻繁に電車が行きかいます。遠くから聞くと遮断機の音が反響して鳴り物に聞こえるのでしょう。
時代は変わってもだんじりに魅せられしだんじりバカは絶賛増殖中!
親子四人が5月の大型連休を楽しめる
私には2人の娘がいますが、小学校に入学して此の方、5月の大型連休に旅行に行ったことがありません。また子供からも「どこか連れてって」とせがまれたこともありません。幸いなことに私たち家族は全員だんじりバカだったからです。
私は若中に、子供たちは子供会に、妻は子供会の世話役にと、我が家は4月29日~5月5日まで祭り一色です。毎年祭りの寄付に10000円を出しているのですが、この10000万円で食事付き、おやつ付きで、親子四人が5月の大型連休を楽しめるというのは、超経済的でありながら満足度はチョー最&高です。
それは今も変わっていません。30女の次女はいまだに法被を着て曳いています。孫ができたらおそらく3代が参加することになるでしょう。
体から祭りが抜けないどころか、この町に住み続ける限り孫子の代まで祭りリフレーン化現象は連綿と受け継がれていくのです。
実は空區にも男系家族の一大勢力があります。3兄弟とか先祖代々なんて一族が、地元に家を持ち定住していれば怖いものナシ!
20年ほど前までは、お父さんが若中であれば、その子供は地車に乗って、飾り幕から顔だけ出して勾欄(こうらん)にアゴをもたげ、うつらうつらと居眠りしていたものです。私の次女も小学2年で、祭りの間に疲れたら鳴り物を子守唄代わりにして、地車の中で居眠りをしていました。
今では曳き手も子供会も増えたので、そんな特別待遇はありませんが、かって曳き手が少なかった頃には、こんな話は枚挙にいとまがありませんでした。残念ながら私は女系なので男子の孫の誕生までひそやかに曳くことでしょう。
浅学非才、バカ丸出し
地車は氏子がお金を出しあい、氏子が維持管理し、氏子自らが曳きます。
地車の幕を修理するだけでも数百万円かかります。ましてや新しくするとなると天文学的数値、国宝級の価値があります。
したがって取扱注意!、打こん厳禁!!なのですが、恐れていては楽しく曳くことができません。大切に扱いながら豪快に曳く!これこそが醍醐味であり真髄です。
けっして「勇猛果敢、支離滅裂」「用意周到、動脈硬化」にならぬよう曳き、そして空區地車をこよなく愛するこのブログが「浅学非才、バカ丸出し」にならぬよう精進したいと考えています。