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山田フィルハーモニー

「山田フィルの葉加瀬太郎と呼ばれたくてパーマをかけました。バイオリン担当の加藤太郎です」
「パパからもらったクラリネットをとっても大事にしてクラリネット奏者になりました。白鳥卓也です」
「縁の下の力持ち、チューバ担当の大森龍馬です。特技はお姫様だっこです」
「母がピアノの先生だったので、ものごころがつく前からおもちゃがピアノでした。服部草太です」
「1発パーンで給料同じ。シンバル担当の福山雅人です。よろしくお願いします」


「なんか、オーケストラしてるって人と知り合って食事会しようって話になったから春も来て〜」
中学からの友達、美波からそう連絡が来た。
オーケストラの人ってどんな人たちなんだろう。音楽のことは全くわからないけれどなんだか興味をそそられて私は食事会に参加することにした。

やわらかな暖色の照明にジャズが流れるTORiはワインとのマリアージュを楽しむというおしゃれな焼き鳥屋だった。
個室に5人ずつ向かい合って座り、飲み物が揃ったところで男性陣から自己紹介が始まった。
“オーケストラの人たち”ってお坊ちゃん育ちで音楽だけじゃなく、きっと頭も良くて難しい話とかされたらついていけないかもなぁ…と心配だったけれど、そうきたかというノリだった。
「1発パーンで給料同じ」5人目は完全にオチで、なんだか懐かしいその光景がちょっと可笑しかった。

「西山美波です。小学校の先生してます。よろしくお願いします」
「北野春です。私は…今は無職です…」
「あ、春は先月までは警察官だったんです」
「へぇー、警察官ですか!すごいですね」
「いえ、すごいっていうか、父も親戚も警察官ばかりだったのでそうなるのが当たり前みたいになっててなったんですけど、ふと気付いたんです。あれ?別に拳銃を持つのとか私したくないやって。で、今無職です」
「あぁ、なるほど〜。気付いちゃたんですね」
「そうなんです」
「僕もパパからクラリネットをもらったからやってるけど、いつかなんか気が付いちゃうのかなぁ」
「卓也、お前高校生の時にクラリネットが欲しいってパパに言っても買ってもらえなくて必死にバイトしてやっと買ったって言ってただろ。っていうかそもそもパパなんて呼んでないだろ」
「そうなんですね(笑)」
「でもみなさん、やっぱり音楽は子供の頃からされてるんですよね?」
「そうですねぇ」
「それをずっと続けてお仕事になってるってすごいですね」
「いや〜、それしかできなかっただけです。だって学校の先生だとか警察官だとか事務的なことだとか絶対出来る気がしませんもん。だから僕は1発パーンでお給料もらってます」
「あははは…いや、それって寧ろすごいですよね」
「来月に演奏会があるんですけど、予定が合いましたらみなさんぜひいらしてください」
「はい、ありがとうございます」


暑さもやわらいだ頃、美波と私は『山田フィルハーモニー交響楽団オータムコンサート』を聴きに山田市民ホールへとでかけた。
会場にはおしゃれをしたカップルや家族連れがたくさん来ていた。
初めての交響楽のコンサートにちょっとドキドキしながら私たちは席についた。
バイオリンの加藤さん、パパからもらわなかったクラリネットの白鳥さん、大きな楽器チューバを抱えた大森さん、ピアノの服部さん、そして1発パーンのシンバル福山さん。とりあえずみんなの位置を確認して演奏が始まるのを待った。

どこかしらで耳にしたことのある曲だけれど、こうして生の演奏で聴くのは初めてで、その響きに鳥肌が立った。
バイオリンの伸びやかな音、ピアノの弾むような音、おなかの下の方からズンズン響いてくるようなチューバ、歌うようなクラリネット、そして…なかなか出番がやってこないシンバル。
今まであまり気にしたことがなかったシンバルの1発パーンを聞き逃すまいと思うと、なぜか私が緊張しながらその時を待った。
波が引いているように静かになった音楽がまたじわりじわりと盛り上がってきたところで、パーン!来たー。その瞬間に曲の空気が一変した。
シンバルの重要性を私は人生で初めて目の当たりにした。
脇役といえばそうだけれど、無くては音楽が成り立たない。
今日、私の中では福山さんのシンバルが間違いなく主役だった。



【ワッサーピクルスサンド】
=材料=
(ピクルス)
ワッサー 1個〜1個半
リンゴ酢 100ml
水            100ml
はちみつ おおさじ3
バニラオイル 10振り
ピンクペッパー 適量

薄切り食パン
クリームチーズ

=作り方=
(前日)
1.リンゴ酢と水、ピンクペッパーを鍋に入れて火にかけ、一煮立ちしたら火を切ってバニラオイルとはちみつを入れて混ぜます。
2.ワッサーを洗い、種をよけて皮ごと一口大に切って1に入れ冷めたら冷蔵庫で一晩寝かします。

(翌日以降)
1.食パンにクリームチーズを塗り、ワッサーピクルスとピンクペッパーをのせてサンドイッチにします。
お好みでバジルを添えても。


【ワッサーソーダ】
食べ終わったピクルスの液をソーダで割ると、色がきれいでバニラが香るワッサーソーダが楽しめます。


ピクルスっていつも何かの横に添える脇役だと思っていましたが、主役としても充分に楽しめそうです。
きれいな色のワッサーピクルスサンドとソーダに朝からごきげんです。

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