夢のはじまり
一攫千金を夢見て宝くじを買い、夢は儚く三日で破れた。
白いシートを広げられ、もはや箱とも呼べないプロレスのリングのような賽銭投げ込み場には、ひらりはらりと時々お札が舞い落ちる。
五円玉で願いは叶うものなのか、神様だって本当はお金次第なのかもしれない。
財布の中身を確認し、まだ夜も明けぬ、始まったばかりの今日の必要経費を考える。
血液型も星座も干支も花びらもコーヒーも、占いはこちらの加減で信じたり、信じなかったりの私が、“ご縁がありますように”とこじつけて、五円玉を一枚、神様に見えるようにゆっくりと天へと向けて投げ込む。
初詣くらいは神様をちょっと信じたりしてみたい。
初詣で引いたおみくじが凶だとか、笑っちゃうよね。
“十分ご縁がありますように”と君が五円玉三枚を投げて大事そうに手を合わす。
宝くじがはずれても、神様に願いが届かなかったとしても、おみくじが凶でも、やっぱりおなかは空いて…
焼きそばの湯気の向こうにゆれていた、君の笑顔が、なんかうれしかった。