創作おとぎ話 うさかめサイコロジー え~と干支篇<連続3日掲載:中篇>
(前回までのお話) 1年ごと、その年のリーダーを立て、12年でひと回りとする干支システムのメンバーを決める『干支決定戦』が神様によって企画されました。動物たちの関心はすこぶる高く、村中が大騒ぎです。
イヌとサルは、大の仲良し。一緒に走ろうと約束を交わしています。
ウサギは隣に居合わせたカメに向かって、「世界のうちでお前ほど、歩みののろいものはない」と挑発。カメは怒るかと思いきや「どうせ、僕はいつも遅いから」としょんぼり下を向いてしまいました。
トラは、筋トレに余念がありません。
ウマとイノシシは、鼻息も荒く、落ち着きなく辺りを走り回っています。
そこへいくとヒツジは落ち着いています。まるで眠っているかのよう。
そんなヒツジのすぐ隣で起きろと言わんばかりの甲高い声で「こりゃ、ケッコー。早起きの私にはもってこいの大会だ!」とニワトリが叫んでいます。
そしてそんな騒ぎとは一線を画すかのように、空には悠々と泳ぐリュウの姿もあります。
一方、地上に目をやれば、草むらに殺意を宿した目がギラリ。ヘビも大会への参加を目論んでいるようです。
さて、そんな神社前の喧騒をよそに、ぽかぽかとした陽だまりで昼寝をしていたのはネコ。
ネコ:
なんだか、騒がしいニャ。目が覚めちゃったじゃニャいか。あ、ちょっとそこのネズミさん、なんかあったのかニャ?
ネズミ:
なんでも1年ごとに動物のリーダーを決める『干支決定戦』というものが開かれるそうなんでチュ。
ネコ:
へぇ~、それは面白い! で、それはいつニャんだい?
ネズミ:
それは・・・・・(待てよ、ここで嘘の日を教えれば、ライバルが一人消えるでチュ)・・・・それは、1月2日だそうでチュ。2日の日の出から早いもの順で、神社の門をくぐって参拝したもの12人までが干支に選ばれるそうでチュよ。・・・・・・・・あ、いけない!用事を思い出した!それじゃあネコさん、私は先を急ぎますのでこの辺で。1月2日ですからね。お間違いなきよう!」
【ワンポイント心理学】
人が嘘をつく動機としては5つのタイプがあります。①他人からの非難や罰を避けるための「自己保護の嘘」 ②自分を実際よりも良く見せたいための「自己拡大の嘘」 ③誰かを守るために偽証したりする「忠誠のための嘘」 ④自分が利益を得るための「利己的な嘘」 ⑤人を傷つけることを目的とした「反社会的な嘘」。このネズミの場合は④ですね。
ネズミ:
いや~、ドキドキしたでチュウ。これでライバルが一人減ったでチュウ。でも、まだまだライバルは大勢いるから、なんとかしないと・・・。
すると、どこからかおっとりとした声が風にのってやってきました。
ウシ:
自分は何をやるにしても人より遅いからなぁ。モ~早めに出て神社の門が開くのを待ってようかなぁ・・・・。
ネズミ:
しめしめ、いいこと聞いたでチュウ。それじゃあ、僕はウシの背中に乗って神社の門の前まで連れて行ってもらうことにしよう。いいぞ~楽チンできちゃうなー。
ネズミはウシの背中にひょいと飛び乗りましたが、鈍感なウシはまったく気づきません。ネズミを乗せているとは露知らず、ウシはゆっくりと神社へと歩き出しました。
途中、立ち止まっては草を食べ、しばらくモグモグしていたかと思えば、ゆっくりと歩き出し・・・た、かと思ったらまた草を食べ、モグモグ、モグモグ・・・。
ネズミ:
ヤバい、日の出に間に合わないかもでチュウ。
(ハラハラしながら元日へつづく)
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