創作おとぎ話 うさかめサイコロジー パーティ篇 <連続3日掲載:後篇>
心理学のエッセンスをちょっと交えた『ウサギとカメ』のお話、続編です。
(前回までのお話) ウサギは誕生日パーティの準備を楽しく進めている。ときには、どうしようか悩むこともあるけれど、それもまた楽しいプロセス。一方、パーティに招待されたカメは行くべきかやめるべきか、ずーーーっと悩んでいた。
カメは悩んでいた。
ウサギの誕生日パーティに行くべきか、やめるべきか。
「呼ばれたら行かないと失礼だよなー。断ったらウサギさんもショックだろうし・・・」
「でも、パーティって苦手なんだよなー。どっと疲れて後悔しそうな気がする・・・」
来る日も来る日も、このことで悩んでいた。
このことで、ずっと頭がいっぱいで疲れ切っていた。
すると、そこへゆっくり、ゆっくりと近づくものがあった。
長老亀のジョージだった。
実にゆっくりとした足取りで、最初に目にしてから話す距離までくるのに1時間が過ぎていた。
「どうしたのかな?」ジョージは言った。
するとカメは泣きそうな声で言った。
「ウサギさんの誕生日パーティに呼ばれたのですが、大勢の中では落ち着かないし、自分が上手く振る舞えるか心配なんです。でも、欠席すると申し訳ないし、なんだか後ろめたい気がして。どうしたらいいのか身動きがとれなくなっちゃったんです」
それを聴くとジョージは
「もしや君は、どうすべきかに囚われていて、自分がどうしたいのかを忘れてるんじゃないかい?」
そして続けてこう言った。
「このパーティは自分にとって大事なものかな? このパーティは度々あることかな?それともめったにないことかな?」
カメはしばらくじっと考えてから言った。
「おめでとう!は、やっぱり直接言いたいな」
するとジョージは、「だったら、出席してみることじゃよ。もしも、大勢でのおしゃべりが負担になってきたら、いったんその場から離れるといい。たぶん同じような人たちがいるからそこで一息つくもよしだ。あるいは用事があるといって途中で帰ってもいいのではないかな。行くか行かないかの二択が苦しいものであれば第三の選択肢を探してみたらいいんじゃよ。もちろん行ってみて楽しければ、そのまま居続ければいい。行きたい気持ちがあるなら、それをまず大事にすることじゃ」
【ワンポイント心理学】
悩んでいる時は気づかないうちに視野が狭くなっている。いったん深呼吸して落ち着てから、いま考えている以外に行動するとしたらどんなことがありうるのか、そう自分に問いかけてみると新しい道が拓けるかもしれない。
カメの表情がパッと明るくなった。
「行ってみてからもいろいろな行動があるんだなと思うと、なんだか気持ちがラクになりました。明日、返事することにします!」
ジョージは心の中でつぶやいた。
「・・・あっ、返事は今日じゃないのね。まぁ、自分のタイミングが一番じゃからな」
(果たしてカメは行ったのか? あなたの心の中へつづく)
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