創作おとぎ話 うさかめサイコロジー リュウグウ篇<連続3日掲載:前篇>
心理学のエッセンスをちょっと交えた『ウサギとカメ』のお話第5弾です。
前回のかぐや篇で、月に行くはずが小惑星「リュウグウ」に行ってしまったカメの石ちゃん。実は後日談があるようです。
ここは、地球から遠く離れた小惑星「リュウグウ」。
ハヤブサに連れられ、大空を遥か超えて宇宙を旅してきたカメの石ちゃんは、岩と砂しかない大地に降り立ち、途方に暮れていました。
「どうしよう・・・とんでもないところに来ちゃった」と、今にも泣きそうです。
すると、上空を旋回していたハヤブサのおじさんが言いました。
「おう、石ちゃん。あっちにお城のようなものがあるぜ。行ってみようや」
「えっ、お城?こんなところに誰かいるなんて・・・・・」
石ちゃんは、ちょっと緊張したような面持ちで不安そうな目をハヤブサのおじさんに向けました。それでも意を決して、お城のようなものがある場所へと行ってみると・・・。
「オウ、オウ、オウ」
なにやら不気味な声が聞こえてくるではありませんか。
石ちゃんとハヤブサが恐る恐る近づいてみると、そこにはたくさんのオットセイが!
ピッ、ピッ、ピー! 甲高いホイッスルの音に合わせて、きれいに並んだオットセイたちがかっこいいポーズを決めていきます。一糸乱れぬそのパフォーマンスに、石ちゃんとハヤブサが見とれていると、オットセイのラインが左右にノソノソと開き、真ん中から美しい着物をまとった一匹のオットセイが出てきました。
「ようこそリュウグウへ。私はこのオットセイ一族の姫。みんなからはオットー姫と呼ばれています」と、着物を着たオットセイが言いました。
「このような辺境によくおいでくださいました。せっかくですから、自慢のショーをご覧にいれましょう。宇宙の長旅、さぞやお疲れでしょう。どうぞ束の間の休息を楽しんでいってください」
オットー姫が右手をサッと上げるやいなや、どこからともなくノリのいい音楽が流れてきました。音楽に合わせオットセイたちはキビキビと動き出します。そのシンクロした動きに、石ちゃんもハヤブサもグングン引き込まれていきました。
・・・
さて楽しいショーもそろそろ終わりかという頃、オットー姫がいつの間にか石ちゃんたちのそばにやってきていて、ささやくように言いました。
「この度はリュウグウにお立ち寄りいただき、ありがとうございました。久々の観客に一同大変喜んでおります。つまらないものですが、お土産を用意したので3つの中からお好きなものをひとつお選びください」
すると大・中・小、3つのカプセルが石ちゃんたちの前に運び込まれました。
【ワンポイント心理学】
飲食店やお買い物で、「特上・上・並」や「松・竹・梅」といった同じ商品カテゴリーでランクの異なる複数の選択肢を目にすることがあります。選ぶ際にはっきりした基準を持ち合わせていないとき、私たちは両極を避け、とりあえず真ん中を選びがち。これを「極端回避性」と言います。
石ちゃんは考えます。
大きなカプセルは、だいたい欲張り心をこらしめるお化けやガラクタが入っているんだ。
反対に小さいカプセルは、小さくても高価なものが入っている・・・・・・というよくあるパターンの裏をかいて、大したものが入っていないかもしれない・・・・・というのは考えすぎかもしれない。
やっぱり真ん中が一番無難!・・・・・・・・という保証はどこにもない。
ここは思い切って大きなカプセルに・・・・・・いけるか?・・・その勇気があるか?
「うう・・・・・決められない」
(明日につづいてしまいました)
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