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創作おとぎ話 うさかめサイコロジー かぐや篇<連続3日掲載:前篇>

心理学のエッセンスをちょっと交えた『ウサギとカメ』のお話第4弾です。


時は前回の動物村「オウリンピック」閉幕のころ。リンゴの王様「王林オウリン」が巨大になったかのような太陽が、輝きを増しながら西の山あいに沈み、辺りが暗闇くらやみにつつまれようとしたその時、山の裾野すそのでキラリと光る強い閃光せんこうがありました。ただ、そのまぶしい光は一瞬の出来事。光った辺りの竹藪たけやぶは再び静かな静かな夜の闇に満たされていきました。
 
 
ガサガサ・・・・・ガサガサ。
 
夜の竹藪に、葉っぱがれる音が響きます。
暗がりに目をらすと、なにやら白と黒の動物が。
 
パンダでしょうか?
 
いいえ、それはパンダウサギのおじいさんでした。
おじいさんは山の裾野で光った強い光がどうにも気になって、竹藪へとやってきたのです。おじいさんが、辺りを見回すと、ぼーーーっと白く光る竹が一本見えました。不思議に思ったおじいさんが竹を割ってみると、中からふわっふわの白い毛をした小さなうさぎの赤ちゃんが出てきました。
 
「なんとかわいい子じゃ。つぶらな瞳でこっちをジーッと見ておる。めんこいのー」

 
【ワンポイント心理学】
動物や人間の赤ちゃんは、身体がふっくらして手足が短く、ずんぐりして動きがぎこちなかったり、身体の割に大きめな顔につぶらな瞳があったりなど大人から自然と愛情行動を引き出すような特徴を備えている。これをベビーシェマという。
 

「ここは寒かろう。わしのうちに連れて行ってあげるか。な、ホレ!よしよし」
パンダウサギのおじいさんは、竹から生まれたかわいいウサギの赤ちゃんを大事そうに抱え上げました。
 
「おっと、危ない」
 
おじいさんは竹の根元の石につまずきかけましたが、赤ちゃんを落としちゃならないと転びそうになったのをこらえ、山のふもとの家まで走りたいのを我慢がまんしてゆっくり慎重しんちょうに帰りました。
 

 
それから、だいぶしばらくして・・・。
 
ガサガサ・・・ガサガサ。
 
あの竹藪に、またしても葉っぱが擦れる音が響きます。
 
やってきたのは、カメのおじいさん。
ウサギに遅れること3時間ほどでしょうか。
 
「光ったのは、確かこの辺りだと思うが・・・」
 
カメのおじいさんが、パンダウサギのおじいさんが切った竹の根元に来ると大きな石にゴツン!とぶつかりました。
 
「あいたたた・・・。あれ?石かと思ったら、・・・・お前はカメかい?また随分ずいぶんと大きな赤ちゃんカメだねぇ。どっから来たんだい。まさか、空からってきた隕石いんせきでもあるまいし。まぁいいや。こんなところにいるのも何だ、うちにくるかい?」
 
こうしてカメのおじいさんは、無口で大きな赤ちゃんカメを連れて、ゆっくり、ゆっくり、超ゆっくりと山のふもとの家に帰っていきました。


明日につづく

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