台湾語の仮名表記

 僕の妻は日本の大学で勉強し、卒業後も日本で仕事をしていたので日本語が話せる。日本人と会話中に日本人ではないと悟られることはまずない。でも濁音がどういう発音なのかはわかっていない。この間「濁音っていったい何なの?」と聞かれた。
 彼女が話す日本語を聞いていると無気無声音(吐息の漏れない清音)と濁音の区別はちゃんとできている。台湾語を話す時、台湾語の濁音もちゃんと発音できている。でも日本語文章を書かせると、やはり無気無声音の字を濁音で書いてしまっていることがある。
 多くの日本人が中国語や台湾語の無気無声音(吐息の漏れない清音)の仮名表記に濁音仮名(ガ行、ザ行、ダ行、バ行の仮名)を使うが、無気音の特徴(吐息が出ない)を表すために、あえて濁音仮名(濁音も吐息が漏れない)で代用しているのではなくて、本当に濁音に聞こえているようだ。ちなみに僕自身は濁音には聞こえない。
 この話題を出す度に思い出すのが、20数年前に語学学校で知り合った日本育ちの台湾人や韓国人に言われたこの一言だ。「日本人の中国語って濁音だらけだよね。例えばババダガガジャオボボ(爸爸的哥哥叫伯伯)みたいに!」
 つい最近も日本人の台湾料理についてのSNS上の書き込みの中で雞肉飯(ke-bah-pn̄g)の仮名表記がゲーバーブンとされていた。雞肉飯の台湾語発音はケーバープンなのに。ke-bah-pn̄gというローマ字表記を知っていれば、雞肉をゲーバーとは書かないだろうが、彼の耳にはゲーバーブンと聞こえているのだろう。
 本当に外国語を覚えたかったら、耳で聞きかじるだけではなく、発音記号やローマ字表記を使って覚えるべきだ。大人の耳は本当に当てにならないから。日本人記者やライター、ブロガーなどが書く台湾語単語や台湾語料理名のルビ(仮名表記)のほとんどがデタラメな表記だ。台湾語を真剣に学ぶ気なんか全くないんだろうな…と感じている。自分が書いた仮名表記が原音に近いかどうかなんかどうでもよく、仮名表記をつけておけば、何となく外国語っぽい雰囲気になっていい!ぐらいにしか感じていないのだろう。

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