見出し画像

BILLY ELLIOT 2024(1)~(22)観劇リポート総集編

観劇日時一覧(ブリリアホール)

(1)  7月30日(火)12:30開演
(2)  8月7日(水)12:30開演
(3)  8月9日(金)13:30開演
(4)  8月14日(水)13:30開演
(5)  8月21日(水)12:30開演
(6)  8月24日(土)12:30開演
(7)  8月28日(水)12:30開演
(8)  9月2日(月)13:30開演
(9)  9月5日(木)13:30開演
(10)9月13日(金)13:30開演
(11)9月20日(金)13:30開演
(12)9月22日(日)12:30開演
(13)10月2日(水)12:30開演
(14)10月4日(金)13:30開演
(15)10月6日(日)17:30開演
(16)10月11日(金)13:30開演
(17)10月13日(日)12:30開演
(18)10月19日(土)12:30開演
(19)10月21日(月)13:30開演
(20)10月25日(金)12:30開演
(21)10月26日(土)17:30開演             (10/26東京公演千秋楽)

  観劇日時(SkyシアターMBS)

(22)11月19日(火)12:30開演
          (11/24大阪公演千秋楽)

           タイトル名一覧

(1)オープニング公演
(2)カムイビリー登場
(3)リョウマビリー登場
(4)ウイチロウビリー登場
(5)エイトビリー登場
(6)最高級の完成度
(7)嵐を呼ぶ男
(8)役者さんとの大接近
(9)始めよければ終わりよし
(10)役者の力量
(11)三つのサプライズ
(12)クソ!おったまげ!
(13)決めポーズに鳴り止まぬ…
(14)カムイビリーの笑顔が最…
(15)初めてのソワレ
(16)ファンタスティック!
(17)満員御礼
(18)大発見!吉田鋼太郎さん…
(19)頭の回転が速い人、それ…
(20)終演後も鳴り止まず!こ…
(21)東京公演の千秋楽!満員…
(22)パワーアップしたカムイ…

(1)7月30日(火)12:30開演

         オープニング公演

今日、BILLY ELLIOTのオープニング公演(カーテンコールのみ写真撮影🆗7/27~8/1)に行ってきました。ビリー役は浅田良舞(リョウマ)さんでした。バレエは断トツですが歌唱力が心配でした。でも上手くなっていて驚きました。演技も上手です。本人の努力もさる事ながらプロの指導が行き届いているなと感心しました。

場面毎に拍手が起こるミュージカルは珍しいと思います。子ども達の演技に泣かされるのでハンカチーフは必須アイテムです。

映画「リトル・ダンサー」で一番感動するのは父親がビリーの夢を叶えてやるためにスト破りをして兄のトニーが止めに入る場面です。自分達に未来はないがビリーには未来がある!叶えてやりたいと涙ながらにトニーに訴える父親の姿が切なくて観客の涙を誘います。ミュージカルではこの部分が上手く表現できていません。これは2020年の公演でも感じたことですが2024年は更に希薄になってしまってちょっと残念でした。

でも、それを除けば見所満載のミュージカルですから楽しむことができます。回を重ねる毎に完成度は上がっていくでしょう。

2020年の公演会場はTBS赤坂ACTシアター(1324席)でしたが今回は東京建物Brillia HALL(1248席)に変更されました。規模は同じくらいですがステージがちょっと狭くなったような気がします。観やすさはACTシアターの方が断然良いと思います。音響に関してはどちらも重低音の抜けが良くて迫力がありました。
今日の座席は前の人の頭で右端が遮られてしまいちょっと残念でした。次回は最前列なので遮るものがありません。今からウキウキしています。

  (2)8月7日(水)12:30開演

          カムイビリー登場

先月30日のオープニング公演はあたふたしていて自分自身を含めて落ち着きがありませんでした。昨日の公演は、スタッフもお客さんも動きが滑らかで終始穏やかでした。

昨日のビリー役は春山嘉夢一(カムイ)さんです。彼は中学2年生で13歳。ビリー役は幼すぎてもダメだし大人過ぎてもダメだからこの年齢はビリー役の適齢期と言えるかも知れません。

年齢的に言っても彼は力があってしかも繊細。そんな彼は全身を使って演技をします。フォームが美しく無駄な動きが一つもありません。台詞は腹から声を出し歌唱力もあります。

製作発表会の動画ではビリー役の4人とも歌唱がよくありませんでした。2020年の時は中村海琉さんの歌唱が断トツだったので、私は迷わず彼一本に絞って観劇しました。そう、私にとっては歌唱力が決め手なのです。

今回は一本に絞れなかったので4人全員の舞台を観ることにしました。それを見越したようなタイミングでイープラスからビリー役4人のセット券が25%OFFの値段で発売されたので直ぐに購入しました。全員の舞台を見終えるのは8月の21日ですが、昨日の舞台を観劇して春山さん一本に絞ろうかと思いました。お客さんの乗りもよかったしカーテンコールが3回あって最後はスタンディングオベーションでした。う~ん、その爽快感たるや満足度100%!

それに池袋駅東口から会場の東京建物ブリリアホールまでの簡便な道順を見つけたことも私の気分を良くしました。30日は道に迷ってしまって散々な目にあってしまいました。

もう道に迷うことはありません。ビリー・エリオットのように!

(3)8月7日(水)12:30開演

        リョウマビリー登場        

昨日のビリー役は浅田良舞さんで彼の舞台を観劇するのは2回目です。この公演のチケットはイープラスで購入した4枚セットの内の1枚です。座席指定はできません。イープラスさんが用意してくださった座席は舞台に向かって左側に通路がある席でした。
私はまあまあの席だと思って一応◯にしましたが、これが何と特大◎の席だったのです。
何故だか分かりますか?
答えは



役者さんとの大接近です。
スモールボーイ役の藤本萬瑠(マル)さん(小学一年生)
トニー役の西川大貴さん。

そして、そして、何と!
ビリー役の浅田良舞さん(小学六年生)

ロンドンへ一人で旅立つ日にビリーは母親が書いてくれた手紙の返事を歌で伝えます。ここは涙なしでは観られません。この後、ビリーはボストンバッグを持って舞台を降り客席に降り立ちます。その通路は花道なのです。私のすぐ横を通り過ぎる彼は普通の小学六年生に観えました。その彼がいったん舞台に上がるとあのとんでもないパフォーマンスを披露します。このギャップが堪らないのです。

驚きはこれだけではありません。ビリーのお父さん役を演じる鶴見辰吾さんの演技が飛躍的に進歩していたのです。前回観た彼の演技はどことなくぎこちなさがありました。今回は完全にビリーのお父さんになりきっていてベテラン俳優の底力を見せつけられた思いがしました。特に良かったのはクリスマス会での鶴見辰吾さんの独唱です。妻を失った悲しみが滲み出ていました。

まだ観劇を始めて3回目ですが、お客さんの反応が毎回違うのでこれも楽しみの一つになりました。

今回は2回のカーテンコールがあり最後はスタンディングオベーションでした。

これからチケットを購入する方で役者さんとの大接近を希望される方はE列からO列の10番か11番をお勧めします。

(4)  8月14日(水)13:30開演

        ウイチロウビリー登場

昨日のビリー役は背の一番高い井上宇一郎さんです。中学2年生の14歳。彼は遅生まれなので4人のビリー役の最年長になります。ビリー役のキャストが初めて発表された時は氏名ではなくABCDと表記されていました。これは年齢順だったのです。次回(2027年?)の参考になるかも知れません(笑)。

井上宇一郎さんは変声期に入っているので高音の一部のメロディを変える必要がありました。それは上手くアレンジされていて不自然さを感じることはありませんでした。

彼の魅力は弾ける笑顔と茶目っ気です。ボクシングの場面でのくねくねダンスはオリジナルティーに溢れていてお客さんの笑いを誘っていました。 

勿論、幼少時から培ってきたバレエは見事でした。それにタップダンスをしながらの縄跳びは難易度が高く途中引っかかることが多いのですがこれも難なくクリアーして運動神経の良さを遺憾なく発揮していました。

オールダー・ビリーとのバレエではシェネ・ターンをしながらお父さんの直前でフィニッシュするのですが位置が少しずれました。これはお父さん役の鶴見辰吾さんの立ち位置が前過ぎたためだと思われます。

観劇は昨日で4回目ですが観客の入りはいつも8割くらいです。
昨日のお客さんはちぐはぐな感じでつかみ所がありませんでした。
舞台関係者が多かったからかも知れません。

今回はスタンディングオベーションはありませんでした。春山嘉夢一さんの時は3回目でスタンディングオベーションがありましたがカーテンコールは2回だけに変更されたかも知れません。これは後で知ったことですが、8月10日から8月25日までカーテンコール中の写真撮影🆗の案内がホームページにあると教えてくれた方がいました。開演前にこのキャンペーンについて、案内するべきだと思います。

スタンディングオベーションは役者さん達の励みになりますが、キャンペーン中は写真撮影🆗のためスタンディングオベーションができなくなりました。

でも、もしそれをやるとしたらフィナーレの時にやるしかありません。勇気があればスタンディングオベーションはできます。

何故なら「ビリー・エリオット」は勇気と希望を与えるミュージカルだからです。

(5)  8月21日(水)12:30開演

           エイトビリー登場

昨日のビリー役は石黒瑛土(イシグロ エイト)さんでした。彼は小学六年生で「BILLY ELLIOT」のポスター写真に起用されています。2020年のポスター写真に起用された中村海琉さんは東京公演の千穐楽でビリー役を担当していますが今回の公演でもそれに倣ってキャストスケジュールが組まれています。

石黒さんの魅力は大人顔負けの演技です。全編通してメリハリのきいた台詞の言い回しが秀逸で特にアングリーダンスでのビリーの怒りの表現は圧巻でした。

昨日のお客さんの入りは7割程度でしたがお客さまのリアクションはとても良かったと思いました。それはお子さんが多かったせいだと思います。何故ならそれがジョニー・デップとフレディ・ハイモアが共演した映画「ネバーランド」の一場面の光景に似ていたからです。劇作家役のジョニーは父を亡くし心を閉ざしたピーター少年役のハイモアをモデルにして「ピーターパン」の物語を書き上げました。公演初日に劇作家は孤児院の子ども達25人を招待して大人たちの中に散りばめて観劇させました。子ども達はこのピーターパンの物語に夢中になり大きな声で笑ったり泣いたりしました。それに触発された大人たちは羞恥心を忘れその輪に加わったのです。まさに昨日の公演のように。

受けて欲しいところでリアクションがあればそれは役者さんの励みになります。それはスタンディングオベーションよりも大事かも知れません。お客さまと役者さんが一体化して共有する時間が長ければ長いほど良いと思います。この公演の素晴らしい音響と照明のように。

先の「ネバーランド」には着席している自分の前を通る人がいる時必ず席を立つ映像がありました。これはクラシック・コンサートのマナーの一つでもあります。

スタンディングオベーションのタイミングについても三回目のカーテンコールの後という暗黙の了解があります。今回は事前にアナウンスがあった写真撮影🆗のためにカーテンコールは2回だけでスタンディングオベーションはできませんでした。それ以外で立ったら後ろのお客さまに迷惑をかけることになります。私が、2020年の大阪公演でスタンディングオベーションを一人でやった時は席が端っこで後ろに誰もいなかったからです。その時は暗黙の了解のことを知らず要らんことを記事に書いてしまいました。

「忘れん坊さん」(ママの言葉)

私はこれから何回、WCで鼻をかむことになるのでしょうか?

(6)  8月24日(土)12:30開演

           最高級の完成度

昨日のビリー役は春山嘉夢一さんです。(2)に続いて2回目の観劇になります。

お客さんの入りは7割弱で空いていました。私はステージに向かって左側の席で、左前、横は空席でした。そのためステージの階段を降りるカムイビリーを間近で観ることが出来ました。顔の表情は真剣な眼差しで複雑な心境を吐露しているように観えました。これをラッキーと言いたいところですが多くの方々にこの最高級の完成度と芸術性を兼ね備えたミュージカル「BILLY ELLIOT」を体感していただく方が一万倍も嬉しく思います。

前回とは違って今回はお子さんはほとんどいませんでした。それもそのはずです。前回の公演後にお子さんが多い訳が分かりました。あの公演が行われたのは国や自治体が資金を援助し小中高生を無料招待するという情操教育の一環として行われるイベントの日だったのです。付き添いのチケットは半額になりますが、どうせならこちらも無料にして集客数を増やした方が得策だと思うのですが・・・

昨日の公演はお子さんが少ない状況下でしたが、お客さまのリアクションはとても良かったと思います。リアクションと言えばそのお手本はAGTです。

アメリカズ・ゴット・タレント

今、繰り返し視聴している動画があります。
YouTubeのタイトル名は以下の通りです。

【和訳】緊張気味の14歳リード・ウィルソンを会場中が心配していると・・・I  AGT 2024

彼が選んだ曲は
You Don't Own Me / Lesley Gore
和訳: ヒロキ

物じゃない 君の玩具じゃない
物じゃない 行く当てはある
何をすべきとか★
何を言うべきか★
君と出掛けるのは
そのためじゃない
だって物じゃない
変えられない
縛らないで 居続けたくない
僕は言わせてない★
何をすべきとか★
望みは一つ 自分らしく★
ずっと若いままで★
自由が好きなんだ★
思い描く通りに★
生きていくだけさ★

★印は歌詞とメロディが秀逸で鳥肌が立った箇所です。

この動画がアップされたのは2024年7月26日です。この翌日がミュージカル「BILLY ELLIOT」のオープニング公演開始日で歌詞の内容がビリーの心情と被ります。リード・ウィルソンの歌唱は本家のレスリー・ゴアよりもマッチしていて会場の観客を湧かせゴールデンブザーで更にヒートアップして行きました。

昨日の春山嘉夢一さんも同じ14歳。彼のパフォーマンスはゴールデンブザーに匹敵する内容でした。

彼は瞬発力とリズム感に秀でています。

彼は13人の警察官が横一列に並んだ前の中央に立ち首を振って左右を交互に見ます。これは「だる まさんが転んだ」と同じ手法で意味不明な動きをしている警察官の方を見るとピタッと止まります。これが左右で何回か繰り返されるのですがドンピシャなのです。これは彼と警察官達の息がぴったりと合わないと上手くいきません。彼の素早く首を振る姿に迷いはありませんでした。(M-4Solidarity)

タップダンスもゴールデンブザーに匹敵します。

マイケル役の渡邉隼人さんとのタップダンスもシャープでフォームがことのほか美しいのです。

YouTubeの動画で、マイケル役の高橋維束(イツカ)さんと組んだタップダンスの練習風景も絶品です。(M-5Expressing Yourself)

ボストンバッグを持って階段を降り花道(通路)を通り過ぎるビリーの姿が大阪へ向かう後ろ姿と重なると東京公演の千穐楽が寂しく思えてしようがありません。

(7)  8月28日(水)12:30開演

              嵐を呼ぶ男

昨日のビリー役は春山嘉夢一さんです。(6)に続いて3回目の観劇となります。

彼は「嵐を呼ぶ男」です。台風7号の時は交通機関が全面ストップとなり、来場できなかったお客さまには振替対応するとのお知らせがありました。この日のビリー役は春山嘉夢一さんで公演は予定通り行われました。

そして何と今度は台風10号の襲来です。交通機関のストップが叫ばれる中、この日のチケットを手にしていた私は振替先を第3希望まで決めてホテルを予約しました。ところが予想に反して台風の進路は西方に変わり、交通機関のストップ予定も28日から29日に1日ずれました。セーフ!と言うわけで「嵐を呼ぶ男」は返上と相成りました。

もう大体お分かりかと思いますが観劇レビューは(6)からカムイビリー1本に絞ります。何故ならチケットがそう言うからです。東京公演の千穐楽までのチケットはもう購入済みです。最初はクワトロの公演を全て観てから購入する積もりでしたがこれでは自分好みの席は取れないと判断し、6月29日にアップされたYouTubeの「M-5 Expressing Yourself」を観て即断即決しました。それはタップダンスの動きが鏡の前で踊っているのかと見紛うほどの正確さでこれをサムネイルにしたら歌舞伎のような美形がどの部分でも際立つだろうと思ったからです。

この時点では歌唱の力量は未知数でしたが、(2)を観劇して、為て遣ったりと思いました。これは最近のことですが、彼が合唱部に所属していたことを知り、なるほどと合点しました。

それに加えて彼は幼稚園児の頃から器械体操をやっています。バレエを始めたのはビリー役のオーディションを意識してからだと思われますが既にバレエコンクールの入賞経験もあります。

ミュージカル「BILLY ELLIOT」のビリー役には以下の五つのスキルが必要です。
①バレエ
②歌唱
③演技
④タップ&ダンス
⑤アクロバット
これらにスコアを付けてカラオケマシンの画面に出てくる五角形の「クモの巣グラフ」でグラフ化するとしたら、多分、一番調和がとれたグラフになるのはカムイビリーだと思います。私は、この調和こそが彼の個性であり強みでもあると思っています。勿論、好みや感性に正解はありませんから、それぞれがそれぞれの個性に合った楽しみ方をすればそれで良いと思います。そう、自分らしく!

昨日のお客さんの入りは8割くらいでしたが観客のリアクションはこれまでの観劇の中で一番良かったと思います。盛大な拍手と声援が飛び交う光景はとても誇らしくお客さまにも拍手を送りたい気持ちになりました。

母ちゃんがくれた手紙の返事を歌で伝えるカムイビリーの歌の上手さにはいつも泣かされます。それはその一つ前の光と影のシーンが下地にあるからだと思います。地下に向かう炭坑夫達の力強い合唱がマックスに達した時、重い扉は合唱を遮るように大音響と共にビリー一人を残して閉じます。それに続いて亡くなった母ちゃんとの心の別れと来ればもう泣かずにはいられません。

昨日の私の座席は(6)と同じ席でカムイビリーを間近で観ることができました。生でしか味わえないこの感覚は癖になります。映画の「リトル・ダンサー」は世界のトップダンサー、アダム・クーパーの大跳躍で終わりますが、私はミュージカルの終わり方の方が好きです。何故ならビリーが客席に降りて来てくれるからです。

生の良いところは他にもあってそれはミスの対応です。生は取り直しができません。ミスらないことにこしたことはありませんが生にはミスが付きものです。キャストがクワトロ、トリプル、ダブルキャストとなればその日に組む相手が違います。しかも今回のカムイビリーは休演日を含めて5日間も間隔が開いています。165分間の演技の中には膨大な台詞と動きと細かな約束事があります。これをノーミスでやれというのは酷すぎます。
2014年9月28日に上演された10周年記念公演(Blu-ray Disc)の中にも次のようなミスがありました。

初演のビリー役だったリアム・ムーアが優しい歌声だったのに対してライブ版のエリオット・ハンナの歌声は力強くて心に刺さった。バレエ、タップ、アクロバット、台詞はノーミスでその精神力に圧倒された。何故ならこの舞台は撮影と同時に世界配信されていたからだ。ただ一つ彼がびびった場面があった。Mー2のShineで彼はウィルキンソン先生のタバコケースを舞台の床に落としてしまったのだ。グローブを両手に着けているハンナにはどうすることも出来ない。先生役のラシー・ヘンズホールは慌てずそのままにして踊り続け、動きに合わせてタバコケースを舞台袖に蹴り出した。彼女はプロ中のプロだ。

レビュー(Solidarity)

ハプニングが起きたときに役者さんがどう対応するか?その如何によってプロの力量が問われます。喜劇役者の藤山直美さんは劇中で劇団員の一人に台本にない台詞を投げかけます。そういうハプニングを意図的に設けてその対応力を鍛えるのです。

昨日の公演にもいくつかのミスがありましたが上手く切り抜けていました。これはリピーターの役得です。

 3回目のカーテンコールでスタンディングオベーションの暗黙の了解がこの公演では2回目に変わりました。写真撮影🆗のイベントが途中で入りカーテンコールが2回になったからです。このことを知っているリピーターが気を利かせて2回目のカーテンコールでスタンディングオベーションをするお約束を作ったように思います。役者さんのアドリブも高見を目指して変化しています。こうやって舞台と客席が文化を創造して行くのです。その集大成が千穐楽で味わえることを楽しみにこれからも観劇を続けて行きたいと思っています。

だから、あなただけは来ないでー
台風さん!

(8)  9月2日(月)13:30開演

         役者さんとの大接近

ここ1週間は台風10号の進路や登録している路線情報とにらめっこしていました。それは9月2日のチケットを持っていたからです。

起きて一番にしたことは路線情報を知ることでした。それは私が優先的に利用する路線に昨日運転見合わせの区間があったからです。2日は登録している路線全てが平常運転と表示されていたので小躍りしました。しかも東京は曇り時々雨の予報から晴れマークに変わっていました。私は基本的に晴れ男なのです。だから何?(笑)。

でも今回は観劇できてもこの先どうなるかは分かりません。何故なら9月は台風が日本に上陸する数が最も多い台風シーズンに入るからです。9月の公演が更にパワーアップしながら順調に終わることを切に願っています。

それでは、出かける準備を進めることにしましょう。絶対に必要なのものはチケットです。これがなければ会場には入れません。チケットは金券なので再発行してもらえないのです。お札(お金)を落としたらお札を再発行してくれたという話は聞いたことがありません。そもそも落としたことを証明する手だてがないのです。
当日券は完売でなければ購入することができますが予約が必要な場合(ディズニーランド等)もあり公演等によってまちまちです。
何はともあれ余計な出費は誰しも避けたいものです。
玄関のドアを開ける前に必ずチケットの有無を確認しましょう。これは私が痛い経験から学んだことです。

開演13分前、2階席がうるさいのです。高校生の集団が陣取っているみたいです。でも開演5分前になると静寂が会場を包み緊張感が漂いました。この時間が堪らなく好きです。

今日の私の席は真横に通路がある席で役者さんに大接近出来る特等席です。ラストシーンのロンドンへ向かうカムイビリーの眼差しを間近で堪能しフィナーレでは舞台に向かう彼に拍手で今回の出来栄えを讃えました。

第2部はビリーの兄トニー役の吉田広大さんがストライキ支援の募金を呼びかけるシーンから始まります。場所は舞台ではなく客席の通路で行われます。私は一昨日スーパーマーケットのおつりで2枚の新札を得ました。これは募金のサインかなと思ったので最初に広大さんが持つ募金用の缶に2枚の新札を入れました。「あ、新札だ!」のリアクションをいただき、これを皮切りに寄付する人が続出したのでお芝居に少し貢献できたかなと思っています。

昨日はカムイビリー1本に絞って5回目の観劇になりますが今回が一番安定感があり上出来だったと思いました。ミスはお父さんのネクタイが外れたくらいで受付の女性が上手く対応していました。
前回ちょっとだけしくじった「M-7 We Were Born To Boogie」の難易度の高い縄跳びは完璧でした。

今回、特に注目していたのはマイケル役の髙橋維束(イツカ)さんとの共演でした。カムイビリー1本に絞り込む決め手になったあのYouTubeの動画のマイケルとの共演を生で観たいと思っていたからです。2020年の公演の観劇レビューに「おばあちゃんとマイケルにはもっとはっちゃけて欲しい」と書きましたが、髙橋維束さんはそれに良く応えてくれていると思っています。勿論、他のマイケルもオリジナリティを出そうと健闘しているので注目しています。

今回もカーテンコールは2回でした。1回目はカムイビリー一人で登壇し指揮者を讃えます。指揮者の太田裕子さんは2020年の公演にも参加していてこのミュージカルを知りつくしている一人でもあります。役者さんとエルトン・ジョンの名曲を融合させる重要なポジションにいる彼女を讃えるのは当然のことです。
2回目のカーテンコールは役者さん全員を讃えるスタンディングオベーション。カムイビリーのやり切った笑顔が今回の出来栄えを物語っていました。

カムイビリーと大接近したいあなた!座席は関係ありません。

9月20日13:30開演の公演がそれを可能にします(ホリプロステージお知らせを参照のこと)。

(9)  9月5日(木)13:30開演

     始め良ければ終わりよし

まず忘れない内にしたためておきます。
スタンディングオベーションのタイミングです。

①フィナーレで主要キャストを紹介しその演技を讃えます。最後に主役ビリーが頭上高く掲げられ大拍手の間に幕が下ります。
②程なくして音楽が鳴り幕が上がります。ビリー一人が舞台の後方から前方に進み指揮者を紹介して音楽家の皆さんを讃えます。その後(ここが重要)出演者全員を呼び寄せフィナーレの前の一礼と同じ一礼をしてから手を振ってお客様とお別れをします。その間に幕が下ります。
③ここで拍手を止めたらアウトです。拍手を続けましょう。そしたらその拍手に応えて幕が上がります。スタンディングオベーションのタイミングはズバリここです。周りにつられて立つのはスタンディングオベーションとは言えません。自分の意志で立つのです。すると元気になれます。帰り道はルンルン気分。有意義な時間を選んだ自分に拍手を送りたい気持ちになります。ホントに!

このミュージカルは終わりよければすべてよしに該当しません。始めよければ終わりよしなのです。
一時も飽きさせません。何故なら4人の英知が結集したミュージカルだからです。

【4人の英知】
エルトン・ジョン/音楽
リー・ホール/脚本&歌詞
スティーヴン・ダルドリー/演出
ピーター・ダーリング/振付

開演前の音出しはバラバラで様々な楽器の音が聞こえてきます。開演5分前になっても音出しは続きますがスタンバイOKサインが出るとぴたっと止みます。女の子の甲高い声で注意事項を読み上げる最中にスモールボーイが客席の通路を通って舞台に上がり正面を向いてキャンディーを咥えると後ろの客席から「可愛い」の声。

1984年当時の映像が紗幕に映し出されると同時にスモールボーイは後ろ向きになって座り込み観客と一緒に映像を観ます。すると映像の音楽に被せるように生演奏が始まりあのバラバラだった音出しが柔らかなハーモニーに変わる瞬間そのプロの響きに心奪われ酔いしれてしまいます。そして追い打ちをかけるかのように紗幕の向こう側にいる一人の炭鉱夫が歌い始めると私は一気に物語の世界へ入り込んで、どっぷりと浸かってしまいます。それはその歌唱が秀逸だからです。彼はビッグ・ディヴィ役の辰巳智秋さんで合唱を常にリードしています。
これが毎回続くのです。だから私は何回観劇しても飽きるということがありません。これが私の性分であり個性なのです。

今回は9回目の観劇ということになりますが、真ん中の席から観劇するのは初めてでした。真正面からカムイビリーを観てるといつも近くにいるような気がして親近感が湧いてきました。歌唱も演技も自然体で変な味付けは一切なし。
お客さんのリアクションも的確でとても居心地の良い公演でした。

マイケル役の渡邉隼人さんは滑舌が良く台詞が聴き取りやすかったのでカムイビリーとの共演をまた観たいと思いました。
その願いは叶うのでしょうか?

(10)9月13日(金)13:30開演

              役者の力量

昨日の公演はカムイビリーに絞ってから6回目の観劇となります。私の座席は前回と同じ中央で舞台が更に近くなりました。
(1)に舞台が狭くなったような気がすると書きましたが、間違っていました。むしろTBS赤坂ACTシアターの方が狭いようです。どちらにしてもこのミュージカルにはジャストサイズだと思います。つまり観劇するなら最前列が1番良いと言いたいのです。役者さんとの距離が近くて臨場感を味わうことができます。でもキャパが2000人規模の最前列だとキョロキョロして首を痛めることになるかもしれないので避けた方が良いと思います。そんなこんなで昨日はたっぷりと臨場感を楽しませていただきました。

カムイビリーは回を重ねる毎に進化しています。台詞の抑揚のレンジが広がったり顔の表情が豊かになったりしていました。特に「M-8 Angry Dance」にはそれが顕著に現れていました。

彼が俊敏であることは前にも触れましたが、特に首の動きがシャープでリズミカルです。手先にも神経を行き渡らせていて真剣味が伝わってきます。

アクシデントにも上手く対応していました。カップスープの台詞をウィルキンソン先生に先に言われて一瞬固まりましたが違和感が生じないように上手く台詞をつなげていました。ハプニングにどう対応するか?これによって役者の力量が問われます。

縄跳びの場面はいつもハラハラドキドキしながら観ていますが、昨日は完璧でした。縄跳びは手首で回すことが肝要です。

マイケル役の髙橋維束さんとは相性が良いです。度胸がすわっているイツカマイケルは伸びしろがまだまだあります。これから更に進化していくことでしょう。

「M-3 Grandma′s Song」でカムイビリーがおばあちゃんの手にキスをして一緒に舞台を去る時、「おばあちゃん。良かっよ。」と小声で声をかけます。これは初めて聴く台詞でした。これがカムイビリーのアドリブだったとしたら…

昨日の客入りは8割弱でしたが舞台のツボを押さえた声援が凄くて息もぴったりでした。役者さんもやり甲斐があったと思います。
この時、春山嘉夢一さんや髙橋維束さんのファンの出現を初めて感じました。

スタンディングオベーションのタイミングはばっちりでした。ただ違ったのはカムイビリーがひとり舞台後方から前方宙返りしながら前方に行き指揮者を讃えるのですが、今回は前回と違って役者さん全員を呼び集めてから指揮者を讃えるという演出でした。どちらが良いかと問われるならば私は前者です。何故ならこの音楽家集団はプロ中のプロで響きが素晴らしいからです。大勢の中ではその賛美が霞んでしまいます。
これに関連して(8)の記述に誤りがあるかもしれないと危惧しています。記事では指揮者を「太田裕子さん」と書きましたが、指揮者にはもう一人「野口彰子さん」がいらっしゃいます。そのことを後で気づき、誤りの可能性をお伝えした次第です。

THEカラオケ★バトルでお馴染みの吉田広大さんはビリーの兄トニー役を演じていますが、今回も募金がたくさん集まりました。それだけカラバトが知られているということでしょうか?
明日(日曜日)18:30から7ヶ月ぶりにテレビ東京でカラバトが放送されます。私は久保陽貴さんを3年前から応援しています。
何故なら彼がミュージカル「BILLY ELLIOT」に相通ずる自分らしさを大切にしてきたからです。現在17歳で高校3年生。カラバト公式Youtubeの動画で視聴回数1000万回超えで第一位を更新中です。後17ヶ月でU-18四天王を卒業するので、後何回、彼を放送で観られるでしょうか?
ミュージカル「BILLY ELLIOT」も10月に入ればあっという間に東京公演の千穐楽を迎えます。それを思うとビリーの「寂しいよ!先生!」の台詞が身に沁みます。

(11)9月20日(金)13:30開演

          三つのサプライズ

一昨日の公演は、カムイビリーに絞ってから7回目の観劇となります。
私の座席は最前列で視界を遮るものはありませんでした。でも舞台に向かって右端だったので今までの中央席とは見え方が全然違いました。まず舞台中央が左側に寄ります。舞台の右端はほとんど観えませんが、左端の役者さんの動きは良く観えます。
見え方が違うと今まで観えなかった(観ようとしてなかった)ものが観えてきます。その代表例を三つ挙げます。

一つ目はボクシングの場面です。ここではビリーとマイケルとジョージのコミカルな掛け合いについ目がいってしまいます。でも、この間にトールボーイとスモールボーイも演技をしているのです。スモールボーイがジャンプして自分のコートを取ろうとしますが、なかなか取れません。それを観たトールボーイはスモールボーイのコートをフックから取ってコートを着せてあげます。そればかりかスモールボーイの大きなバックに彼の持ち物を詰めてあげました。何でもない演技かもしれませんが、トールボーイの優しさにほっこりさせられる名場面と言っても過言ではないでしょう。

二つ目は「M-4 Solidarity」の中でバレエ女子とビリーが炭鉱夫達と警察官達の間をすり抜ける場面がありますが、ビリーは中指(ファックサイン)を立てていました。時代背景を端的に表す行為にこのミュージカルの緻密さが窺い知れます。

三つ目はジョージに頼まれた部屋の鍵を両足に挟んで跳ね上げグローブでキャッチする場面ですが、何とキャッチに失敗しました。
バレエ女子が入ってくるタイミングが迫る中、カムイビリーが素早く取った行動は鍵を咥えることでした。中央の席からも認識できたと思いますが、横から観ている私の席の方がリアルに観えたと思います。
この時、私はその手があったかぁと感心しました。彼は優秀です。何故なら問題解決能力に長けているからです。

この日の公演の客の入りは1階席で7割くらいでした。初めて観劇するお客さんが多かったようで、舞台に対する反応が今一でした。
でも、募金する人の数は、私が観劇した中で一番多かったです。トニー役の吉田広大さんに親しみを感じているお客さんが多いんだと思いました。

今回の公演では三つのサプライズがありました。

一つ目はタイトルの画像です。下りホームに初めて観る電車が入って来たので写真を撮りました。

二つ目は「◯◯!スタンディングオベーション!一番先に立ったでしょう!」と友人に言われたことです。
友人のMさんはコープのチラシに「ミュージカル BILLY ELLIOT」を見つけてチケット2枚を購入しました。まだビリー役がABCDと表記されていた頃のことです。席種と座席を選べないチケットでそれが送られてきたのはずっとずっと後でした。届いた段階でメールが送られて来て、私は初めて知りました。Mさんがチケットを購入したことと私のチケットと被っていることを。
東京公演は117公演もあり、この事実は偶然としか言いようがありません。Mさんの座席は私と同じブロックで後方だったので私の動きを監視(笑)出来たのです。

さあ、三つ目のサプライズはお見送りです。この日一番のハイライト!私の隣のお客さんは会場に来てこのことを知ったと言っていました。「ホリプロステージ」のホームページを私を含めて観ていない人が多いんだと思います。

お見送りには色々な規制があったので、私は春山嘉夢一(カムイ)さんだけに親指二本を立てて突き出しました。目と目が合ってほっとしました。最高のサプライズ!

この後のMさんとのお茶会はミュージカル「BILLY ELLIOT」のことで盛り上がったことは言うまでもありません。勿論、近況や悩み事など話しは尽きませんでした。

(12)9月22日(金)12:30開演

決めポーズに鳴りやまぬ大拍手

昨日の公演はカムイビリーに絞ってから8回目の観劇となります。

今回、象徴的だったことが一つありました。

それは安蘭けいさんの復活です。

今回の「M-2 Shine」の安蘭さんのパフォーマンスを観てパワフルだった2020年の公演が自然と甦ってきました。
極めつけは「M-6 The Letter」の安蘭けいさんとビリーの母親役の大月さゆさんとのデュエットです。
ロンドンのライブ版(Blu-ray)で聴いたウィルキンソン先生役のラシー・ヘンズホールとビリーの母親とのデュエットを彷彿とさせる美しいハーモニーが今回の公演で初めて聴けました。

「お帰りなさい。安蘭先生!」
「お待ちしていました。」

さて、この日の公演の客の入りは1階席で9割くらいでした。中央席は最後列まで満席でした。3連休の中日だったせいかもしれませんが、お子様連れのお客さまが多数いらっしゃいました。普段は笑わないところでお子さん達の笑い声が聞こえてきて舞台に花を添えていました。ちょっと気の毒に思ったのは前列のお客さまの頭で舞台が観えづらかったのではないかということです。クッションを貸し出す等のサービスがあればいいのになぁと思いました。何故ならこの子達は未来のお客さまなのですから。

私は中央の席に戻ってきました。奥まった舞台では最前列の端っこは避けた方がいいと思います。

観劇の回を重ねる毎に役者さんについて思うことはどうやって体調管理(特に喉)をしているのだろう?ということです。出演者が変更になる可能性があることは承知していますが、それは稀なことのようなのでいつも問いかけてしまいます。でも、昨日はマイケル役が途中で交替しましたね。
「M-5 Expressing Yourself」でマイケル役の西山遥都(ハルト)さんの声の調子が良くないことは誰もが気付いていたと思います。なぜ公演前に気づけなかったのでしょうか?これは大人の責任です。一日も早い復帰を祈っています。

代役を務めた豊本燦汰(サンタ)さんですが、いつも代役がスタンバイしている態勢で会場にいたのでしょうか?だとしたら春山さんにも代役が待機しているということになります。クワトロといえどもこれはかなりきつい仕事だと思いました。

今回はお客さんの数が多かったのでやり甲斐があったと思います。
「M-13 Electricity」はクライマックスで見せ所です。2020年の優しい声質の中村海琉(カイル)が初代ビリー・エリオットのリアム・ムーアなら、直球の声質を持つ春山嘉夢一(カムイ)はロンドン版のエリオット・ハンナです。

カムイビリーの歌唱にドラムやベースが加わると鳥肌が立ちます。お客さんはその後のアクロバットやバレエで見せる手先足先の美しさに酔いしれながらフィニッシュを待ちます。どうぞ上手くいきますようにと誰もが祈る気持ちでいたと思います。クルクル回りながら高鳴る音楽とともに舞台前方に向かい音楽の終止符と同時に決めポーズ!ジャストフィットでお客さまの満足度100%!鳴りやまぬ大拍手が会場中に響き渡ります。これがロンドンだったらここでスタンディングオベーションが起きるでしょうね。日本ではまだまだ先かな?それには観客を育てる必要があります。
でも、この公演のお客さまの反応は的を得ていてとても居心地がよかったです。

次の観劇は10月に入ってからになります。今回の公演の後のカムイビリーは夜公演が今月一杯続くからです。
「寂しいよ!先生!」


(13)10月2日(水)12:30開演

         クソ!おったまげ!

これまでは1週間に1回か多くて2回観劇していましたが、今回の観劇は10日振りです。それはソワレのせいです。私の場合、ソワレはホテルが必須なので経済的な負担が重荷になります。大阪公演はその宿泊費に交通費も加算されるので行きませんが、その代わりとしてカムイビリーの東京公演のマチネは既に押さえてあります。

この9日間はじっと我慢の子でした。この間、何をしていたかというとロンドンのライブ版(Blu-ray)を視聴したりプログラムを読み返ししたりしていました。

「いい子ちゃんよ」

とジョージに言われそうですが、歌唱、ダンス、タップが得意な芋洗坂係長(いもあらいざかかかりちょう)さんはロンドンのライブ版のジョージに似ていて見分けがつかないほどです。この秀逸なキャスティングには驚きを禁じ得ません。
ただ一つ心配なことは代役がいないということです。アンサンブル俳優さんにはスウィングが3人いらしてこの心配はありません。もし 芋洗坂係長さんが体調不良になったらと考えただけで寒気がします。

「いい子ちゃんよ」

にはもう一つ意味合いがあって、それはご褒美です。
あのMさんが次のようなメールを送信してくれました。

そういえば…
10月11日(金)もカムイビリーを観に?
その日、
「ホームカミング
アフタートークイベント」
で中村海琉さんが~🎶
たぶん、◯◯、チケット購入されてますよね~たぶん…😁
やはり◯◯、何か持ってますよ~👏

10/02 08:20 Eメール受信

そうなんですよ。持っているんですよ。中村海琉さんを生で観るのは大阪公演以来だから4年振りです。彼は今、高1で声楽科のクラスで学んでいます。スカラシップでアメリカに短期留学の予定もあるようです。
ビリー役に抜擢される前は歌唱やタップダンスやアクロバットは得意でしたが、バレエは初めてで1年間以上のレッスンでよくあそこまで踊れるようになったもんだとと感心します。カイルビリーを卒業した後もバレエを学び続けて賞を取るまでになりました。彼は明らかにミュージカル俳優を目指しています。それはミュージカルをこよなく愛しているからです。スキルアップはミュージカル俳優に限らず全てのことに通用します。

実はMさんのメールの一日前にホリプロステージさんからお知らせメール(10/01 14:33)が届きました。だからアフタートークイベントとカーテンコール写真撮影OKのことは知っていました。どちらもカムイビリーの公演日に行われるイベントだったので、カムイビリー1本に絞って良かったと小躍りしました。

前置きが長くなりましたが、昨日の公演はカムイビリーに絞ってから9回目の観劇となります。

お客さんの入りは8割強でほとんど女性でした。いつもより年配の方が多かったように思います。何故なら舞台に対する反応が今一だったからです。私もブランクがありスタンディングオベーションのタイミングを間違えてしまいました。明日は2階席に学生さんが入るので反応がグンと良くなると思います。今から期待しています。

今回の公演で素晴らしかったのはカムイビリーの怒りの表現です。

「母ちゃんなら行かしたくれた」

この迫力に父ちゃん役の鶴見辰吾さんはすぐに反応し負けじと応えます。

「母ちゃんは死んだ!」

そう、カムイビリーの怒りが化学反応を起こしたのです。これが打てば響くの象徴的な一コマとなりました。

兎に角、体全身から吐き出す大きな声に圧倒されました。続くアングリーダンスも圧巻でしたが拍手が遅れてしまいました。倒れた瞬間が拍手のタイミングだったのです。明日はそうします。

私が嬉しかったのは臨場感を味わえたことです。
それは縄跳びの場面でした。
タップをしながらの縄跳びは引っかかるリスクが高く成功率の値はグンと落ちます。縄の長さの調整が成功の鍵になると思います。昨日は大成功でした。ちょうど私の目の前で飛んでくれたので臨場感を味わえて満足しました。

髙橋維束さんとの相性はやっぱりバッチリでした。中2の先輩に対して小5が「こっち来い!」の台詞は笑えます。
彼と相性が良いのは、どちらも歌唱力に秀でているからだと思います。
ネグリジェみたいな服を着せられて困惑するカムイビリーの顔の表情もリアルでその気持ちがよく伝わってきました。

カムイビリーの手紙の場面はいつも泣けます。でも生だから声に出して泣けません。(ここまで記事を書き終えたら、インターフォンの音がしました。我が家の郵便ポストに入らない大きさの郵便物だったので郵便屋さんがわざわざ玄関口まで来てピンポンしてくださったのです。)

郵便物の中身はMさんからの手紙とBILLY ELLIOTのファイルとその他もろもろ。

ここは生じゃないから声に出して泣けます。そう思ったら、突然の停電!

クソ!おったまげ!

  (14)10月4日(金)13:30開演

カムイビリーの笑顔が最高の癒し

昨日の公演はカムイビリーに絞ってから10回目の観劇になります。

1階席は7割程度でしたが2階席には学生さん達がいました。騒がしいだろうなぁと思って会場内に入ったら静かなのです。前回は騒がしかったので大丈夫かと心配になりました。何故なら劇中の歓声に期待していたからです。案の定劇中も静かでした。
でも、その分を1階席のお客さん達が埋めてくれました。今回の客層はリピーターとおぼしき中年女性が多く的を射た歓声があちこちで聞かれ、舞台を盛り上げていました。だから居心地はとても良かっです。しかも私の席は真正面!

では舞台での居心地はどうなのでしょうか?

私は5年ほど前に某大手の楽器店が主催するイベントで同じ池袋にある東京芸術劇場の舞台に立ったことがあります。そこで学んだことは「音楽は客席で聴くに限る」ということでした。

舞台上の役者さん達にはどう聞こえているのでしょうか?
客席で聴く音響は本当に素晴らしいです。舞台上でもそうあって欲しいと思いますが、どうなんでしょう。

それでクリスマス会で歌う益岡徹さんには自分の歌声がどのように聞こえているのかを知りたいと思いました。

客席では哀愁がこもっていて素晴らしい歌声でした。キーのきっかけなしで歌い始め、曲の途中で俳優さんの生のアコーディオンが入りますがキーはぴったりでした。このアコーディオンの役目はこの後のオーケストラのキーに導くためのものだと思います。それにしてもミュージカル俳優さんって本当に色々なスキルを持っていらっしゃるので感心します。

前回「打てば響く」と書きましたが、今回は濱田めぐみさんが打ち手でした。M-2 Shineの最初の台詞「椅子!」の切れが良く気迫がこもっていたので舞台が締まりました。こうした始まりの気迫が他の俳優さんに伝播して行くのだと思います。

場面転換に挿入されたカムイビリーの初めてのターンや両手の繊細な腕と指の動きから描き出された白鳥(黒鳥)の影絵はとても美しく、誰もが見入ってしまいます。このパフォーマンスはバレエに気持ちが傾き始めるビリーの心情を表していると私は思っています。

「誰のアイデアかいね。ロンドンのライブ版には影絵はなかとよ。」

我に返ったビリーは捜し物するおばあちゃんにおじいちゃんはどんな人だったかを訊ねます。

おばあちゃんは喜怒哀楽を織り交ぜながら艶っぽく歌い踊り思いの丈をビリーにぶつけます。それはアン・エミリーを彷彿とさせるはっちゃけ振りで2020年とは全く違うものでした。

そしてカムイビリーに難易度の高いパフォーマンスが次々と押し寄せてきますが、それらを彼は見事にクリアーし大きな拍手と歓声に包まれます。

「M-4 Solidarity」
フィニッシュ!決まる!

「M-5 Expressing Yourself」
フォームの美しいタップダンス!

「M-7 We Were Born To Boogie」
高難度の縄跳びに成功!

「M-8 Angry Dance」
怒り爆発!抗することの虚しさをアドリブで表現!

「M-11 Swan Lake Pas de Deux」
息の合った厚地康雄さんとのバレエと父の目前でのフィニッシュ!

「M-13 Electricity」
心拍数を上げて挑む命がけのパフォーマンス!次の場面でも息が上がっていました。それだけ真剣だったということです。

これらの喜怒哀楽を伴う難易度の高いパフォーマンスをやり遂げた後のフィナーレやカーテンコールで見せるカムイビリーの笑顔は私達を癒し、元気と希望を与えてくれます。

トイレ休憩中に30代の体育会系男子が連れに放った言葉が私の耳から今も離れません。

「彼、いいね~」

(15)10月6日(日)17:30開演

          初めてのソワレ

台風7号襲来時の振替対応のことを覚えていらっしゃいますか?同じことが台風10号でも起こりそうになったので、私はそれに備えて公演会場近くのホテルを予約しソワレにも対応できるようにしました。でもそれは杞憂に終わりました。すぐに10月6日のホテル予約をキャンセルしても良かったのですが、キャンセル料が発生するのはチェックインの15時からだったので予約をそのまま放置していました。

東京公演の千秋楽でソワレのチケットは早々と取りました。ホテルの予約も完了しています。何故ならカーテンコールでビリー役の四人が登壇すると踏んでいるからです。この公演のビリー役は石黒瑛土(エイト)さんです。ある日、そのことがふとよぎって春山嘉夢一(カムイ)さんのソワレも観ておきたいという欲求に駆られ急いで10月6日のチケットを申し込んだら10月4日と同じ列の中央より少し左寄りの席が取れました。
何とその席は「M-13 Electricity」のフィニッシュの真正面でした。

この日も拍手が鳴り止まず、大いに感動しました。この日は次の場面では息が上がっていませんでした。前回の息切れは疲れが原因だったかもしれません。

ホテルの予約をキャンセルしなかったお陰でお安く泊まることができましたし、ソワレのいい景色も観られて幸いでした。

ソワレの公演がいつもそうかは分かりませんが、マチネと違って1階席は満席に近く、2階席にもお客様が多数いました。しかも年齢層がバラエティーに富んでいてマチネしか知らない私にとっては感動的な光景でした。この日は日曜日とあって会場の外も賑わっていました。
『ビリー・エリオット』300回上演記念特別ペアチケットのお得感が集客数を増やす一因になったことは間違いないと思いますが、ソワレはマチネよりも自由時間を持つ人が圧倒的に増えるということに尽きると思います。

この日の感動的な公演でいくつか気付いたことがあります。

その一つ目は訳詞です。プログラムによると髙橋亜子さんが担当しています。彼女はエルトン・ジョンの曲にマッチするように日本語を吟味して選び魅力的な歌詞に仕上げています。その感性や語彙力には舌を巻かざるを得ません。
カムイビリーの「父ちゃん」や「母ちゃん」の響きには郷愁をそそられます。「お父さん」や「お母さん」ではしっくりきません。ここでも訳詞の素晴らしさが如実に示されていると思います。

二つ目はカムイビリーがビリーエリオットになりつつあるということです。
鍵をキャッチする場面で失敗したので前と同じように鍵を咥えましたが、その前に彼は「クソ」っとアドリブで台詞を入れました。
「クソ」とか「こんちきしょう」という言葉は普段はほとんど使いませんが、ビリーの世界に入るにはこれらの言葉が必須のアイテムとなります。劇中でそれを自然に使えるようになっているところがカムイビリーの進化の証と言えるかもしれません。

三つ目は照明に関することです。カムイビリーに当てられた薄暗い照明が明るい照明にいきなり変わる時、彼は華やぎます。そう、舞台映えするのです。それは彼の笑顔にも活かされています。

舞台映えというとマイケル役の髙橋維束(イツカ)さんも該当します。クリスマス会あとの大きく開いた開脚は盛大な拍手に包まれました。それにマイケルがゲットした大事な人形をもてあそぶカムイビリーのマイケルを慌てさせるに足る工夫した演技も秀逸でした。
残念ながらイツカマイケルとの共演は東京公演ではこの日が最後となります。ホテルを予約する時はマイケル役のことは眼中にありませんでした。本当にラッキーでした。

四つ目はカムイビリーの体幹です。中村海琉さんの大阪公演では福岡在住の姪っ子と一緒に観劇しました。彼女は元ダンサーでカイルビリーは体幹が強い子だと褒めていました。
オールダー・ビリーやブレイスウェイトと踊るカムイビリーのバレエは真っ直ぐな線を描いており姪っ子が観たらきっと褒めると思います。

カムイビリーの「BILLY ELLIOT」を観られるのは後5回。ソワレは予定になかったけれども観ておいて本当に良かったと思いました。


(16)10月11日(金)13:30開演

         ファンタスティック!

昨日の公演はカムイビリーに絞って12回目の観劇になります。

今回の公演には楽しみなことが三つありました。

一つ目は私の座席です。そう、役者さんと大接近できる通路側(花道)の席であることです。今回も募金(日本赤十字社)するために新札を用意しておきました。トニー役が吉田広大さんだったのでいじられませんでしたが明日の公演は西川大貴さんなので通路側のE席の方は覚悟しておいてください。必ずいじられますから(笑)。

二つ目は15時半の終演後に15分間の休憩を挟んで、2020年のビリー役だった川口調さんと中村海琉さん、おばあちゃん役の阿知波悟美さん、そして司会の辰巳智秋さん(ビッグ・ディヴィ役)による「ホームカミングアフタートーク」が行われたことです。

三つ目は、勿論、2005年から2016年までウェストエンドのビクトリア パレス シアターで上演された「BILLY ELLIOT THE MUSICAL 」を忠実に再現した生の演劇を鑑賞できたことです。

タイトルはこれらの三つを総称したものです。

最近、YouTubeでフルバージョンの「BILLY ELLIOT THE MUSICAL」の動画を3本視聴する機会がありました。

イタリア版(2019年)は衣装と舞台美術は完全無視でどでかいキャスター付きの階段が舞台に向かって左隅に鎮座していました。これが目障りなことと演者はステージの中央にいなければならないという固定観念にとらわれて舞台のスペースを無駄にしていることが気に入りませんでした。

2本の英語圏(2017年と2018年)の公演は歌や台詞は再現しているものの後は完全無視です。衣装の縫いぐるみはタキシードを着た6人にすり替えられ製作費をケチったとしか思えません。オリジナル作品を冒涜した公演だと怒りさえ覚えます。チケット料金が5千円でも私は絶対に観に行きません。

これらは日本の演劇が如何に優れているかを物語っています。それは日本人の緻密さや真面目さや優しさを象徴するものだからです。

椅子の扱い方一つとってもそうです。椅子は色々な働きをしています。

一つ目は時間稼ぎです。
カムイビリーがウィルキンソン先生に合格を報告する場面でバレエガール達は机だけを移動させ椅子一脚はそのままにして舞台から去りました。
その訳はカムイビリーが帰る準備をする間、ウィルキンソン先生が手持ち無沙汰にならないようにするためです。彼女はその間、取り残された椅子を片付けます。

二つ目は合図の音です。椅子を床に叩きつけることによって音を立て次の動作のきっかけにつなげます。

三つ目は高低差を出すことです。エリオット・ハンナが紹介していましたが、椅子にはお父さん、お母さん、赤ちゃんの三種類があってこれを使い分けることによって舞台の遠近感を出すそうです。舞台を斜めにすることでもその効果は発揮されます。
アフタートークでもこのことに触れていて、後ろにせり上がった舞台はバレエがやりにくいと言っていました。

四つ目は目印です。
「M-6 The Letter」でウィルキンソン先生は二脚の椅子を離して置き中央にスペースを設けました。それはビリーの亡き母がビリーに近づけるようにするためです。カムイビリーの優れた歌唱や安蘭けいさんと大月さゆさんの美しいデュエットに涙が頬を伝います。
その涙が乾ききらない内にブギーに入って行きます。手拍子を求められたお客さんは一斉にそれに応えます。そう、そう、この日の客入りはマチネとしては多かったと思います。中央席は2階までほぼ満席状態でした。超難関の縄跳びも余裕綽々で成功し拍手とともに大きな歓声も上がっていました。

五つ目は小道具です。
オールダー・ビリーの厚地康雄さんとの椅子を使ったバレエは息が合っていてその美しさに酔いしれました。空中遊泳もスピード感があり美しい動線を描いていてお客さんも大喜びでした。
アフタートークではオールダー・ビリー役の大貫勇輔さんのことが話題になりました。私の目にも焼き付いています。彼は舞台の床に両足をぴったりと付けて(開脚)ビリーを空中遊泳させたのです。
川口調さんは彼とのバレエは怖かったと言っていました。川口調さんも中村海琉さんもバレエ出身ではありませんが、よく頑張ったと思います。中村海琉さんはビリー役の時のインタビューでニューヨークで活躍できるダンサーになりたいと言っていました。その彼は7月に一ヶ月間ニューヨークに短期留学していたそうです。バレエだけではなく色々なジャンルのダンスを習って楽しかったと言っていました。
川口調さんはオープニングと今日の公演で2回観たと言っていましたが、中村海琉さんは5回観たそうです。多分クワトロ全員のを観ていると思います。

六つ目は休息です。役者さんの体力を温存するために椅子に座らせたのです。その代わり片付けは役者さんにさせました。
このミュージカルの場面転換は全部、役者さん達がやっています。
彼らは次の場面を作って舞台を去るのです。だから物語が途切れることがありません。

私は4月に日テレ製作の「アニー」を観劇してきました。第一の感想はまどろっこしいです。場面転換に時間がかかり物語が途切れてしまうのです。「BILLY ELLIOT」の製作はTBSです。日テレ対TBSは面白い構図だと思いませんか?

まさにこちらは映画的です。舞台の基本は福祉会館ですが、舞台の左右から化粧台やトイレを引き出したり人が横一列になって後ろを遮ったり周りを囲んで中が観えないようにしたりすることで、それがビリーの家の中になったりマイケルの部屋になったりロイヤルバレエスクールの劇場になったり坑内に向かうエレベーターになったりします。

極めつけは「M-4 Solidarity」です。福祉会館のバレエレッスンと外の騒動が同時進行します。それは観客のイマジネーションに頼る構成になっています。ここでも椅子が大活躍します。
この12分間のテーマは「団結」です。炭坑夫と対立している警察官はどちらも労働者階級なのです。それを賛美するのがこのシーンの目的です。

それに加えて舞台と観客席が逆転する場面転換のアイディアは秀逸です。そう、観客が面接官側になるのです。
面接官は「踊っているときの気持ちは?」とビリーに訊きます。この後に繰り広げられるカムイビリーのパフォーマンス「Electricity」にはいつも鳥肌が立ちます。

アフタートークで中村海琉さんは椅子の上の側転を2回失敗したと言っていました。生だからハプニングは付きものです。2020年の公演の時、マイケルが新品の人形を取りだそうとしたら何かに引っかかってもたついてしまいました。

今回はクリスマス会の後、マイケルは厚手のコートを羽織るのに手こずりました。とっさの判断でカムイビリーは手助けに向かいます。とても良い景色を観させていただきました。その彼が私のすぐ横を通り過ぎて行くのです。まさにファンタスティック!

あ!そう、そう、マイケルが母親の服をビリーに当てるときハンガーを落としてしまいました。その時、「クソ!」って言っていました。学ぶは真似ぶ。回を重ねる毎に進化して行く生だからこそ面白いのです。

(17)10月13日(日)12:30開演

                満員御礼

昨日の公演はカムイビリーに絞ってから13回目の観劇になります。

今回の公演で特に印象に残ったのは客入りです。男子用WCで初めて並びました。集客力において3連休の中日でマチネは最強のようです。お子さん連れも多く4、5歳の子の座席にはクッションが用意されていました。それは初めて観る光景でした。1階席はほぼ満席状態で、2、3階席にも多数のお客様がいらっしゃいました。

「M-8 Angry Dance」が終わってWCに向かう途中でご婦人がお連れの方に「凄い迫力だね。こんなの観たことない!」。私はもう17回観ています(笑)。

案の定、E席の方、トニー役の西川大貴さんにいじられていました。

今回もハプニングがありました。

一つ目はスモールボーイから奪ったキャンディーを落としたことです。カムイビリーは拾おうと舞台袖に向かいましたがすぐ止めて持ったふりをしてデビー役の佐源太推乃哩さんにバトンタッチ。スモールボーイも状況を把握していてこれに上手く対応していました。
チームマークの尊さを知らしめる絶好のハプニングでした。

二つ目は、「M-5 Epressing Youself」の場面でタップシューズ装着競争で負けたマイケルが台本にない台詞を発したことです。この仕掛けにカムイビリーはまんまとだまされました。マイケル役の西山遥都(ハルト)さんは西川大貴さん似かもしれません。今後のアドリブに期待しています。

アドリブといえばカムイビリーにもありました。両足で鍵をつかんで跳ね上げグローブでキャッチする場面です。今回は成功したので「やったー\(^o^)/」と台本にない台詞を入れました。その気持ちはよく分かります。

今回初めてカムイビリーの演技を観たお客さんは彼に良い印象を持ったと思います。
歌の上手さ。バレエで見せる指先の美しさ。タップダンスで見せるフォームの格好良さ。高難度の縄跳びで見せる運動神経の良さ。質実剛健と人柄の良さ。

そしてそれらはアンサンブルの俳優さん達に支えられています。
この公演のアンサンブルは世界に誇っていいレベルだと思います。
何と言っても声量が桁違いです。
一人一人の声量をピタッと合わせる短音は迫力満点です。ウォーとつなぐ波動はまるで生き物みたいでお客さん達を魅了します。
「M-15 Once We Were Kings」の大合唱は圧巻です。この辺りからまたまた目頭が熱くなってきます。もう何回目でしょうか?

今回の公演では多くの人々にこの素晴らしい作品を鑑賞していただくことができました。

春山嘉夢一さんはYouTubeの【東京ラストインタビュー】で更にパワーアップして最高のビリーをお見せしたいとその意気込みを語っています。

その実直さを信じて次の公演を待ちたいと思います。

(18)10月19日(土)12:30開演

大発見!吉田鋼太郎さん現れる!

昨日の公演はカムイビリーに絞ってから14回目の観劇になります。

今回の客入りは1階席は満席状態でしたが、2、3階席は空席がありました。客層は30代、40代が多く華やいだ印象でした。

今回の私の座席は通路側(花道)の10番 で俳優さんと大接近できる特等席です。

なぜ、この特等席が良いのか?
帰宅後、YouTubeの動画を観ていると、さっきの今、私のすぐ横に居た人が映っているという新感覚を味わうことができるからです。

では、11番でもいいじゃないかと言われそうですが、次のような決定的な違いがあります。

11番でも接近はできますが10番の方が良いです。何故なら舞台に向かって右側の座席3脚分が通路になっているからです。中央席でも前の席のお客さんの頭で見切りが生じてしまう場合がありますが、10番ではその心配はありません。開放的で舞台に集中できます。体調不良のときにはお客様に迷惑をかけないで動くこともできます。もし、再、再、再演があって会場がブリリア だったら中央席よりもこちらの席をお勧めします。何列目かは座席表を見ればすぐ分かります。

私が着席して毎回行うことは客入りと客層を調べることです。だから後ろを向いてキョロキョロします。「何やっとんの?」とビリーに咎められそうですが今回は大発見がありました。

スモールボーイが入場する1分前くらいに吉田鋼太郎さんが0列
の11番席に着席されたのです。

その後、普段とは違うことが起きました。「M-8 Angry Dance」が終わったすぐ後、0列11番は空席でした。 お客様が動きだす前に退席されたようです。

ACT-1のカムイビリーの動きにも著しい変化がありました。白鳥(黒鳥)の影絵とマイケルが着せたがっている服を拒む動作をはしょったのです。

それに25分間の休憩中に撮影クルーが来てカメラを設置していました。

何か変だと思いながら自分の席に戻ってACT-1の出来事をメモっていました。時計の数字が消えたのでスマホの電源を切り後ろを観たら吉田鋼太郎さんが0列の11番に着席し隣の小さな少女と和やかにお話しをしておられました。多分少女の隣には彼女のママが…

この姿を観てプライベートだと思いました。

さて、毎回お馴染みのハプニングですが、この日もありました。一つ目は鉛筆を落としたことです。でも、このミュージカルは秒単位で進行しているので感傷にふけっている時間はありません。「M-2 Shine」ではバレエガールは30秒で着替えを済ませなくてはなりません。想像するに舞台裏は戦争状態だと思います。
二つ目はカムイビリーの鍵咥えです。私が観劇した中では2回目ですが、何かこれも有りかなと思わせる俊敏さが秀逸でした。

タップダンスをしながらの縄飛びは完璧でした。鍵の跳ね上げはこの高難度の縄飛びよりも難しいかもしれません。

ハプニングの三つ目は「M-13 Electricity」のフィニッシュです。少し滑りましたが、よく持ちこたえました。あの雪の材質が少し気になりました。

ハプニングの四つ目はカーテンコールです。これで全ての謎が解けました。
いつものように2度目のカーテンコールでスタンディングオベーションをしましたが、何と益岡徹さんがマイクを持って話し始めたのです。彼は2017年の初回からビリーのお父さん役を演じています。Wキャストの相手は、そう、吉田鋼太郎さんです。その鋼太郎さんが舞台の袖から出てこられたので私はおったまげてしまいました。カムイビリーが劇の一部をはしょったのはこの時間を確保するためだったのです。

撮影クルーはTBSでこのハプニングではなくサプライズの映像が欲しかったのだと思います。

吉田鋼太郎さんは5分置きに泣いたとおっしゃっていましたが、あながち間違いとはいえません。安蘭けいさんと大月さゆさんのデュエット、益岡徹さんのフォークソング、阿知波悟美さんのソロ、アンサンブルの力強い歌声、そしてカムイビリーの「The Letter」や「Electricity」の情感豊かな美声とダンス、どれをとっても秀逸でした。

5分置きに泣く感性豊かな鋼太郎さんはカムイビリーに握手を求めましたが、彼は舞い上がっていて手が出せませんでした。益岡さんに促されてやっと握手ができ、そしてハグも。彼のご両親が一番喜んでいると思います。吉田鋼太郎さんの偉大さをよく知っているからです。

さあ、カムイビリーとは後2回でお別れです。10月25日の公演が最後ですが2、3階席は学生席なので打ち上げとして申し分ありません。明日の公演も楽しみにしています。

(19)10月21日(月)13:30開演

   頭の回転が速い人、それは?

昨日の公演はカムイビリーに絞ってから15回目の観劇になります。

今回の客入りは1階席は舞台に向かって右側の後方に空席がありまましたがほぼ満席の状態でした。2階席は半分近く埋まっていたような感じで平日の月曜日としては良い方だと思います。客層は40代くらいの女性が大半を占め男性客は極端に少なくて落ち着いた雰囲気でした。

今回の私の席は舞台近くのど真ん中でした。幸いにもお客さんによる見切りはありませんでしたが、カムイビリーの頭でトニー役の吉田広大さんの顔が全く観えない場面がありました(笑)。

通路側の席を勧めておきながら言うのも何ですが、ど真ん中の席は良いです。「M-13 Electricity」の場面で指揮者席に迫って来るカムイビリーの迫力を味わえるのはここだけです。私のためだけにパフォーマンスしてくれているという錯覚に陥るのもこの席ならではの特典だと言えます。

私の隣の隣のご婦人が開演前に「シンプルだったらもっと心に入って来るんだけどなー」と私の隣の人に話しかけていました。どの場面のことだか分かりますか?

それは「M-4 Solidarity」です。
私はこれには賛同できません。確かにジョージがジャッキーに「ビリーが4週間もボクシングの練習にきとらん」と言う場面でバレエガールを膝の上に乗せている光景を初めて観る人は頭が混乱するかもしれません。

バレエ教室と外で起きていることを同時に描くという演出担当のスティーヴン・ダルドリーのアイデアは特筆に値する英知そのものです。これをシンプルに描いていたら芸術性のない陳腐な作品になって飽き飽きしてしまうことになっていたでしょう。これは断じて容認できません。

この一つの場面は観客のイマジネーションによって二つの場面に分けられて認識できるように構成されています。つまり、観客のイマジネーションの力に頼っているのです。

私達がこの場面を飽きずに観られるのは4人の英知のお陰です。特にエルトン・ジョンの楽曲は素晴らしいの一言に尽きます。「M-4 Solidarity」は「M-13 Electricity」に次ぐ見せ場なのです。

さて、今回のハプニングは鍵と缶です。前者はカムイビリーで後者はハルトマイケルです。どちらも回収が速くてダメージを最小限に収めていました。しかもカムイビリーは咥える以外の方法で回収していました。これを目の当たりにして二人とも頭の回転の速い人だと思いました。

本多正識さんの記事によれば、頭の回転の速い人には共通点があるそうです。
それは「嫌なこと」を忘れるまでの速度が異常に速いということです。

秒単位で進行して行く
「BILLY ELLIOT THE MUSICAL」にはこの資質が必要だと思います。

ハルトマイケルとレイケヴィンの
「あっちむいてホイ」を観ていて思ったことが二つあります。
一つはストライキが子どもの世界にも波及し亀裂を生むということです。そして、もう一つは遊びです。

あの鍵を両足で挟んで跳ね上げグローブでキャッチするのも遊びだと思います。ビリーが思いついた遊びだからこれに一喜一憂するのはもう止めようと思います。

(20)10月25日(金)12:30開演

終演後も鳴り止まず!これはもしかしてカムイファンクラブ?

一昨日の公演はカムイビリーに絞ってから、16回目の観劇になります。

今回の客入りは2階席、3階席はバルコニーを除いて満席で、そのほとんどが女子高生でした。まあ、予想はしていましたが、開演前はとてもうるさくて、私は最前列の席からその姿を観ながらほくそ笑んでいました。それは彼女たちの拍手や声援でこの公演を盛り上げて欲しかったからです。カムイビリーにとってはこの日が東京公演の千秋楽なのです。

今回はハプニングはありませんでした。強いて言えば、「M-11 Swan Lake Pas de Deux」でドライアイスの煙が客席まで押し寄せて来たことくらいです。でも、不快ではありませんでした。むしろ、舞台と同じ環境にいることが誇らしくて私も宙を舞っていました。

今回の公演で注目すべき点は終演後の鳴り止まぬ拍手の嵐です。私は明日の東京公演の千秋楽でクワトロのビリーがカーテンコールで登壇すると踏んでいたのでそそくさと席を立ちましたが、会場の出入口にさしかかつても拍手は続いていました。それもそのはずです。ノーミスなのです。その出来は満足度100%、いやいやそんなもんじゃない120%!

この快進撃は、グローブで鍵をキャッチする技の成功に気を良くしたことから始まったように思います。昨日、観劇した東京公演千秋楽のエイトビリーは「クソ!」と言って鍵を咥えました。この前者の技はクワトロにとって鬼門なのだと思います。

カムイビリーとエイトビリーの大きな違いは間の取り方です。「M-13 Electricity」の場面で審査員がジャッキーに「何か質問はありますか?」と言った時、ビリーは父ちゃんに耳打ちします。その時間がエイトビリーは7秒、カムイビリーは15秒以上です。この静寂にエイトビリーは耐えられないのでどうしてもテンポが速くなります。これは年齢差に依るものなのか性格に依るものなのか分かりませんが、確かに言えることは静寂に耐えらるカムイビリーの方が精神的に成熟しているということです。

こうした下地があると表現の幅が広がります。今回の公演で印象深かったシーンを印象深い順に四つ紹介します。

一つ目は、「M-13 Electricity」のビリーの父親役である益岡徹さんの様子です。彼はカムイビリーが椅子の上で側転する時、アクシデントに対応できるような態勢をとっていました。そして笑顔でカムイビリーのダンスを観ながらフィニッシュが決まった時、涙を流していました。それは俳優としてではなくビリーの父親の涙そのものだったと思います。

同じ場面の歌唱の時、
「耳の奥で音楽が鳴り出して
でもそれは聴こえない 聴こえないけど 僕を動かす…」
の箇所でカムイビリーは審査員に力強くバレエ愛を訴えかけます。その時、最前列にいた私は審査員になりきっていて目を通じて合格のサインを出しました。

歌唱が終わって音楽が高鳴りいよいよフィニッシュに入ります。

微動だにしないフィニッシュに長い長い大拍手と「M-4 Solidarity」のフィニッシュで発した女子高生の「凄い!」の一言にカムイビリーの進化を確信しました。

余談ですが、クラシックでは指揮者のタクトが下ろされるまで拍手をしてはいけないというルールがあります。ミュージカルは真逆で演者が動き出したら拍手をやめなければなりません。

二つ目はサンタマイケルのはっちゃけ振りです。
クリスマス会の後の場面でサンタマイケルはビリーにバレエを踊ってと女の子の声で催促します。マイケルになりきる覚悟があってこそできるパフォーマンスです。彼にも大きな拍手を送りたいと思います。

三つ目はレターの音楽性です。宝塚出身のお二人のデユエツトは何度も聴きたくなる美しさで心が満たされます。そこにカムイビリー美声が加わることで芸術の域に達します。人は芸術なしでは生きていけません。めっちゃ特別な才能に触れる時、人は高揚し生き甲斐を感じるのです。私の隣のご婦人はマスクを外しハンカチーフで何度も涙をぬぐっていました。私は嗚咽を堪えるのが精一杯で涙は流れるままにしておきました。

四つ目は会場の一体感です。この日のお客様はリピーターがほとんどで俳優さんのパフォーマンスに合わせて拍手したり歓声を上げたりしていました。こういう空間に身を置くと安心して観劇に集中することができます。レターの涙の後はブギーの楽しいスイングを堪能しました。もう一度この一体感を堪能したいという思いが募り大阪行きを決めました。今しか味わえないこの時をチャンスを大事にしたいと思うから。

(21)10月26日(土)17:30開演

 東京公演の千穐楽!満員御礼!   

10月26日ソワレの公演はエイトビリーの観劇となります。千秋楽というだけあって満席でした。こうした光景を見るのは今回が初めてでした。

これまでカムイビリーに絞って観劇して来たので2ヶ月前に観劇したエイトビリーのダンスシーンの記憶がありません。今回はそのシーンを観て特段の懸念はありませんでした。一つだけ気づいたことは、カムイビリーは左利きじゃないかということです。舞台の位置取りが真逆でした。2005年のエリオット・ハンナのライブ版通りだったのはエイトビリーでした。エリオット・ハンナが左利きの場合もあるので断定はできませんが。

この公演で印象に残ったのはラストのレターの場面です。エイトビリーはハスキーボイスです。これが母との別れに上手くマッチしていて哀愁を帯びます。ハンカチーフ無しでは観られない名場面だと思います。

カムイビリーが軟派タイプなのに対してエイトビリーは硬派タイプだと思います。

どちらが好きですか?

その答えは人それぞれで正解があるわけではありません。それで良いと「BILLY ELLIOT …」が教えてくれています。

私には疑問に思っていたことが二つありました。

一つ目はウィルキンソン先生役の安蘭けいさんと濱田めぐみさんの見分けがつかないという疑問です。それはお顔だちが似ているからだと思いますが、つい最近、ウィルキンソン先生の第一声「椅子!」の言い方の違いに気づき、見分けられるようになりました。
きつい言い方をするのが安蘭さんで、それほどでもないのが濱田さんです。
このことからエイトビリーは安蘭さん系でカムイビリーは濱田さん系と言えるかもしれません(笑)。

二つ目の疑問はラジカセの仕掛けです。ラジカセを移動させてもラジカセがある位置から音が聞こえてくるのが不思議でしようがありませんでした。

素人の仮説なので音響の専門家さんに笑われてしまわれそうですが私はラジカセも俳優さんの一人だと捉えればその疑問は解けると思いました。つまりラジカセに小型マイクを取り付け、音源は音響ブースにあり送られてくる曲をラジカセが拾って音を出しその音をラジカセの小型マイクが拾って音響ブースに返しブース側で音量を調節して大スピーカーで鳴らすという仮説です。

この仮説が正解かどうかは分かりませんが、兎に角、この作品は全てが凝った作りになっています。特にフィナーレはスタンディングオベーションにはもってこいです。

終演後も鳴り止まない拍手の洪水がそれを如実に物語っています。

「あの感動をもう一度!」

耳の奥で音楽が鳴り出して大阪に来なさいと誘っています。

やれやれ😌

(22)11月19日(火)12:30開演

パワーアップしたカムイビリーの大阪公演

耳の奥で音楽が鳴り出してとうとう来ちゃった大阪へ。もちろん追いかけるのはカムイビリーだ。東京公演の10月25日が最後だったので25日振り。17回目の観劇やで!やれやれ~(笑)。

大阪でも集客に苦戦していたのでチケットの売れ行きを毎日調べていたが、どういう訳か11月19日のマチネだけが満席だった。

会場に入ってその訳が分かった。男女混合の高校生だ。会場のSkyシアターMBSには3階席がない。高校生の席は1階席後方の三分のニと2階席の全てだった。まあ賑やかなことこの上なしといった有様で。でも、嫌いじゃない。私には若い人に観てもらいたいという強い願望がある。この素晴らしいミュージカル作品を受け継ぐのは彼らにおいて他にないと思っているからだ。ここに、ビリー役の春山嘉夢一とマイケル役の髙橋維束の名コンビを充ててきたのは大正解だった。

カムイビリーのパフォーマンスは確実で安定感が半端ない。満足度100%!いや大阪まで来たんやで、200%や!

私は「M-1 The Stars Look Down」からもう目がうるうるしている。

鬼門の鍵をグローブでキャッチして「よし!」の声と共に気合いが入る。ここから快進撃が続いていくのだ。

「M-3 Grandma′s Song」に入る前の影絵のワンシーンで見せるターンが美しい。軸足がしっかりしている姿を観て、観劇中の高校生もこのミュージカルが子供だましの劇じゃないことを悟ったに違いない。

第1部の見せ所「M-4 Solidarity」の決めポーズを観て高校生の大拍手と声援が会場に響きわたる。とても心地良い。

大人はイマイチ反応が鈍いというか遠慮がちだ。チケット料金1万五千円も払って、はっちゃけないのはもったいない。私はこの他に交通費とホテル料金が加算されている。それはいいとして、会場に行く着くまでのドラマが笑える。

自宅を6時半に出て、新幹線に乗り新大阪駅に着いたのが10時50分だった。開場まで時間があったので大阪駅近くのくら寿司で昼食を取ることにした。ところが道に迷って時間を食ってしまった(笑)。

大阪駅に戻ったのは12時。SkyシアターMBSをスマホのナビを使って探したが見つからない。ナビを諦め案内表示にあったタクシー乗り場を目指した。タクシーに乗車して行き先を告げたら運転手さんは「どこだろう」と思案顔だったが、5mくらい進んで止まり「後ろのビルですよ」と言われて500円支払ったら運転手さんは申し訳なさそうな顔をしていた。私は感謝の念でいっぱいだった。私は知らぬ間にSkyシアターMBSに向かっていたのだ(笑)。それは天使の導きだったかもしれない。

SkyシアターMBSのビルの外観は東京公演の会場だった東京建物ブリリアホールとよく似ていた。でも、音響はブリリアホールの方が明瞭だった。形状は3階席のないSkyシアターMBSの方が良い。

イツカマイケルの第1部の見せ場は「M-5 Expressing Yourself」だが彼は歌が上手い。カムイビリーとのタップも息がぴったりで絵になる。華のある彼は芸能界に残りそうな気がする。俳優さん達にも愛されるカムイビリーは冷静沈着で潔いから他の才能を活かして自分らしく生きる道を選ぶかもしれない。それでこそ、ビリーの世界が観えてくる。

「M-6 The Letter」はいつものことだが泣かされる。彼の歌唱には気品が漂う。「母ちゃん」や「父ちゃん」の響きも悪くない。回を重ねるごとに台詞の言い回しも微妙に変わり深みを増して行く。彼の探究心は本物だ。

「M-7 We Were Born To Boogie」は完璧だった。ウィルキンソン先生の背後に入る縄跳びは時間との勝負。これを難なくこなして波に乗るカムイビリー。二重跳びからのタップを加えた縄跳びが速くて目を凝らす。ラストはピアノの上からの宙返り。微動だにしない着地にお客様も大喜び。この舞台と客席の一体感がミュージカルの醍醐味だと改めて思った。

第1部のラストを飾る「M-8 Angry Dance」は大音響のロック演奏が舞台を盛り上げる。作曲家エルトン・ジョンの凄さが伝わってくる1曲だ。四方の壁に閉じ込められたカムイビリーの怒りのダンスでは持て余す場面があったが、大阪公演ではそれがなくなって改善されていた。つまり、パワーアップしていたのだ!

このダンスに対する拍手はビリーが大声を上げて舞台に倒れ込む所から始まり、彼が立ち上がってお客様に怒りの表情とジェスチャーを見せてから舞台袖に入るまで続くのだが、拍手が途中で途切れたため、私一人の拍手が会場内に響くことになってしまった。でも恥ずかしくなかった。東京公演ではそれが当たり前のことだったから。これもいい思い出になった。

第2部の始まりはトニー役の吉田広大さんの募金活動から始まる。
私の席は通路側(花道)に近かったので1番に募金した。広大さんにまじまじと見つめられて嬉しかった。

一つ発見したことがある。目覚まし時計をセットする場面だ。あの時、目覚まし時計とラジカセはワンセットだった。つまり、ラジカセに小型マイクが装着されているということだ。音源は目覚まし時計ではなく音響ブースにあるということ。私の仮説(21)は正解だったに違いない!と思う(笑)。

もう一つ。東京公演時に書かなかったことを書いておきたい。それはフェンスのことだ。ビリーの父親ジャッキーがスト破りをする場面でフェンスがセットされた。フェンスの動きには三つの場面転換があった。一つ目は客席側が炭鉱の外側になる。二つ目はフェンスがスト破りを乗せるバスになる。三つ目は客席側が炭鉱内になる。この場面転換はロンドン版にはない。改めて素晴らしいアイディアだと思う。

第2部最大の見せ場「Electricity」は見納めに相応しい出来栄えだった。満席の中での大拍手と歓声はカムイビリーの勲章になることだろう。この日の夜は良い夢を見たに違いない。私は22回も良い夢を見させてもらった。

再再再演はないかもしれない。だとしたら見納めがカムイビリーで良かったと思う。何故なら彼は天使みたいなビリーだったから!

                   まとめ

この総集編は「BILLY ELLIOT THE MUSICAL」の作品に対する愛の結晶です。

Loving can cost a lot, but not  loving always costs more.
                               Merle Shain