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『虎に翼』第62回 光三郎はおひとよし

 昭和24年(1949年)春、家長である大庭徹男を失い、遺産相続で揉めております。

徹男の母:常
徹男の妻:梅子
徹男の長男:徹太
徹男の次男:徹次
徹男の三男:光三郎

 さあ、どうなるのでしょうか?

知ると理解は別

 家裁の調停委員とは、助言をしつつ、解決を目指します。その調停のプロである長峰も根本も困惑するほど揉めています。なんでも長男の徹太が頑固だとか。自分が課長として大庭家を守るという一点張りだとか。その手の長男は多いそうですよ。
 これは実のところ,猪爪直明も一時期こじらせそうになりましたね。それを寅子が救ったことが、結果的に彼を幸せにしたのだとつくづく思います。
 寅子は困惑しつつ、大庭家は新民法に詳しいはずだといいます。知ると理解は別だと根本。この国に染みついた家制度の名残は消えんと根本はまとめます。

 寅子は悩むあまり、家庭局で奇声を発しております。寅子は割と変な行動があって、かつては枕にあたったり、家の中を歩き回っていたものです。それが成長とともにおさまったようで、おさまりきれていない。多岐川はせめてきちんと言葉にしろというものの、守秘義務があるんだそうで。
 多岐川はこじれたなら調停は不成立、寅子の出番だという。でもそれでは友のために何もできないというと、多岐川は寅子にできることは何もないとぶん投げるわけです。弁護士を信じろと。それは全くもってそうなんですけど、そういう言動は反感を招きかねませんよ。人一倍人情派なのにね。バランスが悪い奴だ。

息子にはそれぞれ心配な点がある

 さて、その轟は梅子に力強く任せて欲しいと言っています。よねは黙ったまま、考え込むような顔をしています。轟単体だと暑苦しいし、よね単体だと無愛想なので、いいペアだと思います。
 梅子は自分はともかく、息子3人に均等に分配したいといいます。
 長男・徹太は夫と瓜二つ。
 次男・徹次は戦争のあと、酒浸りになりPTSDに悩まされている。
 三男・光三郎はお人よしが過ぎる。
 梅子は3人とも心配だそうです。でも徹太はもう彼の妻・静子がどうにかする範囲でしょう。もうどうにかできないとも思うし。轟はどんな子でも自分の息子はかわいいとまとめ、梅子も同意するものの、どうなんでしょうね。
 梅子は息子の誰かが損することがないようにしたいという。でも、徹太はどんな決定だろうと不満でしょうね。彼は全額相続が自分の権利だと思っている。彼以外が相続したら損だとみなすでしょうから。

道男の稲荷寿司と花江のときめき

 花江と寅子は、眠る我が子をかわいいと見つめています。
 花江は寅子に夜食を勧めてきます。ちょっと不恰好な稲荷寿司は、道男が練習で作ったものでした。寅子は道理で私が作ったみたいだと微笑みます。ここで花江は「かわいいわよねえ」といい、漬物でも切ろうとワクワクしながら台所へ向かいます。
 どうした花江? 疲れが吹き飛んでいるどころか、なんだか元気いっぱいだぞ? 歩き方までかわいい。ここの和服ならではのチョコチョコした足運びがかわいいんですよね。
 直人はここでこうきた。
「道男が来たからだよ」
 寅子は鈍感なので、はるにかわって気にかけているのだろうとまとめます。
「俺にはわかる。恋は人を笑顔にする」
 そう正座して真面目にいう直人に、寅子も直昭も笑い出します。寅子はそんなわけないというと、直人はこうきた。
「昔おばあちゃんも言ってた。まさか寅子と優三さんが一緒になるなんて、人間何があるかわからないって」
 これには寅子も黙るしかない。昭和のホームドラマらしく、犬の遠吠えが聞こえてきます。

 いいんじゃないの。花江は本気でどこまで好きかわからないけれども、昔から恋愛脳でした。それが正直鬱陶しかった。しかし、恋の力は強い。花江は別にどういうことにならなくても、道男が綺麗な顔だといい、ちゃんづけで呼び、憧れることでエネルギーをもらって潤っている。将来道男が誰か別の人と一緒になろうとも、憧れのマドンナは私、初恋の相手は私、そう思うだけで笑顔になれるんですね。
 鈍感な寅子にはわからん境地だ。そして、花江はこういう恋をしている時が一番美しい。

母に捨てられてから人生が狂った

 梅子は徹次に、父の知り合いからの仕事を紹介します。しかし酒浸りの息子は応じない。それどころか、俺を置いて逃げたと母を責めます。ここで廊下にいた光三郎が入ってきて、行きたくないと言ったのは兄さんだったといいます。それでも徹次は、子どもを置いて逃げた母を許せない。母が謝ろうと、謝れば済むと思っていると怒る徹次。あの日から人生がおかしくなったと猛り狂います。光三郎は本質をつきます。
「お願い、もうやめようよ! これ以上、お父さんたちのまねしてお母さんをじめるのは。昔みたいに戻ろうよ、一緒に、お母さんが握ってくれたおにぎりを食べてた時みたいに」
 徹次は弟の言葉を否定しつつ、動揺しています。思い当たる所はあるのでしょう。劇中に戦争から戻り、PTSDになった帰還兵は出てくると思いました。彼がその枠のようです。

常の変心

 寅子が出席し、また調停の場が設けられます。傲慢な徹太は、弟たちの中で社会に出ているのは自分だけだといい、祖母も、母も,面倒を見るといいます。そして徹次を怒らせ、光三郎が止めに入るのでした。
 さて、ここで常が徹太には面倒を見て欲しくないといい出した。しかも、それは梅子が徹太の嫁をしつけなかったせいらしい。口答えばかりでバカにする嫁への復讐をその場でせず、ここまで持ち越してやらかしているわけです。あの静子はこのあと夫にさんざんいびられ、そりゃ苦労することでしょう。直接仕返しするより効果的です。
 では常は誰の扶養に入りたいのか? それは光三郎だそうです。光三郎により多く相続させるべきだと常は言います。まだ学生とはいえ、数年もすれば立派な弁護士になると。そして、家出に連れて行ったくらいだから、梅子もついてくるだろうと。生意気な静子ではなく、従順な梅子に面倒を見させようとしているわけです。
 梅子が反論し、光三郎の気持ちを確認すべきだというと、お人よしな光三郎は「いいよ」と言ってしまいます。責任感の強い彼は、祖母と母を兄に任せられないのだとか。
 そう引き受けつつ、祖母が母をいびらない、命令しないことを約束するよう取り付けます。光三郎は優しい上に賢いのですね。
 常が反論すると「約束,できる?」と強い口調でいう光三郎。これ以上母に苦労させたくないのだと。常もおとなしく折れるものの、どうなるのでしょうか。

これで一件落着でもなさそうだ

 寅子は感無量です。梅子が女子部にいたのは、離婚し、親権を得て、子を育てたいと考えていたからでした。それが紆余曲折を経てかなった。そううれしくてたまりません。喜びのあまり、家庭局で叫ぶ寅子。そんな虎の咆哮みたいなことせんでもよいじゃないかと思いつつ、これでこそ虎だとも思えます。同僚たちは動揺していますが。
 多岐川はここで話があると寅子に言い出します。仕事上のことかと思ったら、一緒にラジオ出演しろとのこと。受け入れてから驚く寅子です。
 家に戻り、花江に報告すると喜んでくれます。家族みんなで聴くと約束します。寅子に何を着ていくのかたずねる花江。ラジオは声だけだと寅子がいうと、着飾るべきだと花江。そして寅子が眠そうにしていると、家事はいいから寝てよいと促す花江なのでした。
 道男、花江ちゃんにお稲荷もっと作ってきて。そう言いたくなる姿でした。

 梅子が光三郎はおひとよしと言っていた以上、この先は罠がありそうですが、とりあえず次へ続くようです。

 

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小檜山青 Sei KOBIYAMA
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