『ゴールデンカムイ』#272 イポプテ
教会に突入する有古力松、アイヌ名をイポプテ。
日露戦争の塹壕で、彼は菊田にマキリを作りたいと言っていました。好きな女相手ではなく、自分用にそうしたい。彼の父は、かつて目の前でさりげなくマキリを彫っていました。
イポプテは真面目だった。
アイヌとしてからかわれたら喧嘩する。和人だろうと助ける。アイヌの将来のためにも兵士として奮闘する。
でも、アイヌってめんどくさい。そういう気持ちはあった。
それでも父は、マキリを作っていた。現物さえあれば真似して作れるだろうと。そんな父は死に、マキリもなくなった。もっとしっかり見ておけばよかった。
そう聞かされた菊田は、罪悪感に満ちていたのです。
そんなイポプテは、刺青人皮をばら撒いた教会に突入してきます。土方一味を見つけたと言いますが、鶴見は裏切りに気付いていた。月島と鯉登も入ってくる。
アシリパとソフィアを逃すべく、イポプテは奮闘します。ソフィアも縄を切って暴れ、アシリパと脱出。杉元らと合流する。しかしイポプテは月島に撃たれ、足を負傷します。鯉登はやる気がなさそうというか、なんだかおかしな反応ですが。
菊田は杉元がノラ坊、杉元は相手があの菊田さんだと確認します。
菊田がイポプテに近寄ると、月島が無表情に相手の胸を撃つのでした。撃った月島の目が輝いています。
しかし、その月島、鯉登が横にいない。
アイヌとして生きること、和人にはエンパシーが必要
イポプテの思いはリアリティがあった。
アシリパ、ウイルク、キロランケ、インカラマッ。メインとなるキャラクターは、アイヌでも特別枠だとは思います。ウイルクとアシリパは、コタンでもそれなりの地位にいたとわかる。美男で弁舌豊かで賢い。そんなキロランケは尊敬を集めていたことでしょう。インカラマッは占い師。
イポプテは普通のアイヌだったのだろうと思います。生々しくて、うちの先祖もこうだったと思える造形。アイヌだからみんな手先が器用なわけがないし。狩りなんてできないし。言葉もわからないし……普通の人間として生きたい。問題意識はあるし、差別には断固反対するけど……でも、アイヌってめんどくさいな。ただ、普通に何も考えないで生きたいんだけどな。
でも、そうやってアイヌのことなんか伏せて生きてきたら、いろいろ失ったような。
そういうジレンマを抱えている人はきっといると思う。アイヌとして紹介されるのはスゴイ人ばっかりで、それはなんかちがうよな、となってしまうというか。
スマホでゲームしててもいいじゃん。別にそんなのいいだろ。アイヌならみんな森で彫刻してろとかやめてくれよ。そういうぼやきがあるというか。
なんというか、イポプテは、あまりに生々しい、等身大の像だと思いました。
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