『虎に翼』第119回 自分で道を選ぶのがいい
のどかが恋人を連れてくる日がやってきました。
寅子は玄関前で座り込むのどかと恋人・吉川誠也をみつけますが、どうにも踏ん切りがつかないようです。ぎこちない初対面の挨拶が交わされます。
優未の選択
寅子がそっと家を覗くと、航一と優未が話し合っています。航一は優未の決断に納得できていないとのこと。優未は大学院を辞めるといい、航一はそれに納得ができないようです。
航一は本当は悩んでいるからこそ、一番に自分に相談したのだろうといいます。優未は母相手だとお腹がギュルギュルしてしまうそうです。航一は研究者にならなくとも博士課程を終えてから考えても遅くはないといいます。優未は謝りつつ反論します。大学、修士、博士と進むなか、遠回しにこう言われてきたと優未は言います。この先に、お前の椅子はないと。
優未は初めて勉強が楽しいと思えたからこそ、ここまできた。しかし博士課程の先の椅子は男女ともに少ないのだと。航一は厳しい戦いかもしれないけれど、男女関係なく機会は訪れるはずだと言います。もう戦う自信がないと優未。この先、自分の目がキラキラしているかわからない。寄生虫を好きでいられるかもわからない。だからここで諦めると言います。
やめてどうするのかと航一。そのさきはまだ考えていないとのどか。航一は興奮したのか、背広を脱ぎ、また続けます。今弱っているだけだ、諦めずに進めば希望はあると励まします。
「航一さん、黙って!」
寅子がたまりかねてここで入ってきます。
「優未の道を、閉ざそうとしないで」
「閉ざす? 僕は彼女に諦めるなと伝えてるんですよ?」
「それが、優未の進む道を妨げているの。どの道を、どの地獄を進むか諦めるかは優未の自由です」
そう言われて、航一はこの9年間の時間を無駄にしろというのかとくってかかります。こういうサンクコスト理論はいけませんね。ここで寅子は「はて、無駄?」と言いつつ、こうたたみかけます。
「手にするものがなければこれまで熱中して学んできたことは無駄になるの?」
航一もここで「なるほど」といい、限界ヘムあいます。抽象的で情緒的な方向へ議論を持っていこうとしていると。そうでなく、寅子は挫折する人を大勢見てきたんですよ。法律を学び、それと無関係の仕事につくなり、家庭に入るなりした仲間たちのことを考えている。抽象的でも情緒的でもない。むしろそれはそういう犠牲を「雨だれ」とまとめていた穂高あたりがそうでしょうね。
「私は努力した末に何も手に入らなかったとしても、立派に生きている人たちを知っています!」
「寅子さんが現実を見ていない、甘すぎる! この年齢で何者でもない彼女に社会は優しくない!」
そう興奮してくる航一。彼もやっぱり、父はエリートで、恵まれて育ってきたがゆえの間違った努力を信奉している。メリトクラシーの弊害を体現していますね。この時代で女である優未は、この先がんばっても何者にもなれないと判断した可能性を否定している。
「私は、優未が自分で選んだ道を生きて欲しい」
寅子はそういうと、優未に向き合いこう言います。
「あなたが進む道は地獄かもしれない。それでも進む覚悟はあるのね?」
「うん、ある」
にっこり微笑む寅子。それでも航一は、駄目だ、絶対に駄目だという。航一なりに可愛い娘が傷つくのを見たくないのだとか。
自分の一番で生きること
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