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『カムカムエヴリバディ』第112回(完) 2000年代で止まった頭と投げっぱなしの伏線、そしてオカルト
よかったことは終わっただけ。そんな最終回だった。
告知でも
次の朝ドラは、いくらなんでも本作以下ではないのですが、時間も無駄ですし。さくっとだけ書きます。いいかげんもっと金を稼がないとあかんのでどうなることやら。
しかしドラマなんてさあ。テキトーにファン向けに褒めた方が仕事は入ると思うよ。うん。なんだかもう。
仕事くらい真面目にやろう
そこだ。
ご指摘を受けて気づきましたが、ジョーのトランペットの音源が使い回しの上、音が割れていると。照明、小道具、衣装、メイク、カメラワーク。何もかもが手抜きで変。ちらっと映るだけのポスターすら手抜きで、どこに制作費が消えているのかと。
あ、宣伝記事のギャラですかね。
一体何の祭祀をしているのか?
怒涛の伏線回収というけれど。このドラマの場合、投げっぱなしを強引に回収しているだけだから。いくつになったか不明のひなたがあの男の子と再会? ナレーターと同じ声? やっつけにもほどがある。
それでも初恋キュンキュンとか、そういう昭和じみたラブコメで頭が泊まっていれば萌えるのかもしれんけど。
ひなたはこの世代のシングル女性が直面する困難が見えてこない。そういうものをリアリティをもって描いた『半分、青い。』のタコ殴られっぷりを想像すると、そういう臭いものに蓋をしてキュンキュンするほうが売れ筋ってことでしょうけどね。
ハッキリ言いますけどね。
このドラマ、脚本に「北川悦吏子」とあったら、この馬鹿げた伏線回収なんて袋叩きだったでしょ? 「藤本有紀」だから、飼い慣らされたファンが「神!」「号泣!」「伏線回収!」と踊り出すわけだ。
一体、何の祭祀なのかな。
2000年代で止まった意識
このご時世で2025年を描いても、コロナの影響も何もない。映画村なんてそれこそ寂れているというのに。インバウンド頼りの危険性や翳りも見えてくるし、そもそもその観光客にしたってアジア系が多数を占める。
それなのに、ビリーとひなたの再会。ほんとうに民放の「日本スゴーイですね!」番組を朝ドラにしたようなもんでしょうよ。
国際的に日本の英語力がお粗末であるとか。コンテンツが遅れていてヒットしないとか。そう言われて崖っぷちなのが2020年代なのに。
このドラマでは、2000年代で認識が停止しているから、『ラスト・サムライ』の劣化版がハリウッドで受けた世界観を描いている。舶来上等、ジャズだのなんだの、自分らの親世代の青春をろくに調べずうっすら取り入れたような要素で盛り上がる。
『ちりとてちん』は2007年。2000年代も後期のドラマだった。そんなドラマを持ち出し、再来だと言いたい層。意識をアップデートできない層はやたらと踊りまくる。
そういうTiktokではなくTwitterを使っている年代の、2ちゃん実況板じみたノリの投稿を引っ張ってきて、ネットニュースを作って昼にはあげる。で、ヒットした空気を生み出す。
でもそれももう終わりですよ。
思えばなんで平家が滅びるか、そこも伏線回収した神大河だった
十年以上経ったものを蒸し返すのもしつこいけど。
『鎌倉殿の13人』と比較すると、どんだけ平氏が色々舐め腐っていて、必敗か。そこを描いた大河なので、その要素を蒸し返しまーす。
・「遊びをせんとや生まれけむ」をフレーズにするおろかしさ
→それ、後白河法皇の好きなフレーズだろ。そういうツッコミもあるけど、そんな舐め腐った態度で坂東武者に勝てると思っていたんですか? 真面目に合戦しろ、真面目に! 逆落としで葬るぞおぬしら!
・輸出品特性を理解せずに貿易する
→清盛が宋剣を装備してドヤ顔ね。日宋貿易の目玉輸出品は日本の刀剣じゃ! むしろ日本刀でバタバタ源氏を血祭りに上げてセールストークでもせんかい。宋剣は片手で持っていたけど、ああいう剣で斬首なんて絶対無理だから。
・兎丸のデカい船な……
→あれ、宋船と呼ばれていたけど、当時の呼び名「唐船」では? 『鎌倉殿の13人』ではちゃんと「唐では……」と単語を使っていますが。
そもそもがああいう貿易船は、相当気合と金と技術がないとできんのよ。なんで兎丸程度が持っているのか不明……。あと当時は接舷戦闘だから、ああいう船は貿易にしか使えないのよ。ゆえにあっても、水上戦において特段平氏に有利にはなりません。そういうもんをドヤ顔で作って出して予算不足になるってどういうことなんだよ!
んもー! 宋関連考証が無茶苦茶よ! 小島毅先生呼べばよかったのに!
あ、小島先生、今年の大河本出さないかな。ついでに昨年の水戸学礼賛大河もぶった斬ってください。
そりゃ韓流に負けるわ
三谷さんが出たから言っておきますけどね。
三谷さんはミステリ得意なだけあって、伏線と回収がちゃんとしている。が、これはなんだ?
「小豆に語りかけるとおいしくなる! これがあんこのおいしいコツです!」
「経歴詐称していたのでアニーが誰だかわかりませんでした〜」
こういうのはミステリでやったらあかんやつ。舐め腐っているとしか思えん。これでよくプロを名乗れると思う。こんなの持ち上げていたらそりゃ、日本の芸能は韓国に完敗する。韓国は脚本が緻密ですからね。
日本の芸能界ももう、限界ですね。
映画界にやっとMetooがおよび、飛び火も当然あるだろう。そのうえ肝心の作品がコレ。電通のノウハウを使った雑なネットこたつ記事で「ヒットした空気」を作り出してお茶を濁す。こんな雑な仕事がいつまでも通じると本気で思っているんですか?
いいかげん、先に進みませんか?
こういう「突っ込んでいいやつをしつこく笑いものにする」ノリが薄寒くてほんとうにいやなんだってば。なんていうかノリが2000年代、ダウンタウンあたりで止まっておりませんか? 本当にくだらない。笑いのセンスがラジオや週刊漫画誌の投稿コーナーで止まっているというか。
「カムカム」最終話、最大のサプライズは「夫の田中」…ネット騒然「最後までびっくり」(スポーツ報知)
#Yahooニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/87fc4d10736ad44c2a0e06cf63bd7771a3470b76
「カムカム」お見事完結!結局こうなった100年家系図 一子の夫の正体は誰だ(日刊スポーツ)
#Yahooニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/771ac846733c4731b86d666283dfd4f8d3564de6
で、こういうスポーツ新聞と同じノリを朝から共有して、何か得られるものはありましたか?
このドラマって結局、テーマなんてろくにやらない。ラジオ英会話なんてあの勉強法ではマスターなんてできないとしか言いようがない酷さ。それでもこういう誰かを小馬鹿にしておちょくるノリと、誰と誰がくっつく(しかもヘテロだけですね)、そういう恋愛ネタ、芸能界のゴシップみたいなものだけで引っ張ってゆく。
2000年代ワイドショーのノリをひきずり、自分は業界通、ドラマ通……そう言いたい人には響くかもしれませんけどね。
オカルトを喧伝するな
最後に。
いいかげんオカルト喧伝はやめろと。最後まで小豆に語りかければ美味しくなるとうれしそうに唱える。陰謀論者集団みたいでゾッとしました。
NHKは特殊詐欺に騙されないよう啓発するニュースを流している。一方で、こんなオカルトじみた、Qアノン発生装置みたいなドラマを朝っぱらから流す。
受信料で視聴者のリテラシーを下げてどうするんですか。いいかげんにしてください。現実逃避とオカルトと2000年代回顧。何もかもが無惨なドラマでした。
私はただの駄作ならここまで怒らないんですよ。戦争体験者。時代劇関係者。こうした人々を侮蔑したうえに、オカルト趣味だのなんだの植え付けることを問題視している。水戸学礼賛および日本の朝鮮半島支配を正当化する大河ドラマが嫌いなのも、有害だから。
受信料でこんな毒を流して、恥ずかしくはありませんか?
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