『ゴールデンカムイ』#288 爽やかな男
表紙にてこれまでの流れが振り返られます。鯉登は1885年、明治18年生まれと再確認。アジア・太平洋戦争では指揮を執っている世代です。
1869年、爽やかニシパに出会った
1902年、鯉登音之進が誘拐された歳――。
権利書を前にしたウイルクたちは、政府を信じていません。はいそうですか、と引き渡すはずもない。政府要人に会えるわけもない。どうする?
あのニシパならつないでくれるかも……そうキムシプに思い出されるのは、1869年のこと。箱館戦争です。榎本武揚と会うために五稜郭に来たキムシプは、さわやかなニシパに出会います。馬の井戸から水を汲むことを手伝ってくれる。土方歳三です。
彼は戦と馬と女のことしか得意じゃない! そう笑顔になります。物差しの扱いといったアパレル系の技能もあったそうですが、この場では関係ないか。呉服屋勤務経験があるのですね。
一方、榎本武揚はその才能を黒田清隆に惜しまれるほど優秀でした。
土方は頭は悪くないけれども、政治力や漢籍読解力はない。フィクションでイメージがおかしくなってしまいましたが、近藤勇がその方面では抜群に優秀でしたので。土方は漢籍知識はさほどなく、俳諧が趣味でした。せいぜい和歌まで。近藤のように漢詩を作るところには至っていないと。その程度の知識なので、新政府側もスカウトするなく殺しにいけたのでしょうね。もっとも、土方は生き延びるつもりはなかったそうですが。
さて、榎本は土方にも明かさず、交渉を続けていました。キムシプたちは慎重に金塊を払う準備をしています。そうこうするうちに新政府軍の総攻撃が始まり、幕府軍の敗残兵が街に火を放ち、大変な混乱に陥りました。
このご恩は忘れないと爽やかニシパは言った
キムシプはここで撃たれた爽やかニシパこと土方を見つけます。ほっとけと言われながら、キムシプは土方を助けます。病床で土方は、回天丸炎上と弁天台場降伏を聞かされます。
土方はキムシプに頼み、函館山の観音様像を見に行きます。艦砲射撃の音を無念とともに聞く土方。そこへ薩摩出身の兵士がやってきます。アイヌの服を着ている土方を見破り、彼の顔を知っているということは、京都で因縁があったのでしょう。アイヌたち土方をかばい、犠牲者も出てしまいます。土方は助けてもらったご恩は忘れないと言い残し、連行されてゆくのでした。
キムシプは政府軍に引き渡した負い目もあり、土方のことは言えなかった。でも処刑された、死んだという話はない。収監されているという話も聞く。いっそ脱獄させたらどうだろう? そう考え、あの馬の井戸に金塊を隠したのでした。
恩を忘れていなければ、未来のアイヌに報いてくれるだろう――そんな希望をとともに、あの金塊は埋められたのです。
でも、土方はさておきまして、ここで重要なのは榎本武揚ではありませんか?
榎本武揚は函館まで逆らったにもかかわらず、薩摩藩の黒田清隆に助命され、そのことに恩義を感じて明治政府で働いた。そんな榎本がアイヌのために動くはずもない。
となれば、どうすればアイヌは救われるのでしょうか。
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