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『ゴールデンカムイ』第41話「シネマトグラフ」とマイクロアグレッション

 前回がニューロダイバーシティなら、今回はマイクロアグレッションについて考えてゆきます。アニメにそんなポリコレとかどーでもいいし!……そういう方のご要望には添えません。あしからず。

この回には大きな“嘘”がある

 フィクションは嘘をついてナンボのもの。とはいえ、今回はまず大前提に嘘があります。それは何か?
 高価で珍しいシネマトグラフの監督を、アイヌの少女であるアシㇼパにやらせるわけがない。令和現在ですら当事者の声を軽んじてふさごう、マウントとろうとする和人ばかりなのに、あまりに現実味がない。
 荒唐無稽な設定だらけの本作で言っていたらキリがないけれども、綺麗事だということは指摘しておきます。杉元が命を助けたと脅していると説明はされているけれども。

 そういう嘘をどうしてするりと受け入れられるか。アシㇼパが有名監督パロディをしている手法もあるのでしょう。ニヤニヤしているうちに、無茶苦茶な話もするっと入ってくる。何かに砂糖をまぶしてあるかのよう。

あの年齢の少女がそうそう下ネタばかり選ぶものか?


 
 パナンペとペナンペは、日本でもある「よいお爺さんと悪いお爺さん」の類です。パナンペが小狡いことをして酷いめにあうことを教訓としているのです。
 そんなたくさんある話の中で、よりにもよってアシㇼパがあんな下半身ネタを選ぶのでしょうか。チカパシが下ネタで笑いをとりに行くのはまだしも。
 そういうところに、やっぱり作者は成人男性だという手癖は出ている。こういう手癖って一度気づくと振り払えないものです。

松前藩とアイヌの関係が民話からもわかる

 パナンペとペナンぺの話には、松前藩の女たちが出てきます。そして彼女らが干していた着物がアイヌにとっても貴重だとわかります。
 アイヌへの差別を振りかざす手合いは、和人の手が入ったものを断固として認めないことが往々にしてあります。そんなわけないだろ! 和人の布地を利用したもの。漆器。そういったものもアイヌ文化に含めます。当たり前だ。
 アイヌ視点で説明してもわからない和人に説明しましょうか。
 
 鎌倉からは南宋から輸入した磁器が発掘され、国宝指定もされている。それを「元は中国のものを国宝にしているとかどうなのw」と笑われたらどうする? 
 日本には「漢方」がある。もとは中国から伝わったとはいえ、日本独自の技術、江戸時代中期以降はオランダ由来の技術も融合して現在に至る。それを「一から日本人が考えてないからなしw」と言われたらどうする?

 文化とは交流を経てできるもの。
 そして和人だってアイヌとの交流で得たものはたくさんある。北海道グルメの代表格である三平汁は、オハウが元ともされる。北海道にはアイヌ由来のものがたくさんある。
 そういう利益を享受しておいて、アイヌを圧迫することは、和人の恥晒しでしかありません。やめましょう。

パナンペとペナンぺはほぼ全て下ネタ?

たくさんある中から下ネタだけ選んで、ナレーションでこうまとめてしまったのは、差別の温床になりかねないと思います。
 どの文明文化でも、神話や民話の類は性的かつ暴力的です。聖書でも神は殺しまくるし。ギリシャ神話のゼウスは性的暴行ばっかりしているし。日本神話のスサノオも無茶振りをする。それを人間が進化する過程で「もっとまっとうな話を伝えよう!」とブラッシュアップしたからおとなしくなったわけですよ。

そういう過程をすっ飛ばして「下ネタばかりw」「荒唐無稽w」とバカにするのって差別の常套手段なんですね。ことインターネットでは隣国神話をそうやってバカにする風潮があった。その風を浴びた層は今中年になって、それなりに地位と発言権を持っている。
 私はそこをどうしたって危惧してしまいます。ニヤニヤしながら冗談半分で言おうと、差別は差別です。

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『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

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