『ゴールデンカムイ』#266 小指の骨
月島は思い出している。1897年、明治30年、ウラジオストクでのことを。ちなみにこのとき、月島は24歳、鯉登は11歳あたりでしょう。
ウラジオストクの思い出
鶴見にウラジオストクの意味を聞かれ、「極東を支配せよ」と即答する月島。ロシアの不凍港であり、一年中使える軍港。ロシアにとって不凍港は大事です。ゆえに樺太も領有したかったと。
日本としても、ウラジオストク支配が大事だと中央に言っていると、鶴見は語ります。どうなんでしょう。現実的とはあまり思えないのですが。
この二人にロシアの老人が語りかけてきます。ハセガワという男が6年前に行方不明になったのだと。まだロシア語がそこまでできない月島は、メモをしつつゆっくり話してくれるように頼んでいます。老人は妻と娘の遺体のことを言う。遺体が発見されて、どこかに埋葬されているのでしょうか。致し方ない状況のようで、鶴見はなかなかやらかしているとわかります。
証拠を隠すのであれば、山の中にでも深い穴を掘って埋めるべきでしたね。一家蒸発にでもしたほうがよかったかもしれない。
鶴見は妻子がらみになると、冷静さを失う。そもそもスパイなのに妻子を持っている時点で甘い。ここで鶴見が月島と鯉登の存在を察知しているかどうかにもこれは関係があります。
人間の能力値は、ゲームと違っていつも万全に発揮できるわけでもない。『三国志』ゲームならば、諸葛亮はずっと智略が高いでしょう。けれども現実ではそうじゃない。馬謖へ愛情が湧くとか、病気になるとか。そういうことで智略は下がります。要するに、妻子がらみの鶴見はいつもの鶴見じゃない。
月島が話していると、鶴見は写真館前にいました。鶴見は月島の問いかけをはぐらかし、日本人街から出た変わり者がいたのだろうと返します。
ここでの月島が賢い。ハセガワというのは、鶴見の母の旧姓だと思いつきます。長谷川は珍しくない苗字とはいえ、人間は嘘をつく時に真実も混ぜてしまうものです。猜疑心が解き放たれた月島と、こねくり回していろいろ思いつく鯉登。もうこんなの、ワトソンとホームズ状態で鶴見がモリアーティになる流れですよ。
アイヌの金塊は何のためにあったのか
鶴見はここで金塊の真相に近づくことを言う。
帝政ロシア軍人と手を組み,武装蜂起を企んでいたと。その軍需物資を積んだロシア軍艦カレバラが撃沈し、その計画は宙に浮いた。
日本なら幕末にあたる時代は、世界史的にみても大動乱があった。アメリカでは南北戦争の影響があり、フランスでもメキシコに出兵している。となると、日本への干渉においてイギリスがリードすることとなったと。
ロシアも世界戦略は見据えなければならない。そういう局面においてアイヌの武装蜂起を促せば、幕末動乱で揺れる日本にいっちょがみはできる。
ウイルクはその金塊をめぐり、北海道へ来たと。
ちなみにこのカバレラは、記録ですと沈没せずに除籍されているので、事件の真偽は不明です。
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