Mrs. GREEN APPLE炎上を考える
『ゴールデンカムイ』に何が関係あるかという話かもしれませんけど、あります。
私はあの最終回を読んだとき、ものすごく気持ち悪いものを感じました。それと同じ感想をあの炎上を見ていて感じたのです。
アイヌの権利を保全する目標がありながら……
『ゴールデンカムイ』最終回では、一行は榎本武揚を頼っています。土方歳三と顔見知りで、かつ政府に顔がきくとなると限られるから、致し方ないとは思います。
しかし、これってコロンブスをワクワクした冒険王に例えてしまうような危険性はあります。榎本は黒田清隆の右腕であり、樺太・千島交換条約締結に尽力しました。
今回は問題提起もあるので、あえてほぼ無料エリアなしで公開します。よろしければサポートをお願いしますね。このテーマはしつこく書き続けますんで。
アイヌの権利からして、これはどうかという話です。黒田は強引な手腕で北海道開拓を推進しました。移住に従わないアイヌがいれば、武力行使して脅してでも立ち退かせる。そういう人物です。日本史上でコロンブスに近い人物を上げろと言われたら、黒田は上位に入ることでしょう。
妻の殺害を隠蔽する。漁民の家を艦砲射撃する。そういった外道行為もあるうえに、アイヌの大激減をもたらした。その暗部ゆえにめっきり取り上げられなくなっている人物です。『ゴールデンカムイ』でも少し言及された程度でしたね。こういう真っ黒い男の右腕を、よりにもよって最終回で頼りにしてもよいものなのでしょうか?
樺太・千島交換条約
北海道アイヌに甚大な被害を与えた黒田と榎本のコンビ。樺太アイヌにとってはますますどうしようもない人物です。
幕末史をたどるうえで、前史としてイギリスとロシアが対峙したクリミア戦争は重要です。この戦争敗北により、ロシアは地中海方面に不凍港を持つという野望が頓挫しました。そこで東に目を向け、樺太獲得を目指してゆきます。幕府もこの圧力を感じており、蝦夷地警備を行わせています。
幕末ってペリーから始まるようで実はそうではなく、南下するロシアと、それを食い止めたいイギリスも動いていたのです。アメリカのハリスは「イギリスが先に開港を求めなかっただけマシだと思いなさい」と言っていたほど。
幕末から明治の歴史とは、イギリスとロシア、それにフランスやプロイセンまで噛んできた、グレートウォーの一端でもあります。イギリスはまんまと薩長に武器を渡し、倒幕を成功させ、傀儡政権樹立に成功します。そしてロシアと日本の対峙はまだ早い。ロシアを刺激せずに宥めさせようとして、日本政府に樺太を手放すように強引な介入をします。江戸幕府は樺太に警備兵を送り込み、支配権を手放さないようにできる範囲で気遣ってはいました。それを明治政府は、イギリスにねじこまれてロシアにくれてやったわけです。その後日露戦争の勝利で南半分だけ日本に戻る。それが『ゴールデンカムイ』の背景です。
樺太先住民の苦悩は、イギリスの都合で、ロシアと日本のはざまに放り投げられたことで生まれてきます。国民と国家を統合させる近代史以降の流れの中で、すり減らされるように激減させられたのです。そういう歴史を踏まえると、樺太・千島交換条約をイギリスの思惑通りに進めた榎本武揚を英雄扱いしてよいのか、気になりませんかね。アイヌ目線、こと樺太アイヌからすればとんでもない話だと思います。
そんなことをつらつらと思い出し、ともかくモヤモヤしています。そして確信したこともあります。
実写ドラマ版は、かなり手を加えた結末になるのではないかと。あのまま映像化するとなると、リスクがあります。
そうならないためにもどうすべきか。ファンが議論することで見えてくることもあるでしょう。
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