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コロナ禍の黄色いバスの運転手・オンラインインタビュー<男女平等社会>from USA
――前回のインタビューで、スクールバスは子供が学ぶ権利のために存在するのだということを改めて認識しました。そのためにスクールバス会社は地区(District)に所属し、税金で運営されているということでした。しかしながら全てが公営ではなく民間(Private Business)が運営しているバス会社もあるということですよね?
ボリスさん:はい、もちろんです。
――その違いは何でしょうか?
ボリスさん:学区(School District)の税金で運営されているか否かでしょうか。民間のバス会社は地域の学区と直接契約し運営しています。
――民間バス会社の運営資金はどうなっているのでしょう?
ボリスさん:学区との契約の下、一定のお金が学区から支払われています。しかしビジネスとして利益を上げなければいけませんから、セーブできるところはセーブしていいきます。
――たとえば?
ボリスさん:車輛は公営バス会社で使っていたものを使っています。中古車ですね。僕たちの会社のバスは全て新車ですが、民間の方は新車を買わずに中古車を使ってコストを抑えているみたいです。それからドライバーの給与も比較的安いです。
――なるほど。そうやって会社の利益率を上げているのか。民間企業の努力ですね。
ボリスさん:すべてのバス会社を公営にできるかといったら、できないです。地区の教育委員会で話し合って、必要数が決められています。
――他にも違いはありますか?
ボリスさん:公営の労働者は皆、学校組織の労働組合に所属しています。それから安全性や適切な手順というものが優先されます。お金のことを考えなくていいですからね。
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――お金回りを気にしなくていいということが、違いを生むわけですね。
ボリスさん:現在僕のいる会社はドライバー不足なのですが、今年の夏休み明けからのルートを既存のドライバーの数ではカバーすることができませんでした。なので、いくつかのルートを民間会社に渡しました。
――子供たちを学校に送り届けるというミッションの下、公営と民間で持ちつ持たれつ、という側面もあるということですね。
ボリスさん:そうですね。
――ところで、つい先日、夏休み明け前の講習会があったとのことですが。
ボリスさん:はい。高校の講堂を借りて、定期安全講習会が行われました。
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8月に行われた講習会の様子。高校の講堂を借りて行われた。(ボリスさん撮影)
――まさに、安全性が重んじるが上の取り組みですね。アメリカではコロナ規制がだいぶ緩くなってきたような報道を見聞きしますが、多くの人が集まる講習会はどうでしたか?
ボリスさん:講堂は広かったですが、ドライバーを全員一度に集めるのではなく、2回に分けていました。それから、それぞれの席に青テープと白テープが交互に張られ、青テープの席だけ座るようになっていました。
――日本でも大勢集まる場所では似たような措置が取られています。マスク使用率はどうでしたか?
ボリスさん:半分半分といったところでしょうか。
――なるほど。NY州では、マスク着用は強制ではないからですね。
ボリスさん:はい。それから講習はオンラインのものもありました。
――それは安心ですね。オンラインでは、どういったトレーニングをやるのでしょうか?
ボリスさん:ええと、リストを読み上げますね。機密情報の扱い、メンタルヘルス、ハラスメント、虐待のサインがある子供の扱い、HIV(エイズ)、アルコールやドラッグ依存症の理解、爆弾の危機について。こんな感じです。
――おお。アメリカならではのトピックがちらほら。
ボリスさん:爆弾のあたりとか、そうですねよね。
――HIVやドラッグ依存症なんかも、日本ではあまり聞かないです。HIVについては何故トレーニングが行われるのですか?
ボリスさん:子供たちの中にはHIV患者がいる可能性があります。それは普段は申告しないのでわかりません。いざそういった子供が怪我をした時の対処方法は、特別に知っておく必要があります。
――そうか、子供でもHIVは母子感染のケースがあるし、血液感染のリスクもありますからね。
ボリスさん:そういえば、今期からトレーニング部門のスーパーバイザーが変わりました。これはその講習のときに撮った写真なんですが、この中央にいる女性です。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59353968/picture_pc_57277eb2a95b55a4eab629d575deb7cd.jpg?width=1200)
講習会にて。中央の白髪の女性はトレーニング部門のスーパーバイザー。ベテラン運転手で、人手不足の時など、必要に応じてバスを運転することもある。
――おお、この白髪の性ですか。
ボリスさん:はい、彼女は元々バスのドライバーで大ベテランです。前のスーパーバイザーが定年でリタイヤしたので変わりました。
――たたき上げなのですね。前任者も女性だったのですか?
ボリスさん:そうです。マネージメントはほぼ女性です。そして皆、バスの運転手からスタートしています。元々バスドライバーは女性が多くて、僕の会社では、65%くらいは女性ドライバーです。彼女は1980年代あたりにバスの運転手を始めて、ずっとキャリアを積んできた人なんですよ。
――それは凄い。日本はジェンダー・ギャップ指数が先進国の中でもダントツに低いので、バスの運転手、その中でもマネージメント側までいく女性はほとんどいないです。なので新鮮に感じます。
ボリスさん:お母さんがバスの運転手で、その娘さんもバスの運転手になったという親子も何組かいますよ。
――母の背中を見て育ったというわけですね。
ボリスさん:スクールバスは子供と直接関わる仕事です。女性がドライバーになるのは自然なことのような気がします。
――確かに。保育士に女性が多いことと同じロジックが背景にあるのかもしれません。これは新たな気づきでした。ここまでありがとうございました。インタビューは続きます!