美術展「バンクシー展」の感想
大まかな内容
正式には、「バンクシー&ストリートアーティスト展 ―ストリートアートの進化と革命― BANKSY & STREET ART (R)EVOLUTION」というタイトル。
道後温泉に泊まりに来て、偶然このイベントを知った。
テレビ愛媛の開局55年の記念イベントで、ちょうど先週末に始まったばかりらしい。
タイトルにあるように、正確にはバンクシーを含むストリートアーティストに焦点を当てた美術展。
ストリートアートが進化してきた過程をかんたんに紹介する内容で、バンクシー前と後でストリートアートの世界に影響を与えたという構成になっている。
バンクシーといえば、神出鬼没のストリートアーティストとして名声を確立した有名人。
バンクシー以外のストリートアートの作品も並ぶが、全99作品中、47作品がバンクシー名義になっている。ちょっとバンクシーの作品を観てみたいというライトな観客には、ぜいたくな展示ではないだろうか。
ストレートにいうと、ストリートアートは好きなジャンルではない
自己主張と承認欲求をみたすために、キャンパスの代わりに無断で公共物に絵をかくことはアートではなくては器物破損だと思っている派。
それだけに、ストリートアートをもてはやす風潮は好きではないし、素性がほとんど知られていないらしいバンクシーが評価されていることも素直に認めてこなかった。
実際の展示を目の当たりにしても、大部分の作品がアートとして評価されていることにいまいち共感を覚えることができない。
理由を考えてみると、なにかしらの主義主張を唱えたいのかもしれないけど、抽象性が高く、再現性に疑問を感じたからだ。
観るものが好き勝手に解釈すればよいにしても、作者本人の意図がどうもわかりにくい。今日と明日とで言いたいことが変わってそうな、そういういい加減さを感じるのだ。
それでバンクシーの感想は
バンクシー作品にはあきらかに風刺を目的としたモチーフがあり、これは思った以上に良かった。
バンクシーそのものの風刺的な主張が自分の肌感覚にわりとフィットしたのと、見せ方の工夫におもしろさを感じたためと言える。もちろん、偶然見れたことがポジティブな印象に働いていることは否定しない。
バンクシー作品はクライマックスなので、巡回ルートの最後に飾られているんだけど、思いのほか作品数が多いのもプラスに働いた。
展示方法にも凝っていて、クラシカルな西洋美術とはちがう、現代アートとしてシャレた見せ方の工夫が施されているとも感じた。好みはあるかもしれないが、強調のメリハリがつけられている空間演出だったと思っている。
企画運営の担当者に思いを馳せてみる
単に、巷をにぎわせているバンクシーを並べてみました、っていう展示ではない。ストリートアートの過程を順序立てて説明して、わたしのような否定派にもちゃんと観てもらおうという意図が伝わる。
有名無名とわず、足を止めてじっくり鑑賞したくなる作品もあった。
ほとんどの作品が他の美術館や個人所蔵の作品を借りてきたという。一度に多くの作品を集めてきた企画運営の担当者に興味がわいてくる。
終わりに
ちなみに中心街の松山市駅周辺には個人経営のオシャレなカフェが多く、街歩きが非常におもしろい。
道後温泉本館も改修されて商店街も賑わっており、他にも街中に見どころはたくさんあるけど、この美術展目的のために愛媛に旅行に行っても楽しいと思う。