映画感想文「きみの色」(ネタバレあり)
テレビアニメの劇場版ではないオリジナル映画作品
音楽がテーマになっている作品はついつい観てしまう。
ここ数ヶ月、映画館の予告上映で気になっていたので観てきた。
いい意味で、思っていた映画とかなり違っていた。
きっと、メインキャラの3人と同世代だけじゃなくて、すっかり大人になった元十代にも響くところがある。
感想を端的にいうと
スクリーンの色彩も、音色も、人の思いやりも、すべて優しさに包まれた爽やかなドラマ
2000年〜2010年頃の打ち込み系シンセロックが好きな人にレコメンドしたいバンドサウンド
淡々と進むストーリーの根っこにあるテーマに気づいたときに本作の奥深さがある
平穏と、勇気と、知恵
屈託がない、という言葉がぴったりのメインキャラクターの3人。それぞれが穏やかな性格。でも十代特有の人には打ち明けられない葛藤をもっていて、それに立ち向かう勇気と行動があかるく心地よく描かれている。
観ている人の気持ちを心地よくさせてくれる。ほんのりほっこりさせてくれる感じ。
成績優秀で人望もあるのに本当の自分とのギャップに苦しみ高校を辞めちゃって、それを親代わりのおばあちゃんに切り出せなかった、きみちゃん。
実家の医院を継ぐ期待が大きく、でも音楽もやりたいと母親に切り出せないルイくん。
嘘をついて修学旅行をサボり、他人を「色」で感じられるのに自分の色がわからない、トツ子。
音楽制作や3人の対話を通じて、抱えている葛藤を昇華しながら平穏を手に入れ、できることとできないことの分別を身に着けて、勇気をもって親に思いをつたえていくシーンは、これまで言い出せなかった思いの丈を吐き出す姿にグッとくるものがあった。
アニメーションのいいところは実写とくらべて現実性に距離感がある点。実写だと観てる方が恥ずかしくても、アニメなら許される絶妙な距離感が本作にはある。
思春期の十代を見守る大人の役目
この映画を安心してみれたのは、登場する大人たちが皆子供たちに優しく、ときに厳しく、あたたかく見守る姿に一本芯が通っているからだと思う。
それを象徴づけるのが、聖バレンタイン祭のクライマックスシーン。普段は敬虔な教師や修道女でありながら、演奏に乗って踊ったり、子どもの晴れ舞台をしっかり見届ける家族。友人関係もいい。
自分の色とは?
きっと何色でもいいし、その色が移り変わってもいい。
色が変えられないとしてもそれを受け入れる穏やかをもつことや、変えられるところを変える勇気、それを見極める分別というのは、オトナになってもむずかしい。
だから、おすすめしたい。