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【量子の波の実験的音楽】Consciousness » 弦理論交響曲 a String Theory Symphony 第2楽章 量子 / Movement II. QUANTUM

2022年6月24日、京都芸術センターで開催された「第2楽章 量子 /  Ⅱ. QUANTUM」に設営と音楽的表現の勉強・リサーチで訪問。

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《 Consciousness 》 弦理論交響曲とは

5つのパフォーマンスによる交響曲弦理論交響曲《 Consciousness 》はアコースティックミュージシャン、空間音楽、音と映像のインスタレーション等、境界を超えたコラボレーションによる5つのパフォーマンスから成る没入型、多次元型の作品です。演奏される音楽は、物理学者・橋本幸士と共にヤニック・パジェによって作り出された新しい音楽言語に基づいています。これは弦理論の原理を音階や音の組み合わせに解釈しなおしたものです。

京都芸術センター HP (https://www.kac.or.jp/events/32179/)より転載

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京都芸術センターで開催されるパフォーマンスはどれも実験的で、表現の可能性を思索しているものが多く、とても刺激的で、今回も聴いている最中、「?」と「!」が入り混じりながら、この「音楽」と呼べるのかどうかわからないものを観察していました。

【演奏に関して】

オーディオ・インスタレーションとカテゴライズされた音楽には、主旋律はなく、おそらく楽譜もなく、展開は決まっているのでしょうが、奏者のヤニック・パジェ氏が即興で会場に反響する波を作っているような、音も波長のひとつだと確認していくような演奏でした。また、楽器は、京都大学の理論物理学者の橋本幸士氏と「野生の数学」をテーマに作品制作を行なっているという黒川徹氏が作成した「弦理論」に基づいて制作されたセラミック製の陶器。

【空間に関して】

多次元パフォーマンスと銘打たれているだけあり、座席は演奏空間を囲むように自由に座れる。音に関しても、様々な角度(スピーカーが館内の四方八方に10台以上設置されていた)から聴こえてきた。
似たようなセノグラフィーにTeam Labの演出があるけれど、チームラボはエンターテイメントとして考えられているのに対し、こちらは実験的な印象を受けた。演奏にしても、スピーカーにしても。館内には弦理論に基づいて作られたオブジェが10作品くらいあったのだけれど、そこから音が聴こえてきていた。オブジェからというより、台に仕込まれている印象だったけれど、演奏している楽器を巨大化したようなスピーカーで、そこから音が出ているように聴こえるので、「双体共鳴」みたいなものを表しているのかもしれません。このあたり作者に聞けませんでした。


楽器、オブジェ、スピーカー?



【オブジェ(楽器)に関して】

演奏後、黒川氏の周りは人だかりができていて、質問攻めにされていたので、しっかり聞けませんでしたが、唯一、このオブジェの形に意味はありますか?と質問したところ(形が弦理論の世界を絵で表しているものに似ていたので質問)、「この形じゃないと音がならないので」とのことでした。
ちなみに、この楽器は、叩く、擦る、撫でる、行為によって演奏されていた。


【集客】

およそ50名くらいの観客。外国籍の方が半分くらいをしめていたのは、ヤニック・パジェ氏の演奏と、キョウトジャーナル、アンスティテュフフランセ、ゲーテインスティテュートが協力しているからでしょう。
あとは、京都芸術センターのパフォーマンスは前売り2500円とリーズナブルで、このレベルのパフォーマンスを2500円で見られるというので、リピーターも多いはず。

【応用】

決して「美しい」という感想ではない音楽のイベントに、現代アートに親しみのない人が、楽しめるかというと、まず無理だと思うのですが、「興味深い」という気持ちで見ることが楽しい、面白いとなる仕掛けがあればもっと理解者が増える気がする。
アートの文脈では、エンターテイメントを考える人が少なそうなので、うまくできていない印象ですが、ティームラボ、ライゾマティクスのように広報段階から、アートワールドをターゲットにせず、アートに親しんでいない人に楽しみを伝えられるような広告をする必要がありそう。

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【イベント情報】
N’SO KYOTO《 Consciousness 》 弦理論交響曲 第2楽章 量子 / Movement II. QUANTUM
日時

2022年6月24日 (金) - 2022年6月26日 (日)
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6月24日(金)、25日(土)
展示:10:00 - 17:00
パフォーマンス:開演19:00(開場18:30)
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6月26日(日)
展示:10:00 - 13:00
パフォーマンス:開演15:00(開場14:30)

会場

京都芸術センター フリースペース(西館1階)

料金

展示 : 無料

パフォーマンス(税込):
大人 2,500円 / 学生 1,500円 ※当日券:各+¥500 / 15歳以下無料

出演・スタッフ

ヤニック・パジェ:作曲、パーカッション&電子楽器
黒川徹:陶芸家
橋本幸士:物理学者、アドバイザー
木内ひとみ:照明

text / Naoyuki Nakagawa
photo / Kaori Nakagawa
hp / https://510kuras.jp/


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