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ヤンキー人類学から老人芸術まで~櫛野展正の #アウトサイド・ジャパン展 | Gallery AaMo

 一般的には美術の教育を受けていない人々の創作=「アウトサイダー・アート」をみせてくれる『櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展』@Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)まで、小学3年生のガールと小6年生のボーイを連れて鑑賞してきたよ。当日券でも、大人(高校生以上)1,300円、小人(小・中学生)200円なのでお安いなあ、と。

■会期:2019年4月12日(金)~5月19日(日) ※開催期間中無休

 東京ドームのアトラクションズエリアにはいつも水道橋駅からJUMP SHOPを横切るルートでアクセスするため、キッズ的には「ポケモンのリアル脱出ゲームしたところね!」くらいの感覚。歩きまくって謎解きをしたのでよく覚えているみたい。5色の鯉が320匹も泳いでいる❝鯉のぼり2019❞は、ザ・跳鯉団による天空の舞いってかんじですてきだった。むすめがあのクチをまねしながら歩くので「年頃の女子がそれはやばい」と笑ってしまった。

 キッズがどんなものを目にしたのか残しておこう。夏休みの自由研究で、いっときだけでもこういう作品を手掛けられたらすごいんじゃない?とか、じぶんだったらどんな表現する? などと話した。

 マインクラフトにハマりすぎて、裸眼視力がA(1.0~)から右C(0.3~0.6)左B(0.7~0.9)まで落ちてしまった小6息子には本気で、しばらくのうちは「画面」を介さないあそびをたしなんでほしい。目がわるくなったのを視力検査の結果シートで数値的にみせられて落ち込んでいるようすなので、ここぞとばかりにアートやクラフト作品に触れさせたい(香取慎吾の日本初個展「BOUM! BOUM! BOUM!」とかも行く予定)

 「はみ出し者たちの反乱が始まる。」と、櫛野展正さんは言う。けれど、これってはたしてそうなのだろうか。確かに、作品のなかには怒りから成り立っているものもあった。過激な煽りを黙々とするような。どれって、あの雑巾のやつである。個人的にはこの「やろうとおもえばじぶんですぐにつくりだせるモノの日々の羅列」がもっとも異様で、異常におもえた。

 小2娘が、「これって誰かの顔でしょう?」と言った。そう耳にして連想したのは人の肉塊である。いや、そんなおそろしいことないだろうとわたしが助けを求めた先は作者の説明書だった。雑巾、と書いてあってホッとしたし、ゾッとした。ぞ、ぞうきん……? と。

 それでも「絶対、顔だよ」と手をひっぱるので近づいたら、「あぁ……」このなかには本当に人の顔を描いたものもまじっているのである。

 何種類ものデコレーショントラックを工作している人がいた。こうやったら形がきれいにみえるんじゃないかとか、試行錯誤の跡がみえる。1台1台に、凝縮された格好よさの極み、みたいなものをかんじる。「飾りを詰め込みすぎても、手を抜いて妙な余白ができても仕上がらない」という、微調整を重ねる難しさがあるとおもう。

 だが、このデコ車ウィンドウ、キッズはさらりとすり抜けた。興味の持てないジャンルに対するAジャンプやBダッシュの仕方は、見ていて清々しさすらある。大人になると、そこまでグッとこなくてもとりあえずまじまじと眺めておこうとするじゃないですか、こういうところにくると。判断基準が直感でしかない時期の嗅覚って、大切にしてほしいなあ。なんでもかんでもインプットしようとがんばっちゃった挙句なんにもアウトプットできないよりは、ずっといいとおもってる。

 どうも中の人が「ひとのよさそうな猫背の人」にみえる戦隊ヒーロー系のスーツ。倒すとマズいのでは、と、相手の気をゆるませるフォルムをしている(ようにみえる)。グレーと紅白、ブルーと緑黄、ゴールドと赤黒の配色ってなんか案外バランスよくないですか。どこか一部にだけ目がいくような違和感がない、というか。目が滑ることなく全体像が入ってきちゃう。

 そりゃスーツ職人がつくるガチ衣装と比べてしまうと粗いでしょうけど、人間味のあるかんじがやけに気に入ってしまった。もうこれ、着方ミスると壊しちゃうじゃん、体形崩すと入らないじゃん、みたいな。

 実は、むちゃくちゃいっぱいスケッチがあって、シール化したいぐらい。わたしが一番好きなのはUFOで、ひかり(シグナル?)の配色とかポップでかわいい。ブラウスとかハンカチにこの柄が採用されてもイケる。刺繍でもいい。これってなんのマークですか?って訊かれたら「乗客数1,000人の空飛ぶ円盤」ってこたえるんだ……。景山八郎さん、イメージをビジュアル化したいんだ!ってかんじが見てとれるけど、「うごいたらどうなるかな?」とか考えだしたらおもしろそう。

 ガムの包み紙の裏面に絵を描いていた人のコレクション。ガラスケースに展示されているので触れることはできないけど、ぎりぎりまで近づいてよく見るとうっすら表(どっちが裏で表なのかもう分からないけれど)のガムのロゴやデザインが。わたしも幼い頃、規格の決まっている、限られた空間を彩る的なところに凝ってまったく同じことをしていた。どっちも本物!っていえるような感覚がすきで。

 こういうマイノートつくるのすきだった!って人、けっこういるのでは。他人からみれば「なにこれ?」なモノかもしれないけど、こまごましたところを詰めていってあたかも雑誌とかアルバムみたいな体裁になっていくのが楽しいというか。スクラップとは違って完全オリジナルなので根気も要るけど、誰かにみせるわけではない手帳ほどこんなふうにしてた。

 本物の昆虫(抜け殻や死骸)をつなげてかたちを作っていったものもあって、正直それがもっとも衝撃だったんだけど、あれは、集合体恐怖症の人がみたら絶対パニックを起こすとおもう。わたし、視力が低いのもあってパッと見るだけでは(完成度が高いほど)Made of なんなのか分からないんだけど、いったん気づいちゃうともうダメ。あっ……!ってなってからのゾゾゾ具合はそりゃもうすさまじい。本能がパスしろと訴えるため、写真におさめること自体しなかった……。

 それはさておき、じぶんにこんな画力があったらいいな選手権でトップにくる、「たべもの記録」。ほぼ日刊イトイ新聞の「ほぼ日手帳」とかでこれをやってInstagramやらTwitterやらにアップしていたら、さぞ注目されたのであろうけど、アウトサイダーはそういう陽(よう)のパワーをわざわざ浴びない、という勝手なイメージがある。ポップアートになっているところも、いい。

 アウトサイドという響きだけですでにヤバそうなスメルがするのに、なおかつR18指定コーナー(18歳未満禁止区域)があるなんて。子連れだったので、「あの赤いカーテンの奥は大人のフロアである、よって小学生のきみたちは足を踏み込んではならない。門番(フロア巡回スタッフ)も見まわっている」と伝えて、キッズにはよそをあたってもらった。

 いや、待ってました。いや、ちょっと待って。というエロティック感情の矛盾が2~3秒ごとにくるかんじ。なんでこれ動画にしちゃったかなあ??とか、むちゃくちゃ誰かとしゃべりたかった。うーん、うーん。


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