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「丹波篠山市」に思うこと

兵庫県篠山市は本日、同市役所で記者会見し、同市の市名に京都と兵庫にまたがる旧国名の「丹波」を冠した「『丹波篠山市』に変更する意志を決めた」と発表した。今後、市名変更の条例を市議会に上程。新元号に移行する来年5月1日の変更を見据える。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180801-00010000-tanba-l28

篠山市は、お節料理に代表される「丹波黒大豆」の発祥の地で、日本六古窯の一つである「丹波焼」の里、民謡・デカンショ節で知られる。1999年の市制発足以前から、特産をはじめとするまちづくりの多くに、「丹波国の篠山」を略した「丹波篠山」を用いている。

しかし2004年に、隣接する同県氷上郡が合併して「丹波市」となったことを機に、「丹波篠山」が「丹波市と篠山市」と誤解されたり、「丹波黒大豆」の発祥の地を「丹波市」だと誤って捉えられるになったことで、「丹波篠山のブランドを守るべき」と商工会や観光協会、JAなどの団体が、市に対して市名の変更要望書を提出してきたという。
それらに対し、市は今年4月、市名を変更した場合の経済効果を「52億円以上」と発表し、変更に前向きな姿勢を持つ酒井隆明市長らが市内各地区で説明会を開催してきたという。一方で、現状維持を望む市民もおり、「市名変更問題」に発展した。

※「丹波篠山」は全国的に圧倒的に優位な魅力あるブランド
※「丹波篠山」がどこを指すのか混乱、誤解が広がっており、先人から受け継いだ「丹波篠山ブランド」を守るため
※変更した場合、農業、観光など地域経済の活性化につながる
というのが、市が変更を決めた理由。

「人口減少社会にあって地域資源をいかしたまちづくりが求められる今、『丹波篠山』という名称は何物にも代えることができない資源。このことを自覚し、市民みんなで『未来志向』で考え、ともに『丹波篠山市』として盛り上げていきたい」と語ったという。
(8月1日付・丹波新聞の記事を一部引用しました)

久しぶりに「市町村名」の議論が巻き上がった――。

思えば2003~06年ごろ「平成の大合併」として、全国で市町村合併が大加速した。
広島県では「86」あった自治体数が「23」になり、減少率は73.3%にも上る。愛媛県は合併しなかった自治体が僅か2つで、「70」から「20」に減少。富山県は自治体数が「15」に減り、日本で最少となった。

この時、全国各地で合併が進むにつれて、歴史ある地名が消えていくのが悲しかった。
観光として名高かったり、歴史ある地名である「木造町」「象潟町」「鷹巣町」「角館市」「田沢湖町」「川之江市」「伊予三島市」「加世田市」――など、残されてほしい自治体名は姿を消し、虚しくも平凡な新自治体名となってしまった。駅名や地域名としては残っていくとは言え、寂しい。
旅が好きで、地名や駅名に関心があって、時刻表やロードマップを“読んだり”、地図上でのシミュレーションなどを楽しんできた私としては「南アルプス市」「つくばみらい市」「さくら市」「みどり市」「北名古屋市」「四国中央市」「伊豆の国市」「大空町」・・・など、「なぜ、こんな不自然で短絡的な新地名になったのか・・・」と嘆き続けた。
意味深い漢字をわざわざ平仮名にしたり、抽象的な名称を使うのも、全く理解できなかった(これらの地域に住んでいる人ごめんなさい。地理好き人としては、どうしても納得できないので・・・)。

また、さすがに酷すぎて実現しなかったが「南セントレア市」「太平洋市」「湯陶里市」など、とても市名には使えない恥ずかしい案が出た地もあり(しかも行政の担当者が、こんなくだらない発想を打ち出し、住民から反発を食らっている)、挙げればきりがないが「公募」の段階では、もっと酷いものも選択肢にされていた。
せっかくの漢字表記を、無駄に平仮名に変えてしまった名称などを含めると、まともな新地名が生まれたと言えるのは、せいぜい半分。とにかく合併が進みにつれ、歴史的・伝統的な地名が消えていくのを憂いたものだった――。

篠山市の話に戻るが、個人的には「丹波篠山市」の案には反対。「篠山市」で良いと思う。
「丹波篠山」という呼び名は、確かにブランドとして知られている。だが「地名」という観点からみれば「篠山」はその地域をピンポイントに指す、本来の地名。他県に「篠山市」があるわけでもないので、自治体名として、わざわざ「丹波」を被せる必要はないと思っている。
「ブランド」である前に、「丹波」は広域を指す「旧国名」で「狭い範囲の地名に使うべきではない」と再認識しなければならない。この場合は「篠山市」で十分、位置を特定できる。

というよりも、そもそも氷上郡の合併が「丹波市」となったこと自体が“僭称”なわけで、「丹波篠山ブランド」に肖ろうとしなければ、このような論議は起こらなかったのではないだろうか。
名称を変えなければならないのは「篠山市」ではなく「丹波市」。即刻「氷上市」に変更すべきだろう。

これらは「合併協議会の中だけで議論され、地域によっては、地名ブランドに肖ろうと“取り合い”をした結果」。市町村合併が進められていた際に、当時の篠山町を中心とした「新・篠山市」の合併協議会が、旧・氷上郡の合併協議会に対して「『丹波市』を名乗るのは良くない」と申し入れるべきだった。
今回申し立てている変更が成立すれば、今後むしろ「丹波市」と「丹波篠山市」があることで、かえって混乱を招く可能性もある。

だいたい、ブランドに肖って地名を付けるのではなく、歴史的・伝統的な地名を、その地域のブランドにしていくよう努めるのが本筋。
肖った結果、次のような、紛らわしく個性のない地名が溢れかえっている。
「つくば市」と「つくばみらい市」、「伊豆市」と「伊豆の国市」と「西伊豆町」、「四万十市」と「四万十町」、「魚沼市」と「南魚沼市」、「富士市」と「富士宮市」と「富士吉田市」と「富士河口湖町」、「京田辺市」と「京丹後市」と「京丹波町」、「五島市」と「新上五島町」――。
こんな自治体名では、自分なら、住んでいる自治体名に誇りを持てない。

自分は「水木しげるロード」を愛しているが、だからといって「境港市」がもし「水木市」に変更するなどという案が出たら、猛反対する(このようなばかげた案が出た地域が実際にあった)。地名を軽んじるのは、許しがたいことだから――。

(※あくまでも「自治体名」に対する意見です。これらの地域に住む人やまちづくりを批判するものではなく「自分の住む地域が、歴史的背景の濃い地名を排除してブランドに肖るような自治体名を付けてほしくない」ので記したことと、ご理解ください)。

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