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アコースティックギター 発音の仕組み

(2024年10月13日加筆)

実はよくわからずに弾いていませんか?

アコースティックギターに張ってある弦はとても細い。だいたい直径コンマ数mmから1mm強の細い鉄線だ。
これを木の箱であるボディにくっつけると何故音が大きくなるのか、私は長い間わかっていなかった。

意外とわかりやすく解説してくれているインターネットサイトが見つからず、もやもやしたままなんとなく箱の中で弦の発した音が増幅されて大きくなる(?)などと、かなり雑な理解で放置していた。
それってきっと私だけじゃないよね。

そういうわけで頑張って考えてみた「アコースティックギターが音を出す」理屈を披露します。


表板の役割

音符は空気の疎密波として人の耳へと伝わるが、ギターのか細い弦の揺れだけでは空気は十分に振動しない。
弦の振動がブリッジを介して表板に伝わり、表板が振動することで空気を揺らしている。鉄弦のいわば”線”の振動を表板が”面”の振動として効率よく音波に変換する。ざっくりそのように理解している。

ギターを構成する材料の中で特に表板が薄く作られているのは、弦の振動を拾い上げる感度を確保するためだろう。もしも表板が厚い板だったら(極端な例がソリッドのエレキギターギター)、弦の振動をうまく拾いきれず、結果として音量は小さく、細かい表現が伝わりづらいギターになるだろう。
材料や単板かどうかなど、ギターの構成要素の中でも仕様に一際注意を払われるのも、表板こそが主として音を発する役割を担うからだろう。

弦の振動がいかに効率よく表板へ伝わるか、また伝わった先でいかに表板が空気をよく揺らすかがギターの音量や音色にとって大切であり、そのためには木材の加工や接着の精度がとても重要であることが理解できる。

箱の目的

表板から主に音波が発せられるのだとしたら、その後ろが箱型の構造になっているのは何故か。
薄い表板だけでは弦の張力に対して強度的に成り立たないというのも一つ理由としてはある。
それ以外に音響的な理由としては、スピーカーユニットに箱が付いているのと同じだと理解している。

仮に表板のみを空間においたとして、それが振動するとき、表板の表面と裏面では同時に位相の反転した音波が発せられる。
振動している最中のある瞬間において、片面が凸状に膨らんでいるとき、もう片方の面は凹んでいることを考えれば、理解しやすいだろう。片方が押す波を生み出すとき、片方は引く波を生み出している。

また音波は表板に対して垂直に真っ直ぐのみ進むのではなくて、音源を中心に円(球)状に広がり、逆側へ回り込み互いに干渉する。
位相の反転した波が干渉すると打ち消しあう

そこで、ギターでは音を出したい方向とは逆の方向を板で囲い込むことで、その打ち消し合う作用を低減している。

共鳴とは何か

私は上述のような理解の仕方で、感覚的にとても良く納得できた。 
一方で、よくみかけるのは"弦の振動によってボディが共鳴して音が大きくなる"という説明である。これには違和感がある。
共鳴という言葉は、外部から与えた振動が、その振動系としての固有振動数に近づく際に特別に振幅が増大する現象だと私は理解している。そのため、共振がハウリングの説明に用いられるのはわかるが、アコースティックギターの音の出力一般についての説明には用語として適さないような気がするが、どうだろうか。

ネック〜ボディから成る複雑な構造体であるギターは確かにいくつかの固有振動数を持ち、それらのどれかが共振していると考えられなくもないが、普通に考えれば弦の振動にボディを共鳴しているというよりは、弦がボディを強制的に振動させているという表現が近いと思う。


サウンドホールの目的

ギターの音はサウンドホールから出てくる、という説明もまたとてもよく目にするが、ここまで書いた理屈からするとそれもまた違和感がある。
たしかにサウンドホールからは箱の中で複雑に反響した音が出てくるが、音量的に主として音波を発しているのはサウンドホールではなく表板(サウンドボード)だからだ。

たまに間違えている人がいるが、よく楽器屋で売っているサウンドホールカバーの狙いは、音の出口を塞いで音量を下げるのではなく、開口を閉じることで固有振動を変化させて共鳴によるハウリングを防止するためのものだ。


サウンドホールはどちらかというと音の出口としてというより、表板の振動に応じて穴を通して空気が出入りすることで振動を妨げないようにという目的が先にあると思っているが、これには確信がない。

まとめ

この記事ではアコースティックギターがどのように弦の振動を音波に変えているかについて、個人的な想像を垂れ流した。
弦の振動は表板に伝播して表板が空気を揺らすこと、表板の振動がギターの音の主であること、箱型の構造で音波の干渉による打消を防いでいること、よく見聞きする「共鳴」という言葉とその説明の違和感と、サウンドホールの目的について書いた。

このように浅学で持論を繰り広げるのは甚だ恥ずかしくはあるが、こうしてネットの海に自分の意見を投下してみて、頭の良い方の解説を待つ、というのもインターネットの使い方の一つだと思う。

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