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「意味ない」と判断したらやめたくなる人に、「目的を考えずに学ぶ効果」を伝えたい

柴田(@4bata)です。今後いろんな人に話すかもしれないので記事にしておきます。

考えたきっかけ:普通に考えると「いま自分がやるべきじゃない」という内容でも、「ちょっとやってみたら何かありそうだからやるか」という判断をするときがある。なぜか。

やる気がある人でも、自分で設定した将来の目的と比較して「この仕事で得られる学び」に意味がなさそうと判断したら、やる気がなくなる人がいる。まあわかる。ただ、そのパターンで学んでいって「学習の停滞」が起きたとき、自分にとって意味がありそうなことだけを引き続き学んでいると、停滞を打開できないよなーと思うことがある。でもそういう人は、納得しないまま学ぶのは難しそうなので、説明を考えてみる。

「結果が出ない焦りと向き合う方法」という記事の続編になる。別にこの記事を読まなくてもわかるように以下の説明は書いたけど。

前提知識1:学習停滞期間とは?

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達人のサイエンス」という本に書いてある内容。理解したと思っても、やっぱりわかってなかったところが見えてくる。そして、学習の停滞期間(学習高原、プラトーと呼ぶらしい)はものすごく長い。

①「短期間の上達スパート」がある
②上達直後、わかったと思ったけど、やっぱりよくわからないところもでてくる(でもその前の停滞よりは、上達している)
③再び、先の見えない長い停滞が始まる

重要なのは「わかったと思ったけど、やっぱりわかってないかも」と、一度下降するフェーズだ。学習における「試行錯誤期間」を表現する図としてふさわしい。その後上下を繰り返し、最終的に上達期間前の「停滞ライン」よりは、できることが増えている。

前提知識2:スキルは網の目状に進化する、ダイナミックスキル理論

ダイナミックスキル理論のざっくりまとめ:
スキルは網の目状に進化する

とりあえずこれだけわかれば充分。スキルの定義とかもいらない。ダイナミックスキル理論を詳しく知りたい人は、「成人発達理論による能力の成長」という本がまじでわかりやすい。この本すごい。

ここからは私が大学時代にやっていた「落語」を例に「スキルは網の目状に進化する」を説明する。落語研究会に入った当初、「落語が上手くなるルート」をこのように考えていた。

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こんな感じで落語をやっていた。ある日、老人会に呼ばれて落語をやった。その場には高齢者と子どもがいた。高齢者にも子どもにも顔芸がウケた。落語の「台本の内容」じゃないところでも笑いがおきるのか。そこで上の図に変化が起きた。

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次、同世代の大学生の前で落語をやる機会があった。すると今度は落語を演じる前に話す「枕」と呼ばれるフリートーク部分が一番ウケた。あれ?落語で笑わせるものあるけど、普通に面白い話を考えて、落語の前にフリートークで笑わせて客席を暖めるのもありだなーと気がついた。

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フリートークも、事前に何を話すか考えて台本をつくる。「こんなことがあったんですよ」と演じたりするので、落語と同じ演技のスキルが使えることがわかった。

フリートークはお客さんを笑わせるだけなら毎回同じでもよい。ただ私は、お客さん以外に、落語研究会の同僚も毎回笑わせたいから、毎回違うトークをしたいのだ。誰でもフリートークを毎回準備できるわけではない。私は中学と高校時代に、ラジオ番組の「ネタ」投稿(いわゆる「ハガキ職人」)をやっていたので、日常から「話のタネ」を見つけることに長けていた。だから落語の枕も結構いろいろ考えることができた。

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次は本物の落語を見に行ったときの話。いまは笑点の司会をやっている春風亭昇太さんだ。

落語と言えば着物をきておじいさんが正座をしている印象がある。ただ、昇太さんの落語はすごく動く。上の写真でもわかるが、袴をつけることで、動き回れるようになるのだ。「ちりとてちん」という腐った豆腐をたべて苦しむ落語で舞台を動き回っていた。なるほど!顔芸だけじゃない、もっと派手に全身で動き回ればいいのか!あと、着物は派手なほうがいいので、目立つ黄色に変えることにした。

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その時の写真ないかなーと探してたらひとつだけあった。ほら、完全に昇太さんのコピーである。

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ちなみに昇太さんは「新作落語」と呼ばれる、自分でつくった落語を演じる。それが面白かったのでその場でメモして、自分でも落語研究会内の稽古会(練習会)でやってみたところ、反応がよかった。であれば、ちょっと自分で落語の台本つくってみるか。フリートークの延長線のような気もする。ここも、高校までの「ラジオにネタを投稿していたスキル」が役に立つ。ただ、「コント」ではなく、「新作落語」に見える必要があるので、ある程度「落語の演技のお作法」をできるようになった上で、新作落語に取り組む必要があった。また、過去の落語の構造を分析しつつ参考にして、話の構造も考えた。自分でつくってみたのは大学院の1年生だから、落語をやってみて5年目ぐらいだ。図としてはこうなる。

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つくった新作落語、確か「シンデレラ」というもので、シンデレラを江戸時代に置き換えたものだ。シンデレラのあらすじは以下。

シンデレラとは (wikipediaを参考にした)
1.シンデレラは、姉たちに日々いじめられていた。あるとき、城で舞踏会が開かれ、姉たちは着飾って出ていくが、シンデレラにはドレスがなかった。
2.舞踏会に行きたがるシンデレラを、魔法使いが助け、準備を整えるが、魔法は午前零時に解けるので帰ってくるようにと警告される。
3.シンデレラは、城で王子に見初められる。
4.零時の鐘の音に焦ったシンデレラは階段に靴を落としてしまう。
5.王子は、靴を手がかりにシンデレラを捜す。
6.姉2人も含め、シンデレラの落とした靴は、シンデレラ以外の誰にも合わなかった。
7.シンデレラは王子に見出され、妃として迎えられる。

これを江戸時代に置き換えるので、

5.王子は、靴を手がかりにシンデレラを捜す。

の部分が、草履になっている。草履とはこういうの。

草履は誰でも履けるので、シンデレラが見つけられなかった、というオチだった記憶がある。誰もがわかる「シンデレラ」でストーリーのわかりやすさを担保して、落語なので「江戸時代」の設定にしました、というわけだ。そこがフリになっている。で、最後のオチは、ガラスの靴と違ってサイズが大雑把な草履だからシンデレラがわかんねーよ!ということらしい。なかなか良く出来ている気がするぞ!

ちなみにこの落語で私は「全日本学生落語選手権」で審査員特別賞をもらった。周囲にはもっと上手い学生がたくさんいたのに選ばれたのは、「落語がそこそこできる」×「新作落語をつくった」のかけ算だったのではないかと予想する。勝ち抜くための差別化として新作落語をつくっていった気もする。他の人は上手に古典落語をやってた。つまりここで、「ガチンコで戦わず差別化して勝つ」というような能力を身につけたとも言える。次の大会から新作落語が増えたらしい。

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もうひとつある。大学時代は新聞配達のアルバイトをしていたが、配達中、ずっと伊集院光さんの深夜のラジオ番組を録音したものを聞いていた。1日3時間ぐらい、過去の番組を何度も聞くのだ。伊集院さんはもともと落語家であり、深夜のラジオのトークを何度も聞くことは落語にもプラスの効果があったはずだ。落語の本番が近くなると、配達しながらボソボソと落語を練習することになり、練習時間の確保にもなった。新聞配達しながらのほうがむしろ練習になった。

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以上、落語を例にした「スキルは網の目状に進化する」だ。

「スキルは網の目状に進化する」の特徴

ダイナミックスキル理論は、フィッシャーという人が考えたらしい。まとめとして、「成人発達理論による能力の成長」から私が面白いと思った部分をリストアップしておく。

フィッシャーが述べている「スキル」とは、私たちの知識や経験の総体のこと。

私の例でいう「新聞配達」は一般的にはスキルではない。ただ、スキルを「知識や経験の総体」と考えると、あてはまる。

・網の目は、他者や文化などの環境的な支援を受けながら、徐々に能力の網の目を形作っていく、一人で高めていくことができない。
置かれている環境や取り組むタスクと相互作用することによって、様々な能力が徐々に網の目を強固に張り巡らせていく形で成長していく。

お客さんに笑ってもらったとか、高校時代までのラジオ番組への投稿経験とか、落語研究会の同僚を笑わせるためとか、自分以外との相互作用で成長していく。

成長のプロセスにあらかじめ決められた順番や形というのは存在しない

既に持っている「スキル」や、環境に応じていろんな形で成長していく。人それぞれ異なる。

さて、ここからが本題となる。

本題:「意味ない」と判断したらやめたくなる人に、「目的を考えずに学ぶ効果」を伝えたい

「意味ない」と判断してやめる、を図にしてみる。

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この状態は、以下のケースを想定していない。

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私の落語の例でいくと、仮に新作落語をつかって大会にいい成績を残すことを目的としていた場合に、古典落語はいらないと新作落語ばかり練習するケースは近いかもしれない。古典落語で基礎力をみにつけることで、新作落語に必要な力がわかる、というルートを想定しているのか、ということだ。

ただ、

成長のプロセスにあらかじめ決められた順番や形というのは存在しない

だから、いろんなケースがある。ここでは、学習停滞が起きている状態について話しているから、「意味ない」と判断してやめる、は以下の図のほうが正確だ。

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本人的には新しいチャレンジや試行錯誤をしているつもりだろう。ただ、何度繰り返しても目的に到達しない場合は、何かを変えたほうがいい。

(以下、私が妄想する読者の反応)
なるほど、確かに目的に到達せずに、ずっと右往左往してることはありそうだ。でも、「一定水準以上に達したら、実は追加で何かが必要だったとわかる」と書いてるけど、一定水準以上っていつまでやればいいの?やめるタイミングがわからないんだけど・・・。

一定水準以上とは、当初自分が想定していなかった能力や気づき、経験が得られるまで、だ。先ほどのこの図で説明する。

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これをもっと詳細に書くと、こうなる。

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当初想定していない「何か想定外の学びを得る」経験は誰もがあるだろう。そこからの次のステップは、各自の過去の経験との組み合わせで変わってくるので、どうなるかはわからない。

まとめるとこうなる。何かしら停滞していると感じたら、次々と新しい「打ち手」に飛びつかない。いったん目の前の「打ち手」に集中して、何か想定外の「発見」が出てくるまでやってみる。想定外の発見と、過去の経験の組み合わせで打開策が出てくる可能性は高い。

「目的を考えずに学ぶ効果」はもうひとつある。

いままでの話は、「当初目指していたゴール」に向かう方法だ。実際には、「目的を考えずに学ぶ」ことで、目指すゴール自体が変わることがよくある。つまり、当初目指していた目的へ到達する方法は見えてきたけど、そもそもこれが目指す方向なんだっけ?という状態になる。

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そしてこれが、「わかったと思ったのにわからなくなったりする」の正体ではないか。

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個人的にこの状態になると、今まで考えていたことが間違えていたと「ガッカリ」する。そして、1分以内に「あ、そうだ。これが起きたということは、テンション的には下がるけど、前進したということだな」と頭では理解する、というルートをたどる(テンションはあがらない)。

つまりテンションがさがると、前進するのだ。なんとなく前進するとテンションがあがりそうだが、前進した瞬間はガッカリする、というのはポイントだと思われる。

最後にお願い:あなたの経験を教えてください

読んでいただきありがとうございました。これを読み「目的を考えずに学んでみた経験」や「わかったとおもったのにわからなくなった経験」があったらツイート+コメントしてみてください。見つけて以下にツイートを引用しておくことで学びが増える!

なるほど!!「半強制的に興味がないことでも結果が出るまでやらされる」というフレーズがわかりやすい!!

確かに会社ごとに社員の学びを重視してるか、成果をそのまま出してくれれば別にいまの能力のままでいいと考えている会社はわかれそう

とりあえず3ヶ月やってみて、と信じてもらえる信頼貯金をどうつくるか、とかもありそう。

つながる瞬間に静かに興奮するのはいいですね!私も「おっ」で思ってるかもだけど、いままでのは何だったんだというガッカリが先に来てしまう。ただそれは全員がそうでもないということか。

あー、確かに受験勉強はそうだ。よくわからずにやっていた。ここは何かありそう。

たぶん目的をもつと、それ以外の学びの要素を外してしまうんだと思います。なので、目的あるときも、それ以外の発見を気をつけておくとなにかありそう。

計画的偶発性は近くて、本当は個人の学びじゃなくて、組織としてチームで学ぶときの『予想外の何か』の話まで書きたかったことを思い出しました!これを複数の人数でやることでかなり面白いことになるはずなんです。ここまでやってるひとなら、気づきのシェアに意味がある。

体験でわかっている人は多そうで、でも体験できてない人に説明する方法はないかなと思って書きました!

そうなんです!もうこれをベースにフレームつくって計画たてれるはずなんです、多少の偶発性を活かして。そして見える化されれば、複数チームで実施される。見える化の方法としてscrapboxなんじゃないかと。

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柴田史郎
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