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22年のなにか

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2022年に書いたもの フィクションです
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2022年4月の記事一覧

再適化2

カーテン、開けましょうか。 いや、桜が散ってるかもなぁと思って。 ーー雨は降ってませんねぇ。よく見えないですけど。月もこの角度からだと見えないと思いますよ。 桜は…、なんかもういいです。結局このベランダへのサッシの窓という画角内に映し出すことができる美しさには限界があるんですよ。 いや、限界を自分が決めちゃってるだけなのかな、もしかして。 「私に内在する無限の可能性…!」みたいな話をしたいわけではないですよ、もちろん。 そうじゃなくて、私の能力の不足から見出せていない美があ

月光密造のクーデターテープ

慣れてくれば月灯りだけでも十分に歩いていける。それに今日は満月だ。僕が持っているなかで一番頑丈な靴を履いてきたし、ずっと歩いても暑すぎないくらいの重ね着、頭にはタータンチェックのハンチング、完璧だ。 立ち止まって空を見上げる。あの子も月を見ているだろうから月にはあの子の顔が映っていて、あの子が見上げている月には僕の顔が映っているのだ。だから怖くないし、不安なんて何一つない。 僕は背中のリュックを後ろ手に触って、その中でガチャガチャと鳴っている瓶たちを大人しくさせようとする。丈

再適化 reoptimize

ああ、ずいぶん遅い時間まで起きてしまいました。 空には月が出ているかもしれません。 いや、今日は夜半から雨の予報だったかも。 いずれにせよ私はベランダの扉を開けたりはしません。花粉が入ってきますからね。 だから月が出ているかどうか確かめる術はありません。正確にはネットでなんらかのライブカメラとかを探せばいいのかな。まぁしませんが。面倒くさいから。 今私は二つのことを言った気がします。 ひとつは花粉症によって私の行動の選択肢が奪われているということ。つまり不可抗力による可能性