2022/02/09
先日、職場で隣の席の人に「仕事中暇なとき、何してます?」と訊かれたので、後ろめたさを感じながら、馬鹿正直に、「青空文庫を読んでいます。」と答えた。彼は青空文庫を知らず、興味を持ってくれたので、太宰治の『ダス・ゲマイネ』のURLを送った。
あれから一週間経った。
今日、突然、「『人間失格』をご存知ですか?一昨日読み終わって。でも、僕には少し難しかったです。」と言われた。
え、めっちゃ読んでくれてるじゃん。
思わず、「好き嫌いが分かれますよね。でも面白いのは、太宰は実際に女性との心中未遂を繰り返して、その経験をもとに書いているんですよ。最期も、愛人と心中して死んじゃったんです。」と文学オタク丸出しで話してしまった。
出社してよかった。嬉しい。今日ずっと嬉しい。ありがとうございます。
その人は明日、退職する。明日は大雪の予報で在宅勤務の為、顔を合わせるのは今日で最後。
年始に退職の話を聞いてから、会うたびに「辞めないですよね?」「辞めないでください。」「辞めないって言ってください。」と、しつこく声をかけていた。その度に、「もう決まったことなので。」と笑いながら答えてくれた。
そして今日も、いつもと同じように、「お疲れ様でした。」とだけ挨拶して別れた。
本気で退職を取り下げてほしいとは思っていない。ただ、惜しむ人間が居ることを示したかった。
それにしても、最後に太宰の話をふってくるととは。
連絡先も交換していないし、もう二度と会うことはないのだろうけど、度々思い出す存在になった気がする。