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銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(22)量産型ひまわりの七日間

 銀河フェニックス物語 総目次
<少年編>第十五話「量産型ひまわりの七日間」(1)  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21
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「坊ちゃん大丈夫ですか?」
 馬乗りになったバルダン軍曹が僕を見ている。

「僕は殺されましたね」
「そうですな。俺は逃しませんから」
 白兵戦の訓練中だった。僕が集中を欠いた一瞬だった。軍曹に背後を取られ転がされた。
「珍しいですな。坊ちゃんに隙があった」
 僕が身体を起こすと軍曹は隣に座った。
「考え事をしていました」
「訓練中に?」
「これは、実際の戦地でも考えることかも知れません」
「ほう、何を考えていたんですか?」
 僕は正直に答えた。
「人を殺すということです。そのための訓練をしていますが、実戦で自分は迷わずにできるのだろうかと」

 レイターとの会話が頭から離れない。あいつは、直接、他人の命を奪ったことがある。そして、苦しんでいる。
「難しいようですよ」
 軍曹はまるで他人事のように話した。バルダン軍曹は地上戦で功績を上げてアレクサンドリア号に呼ばれた。かなりの人数を殺害しているはずだ。
 
「軍曹は戦地でどうだったのですか?」
「その質問は命令ですか?」
「話したくなければ結構です」
「別に隠しているわけでもないんで、いいですけどね。躊躇なく殺しましたよ」
「それは訓練の成果ですか?」
「もちろんそれもあります。ただ、それだけでもありません。俺が生まれつき持ってる攻撃的な気質ですな。初めに言っておきますが自分は人を殺すのは好きではないです。敵が死んだ時の感触を思い出すのも嫌いです。でも、仕事ですから殺せます。戦地からの帰還時にカウンセリングを受けさせられたんです。戦闘は激しくて肉弾戦で物理的に人と人とがぶつかっていました。部隊のみんなは人を殺した罪悪感とかで結構メンタルやられていましたが、俺は平気でした。罪悪感はありますが、仕方ありません。話し合いじゃ解決できなかったんですから。迷いがないから先陣を切って突っ込める。昔からこういう人間は少数ながら一定程度いるそうです。軍隊には必要な人材だと言われましたよ。だから、アレック艦長は俺を呼んだんです。似たような話を、裏社会からスカウトされた時も言われましたけどね」
「裏社会からスカウト?」
「ええ、マフィアを半殺しにしたら、見込まれたんですよ。俺はそこから逃げるために入隊したんです」
 バルダンが口をゆがめて笑った。
「坊ちゃんは、苦しむかも知れませんね。敵を殺す状況になったら」
「どうしてそう思いますか?」
「だって、今からそのことを考えてるんですから」
「そうですね」
「でも、立場が坊ちゃんを支えるんじゃないですか。俺なんかより、背負っている物の重さが違います。坊ちゃんは人を殺したくない。けれど、人を殺す指示を出さなくてはならない。逃げられない状況は、強さになります」
 死線を潜り抜けた人間の言葉は重い。

 司令本部で遺族と対面した時が頭に浮かんだ。少年の冷たく震える手の感覚がよみがえる。僕は逃げられない。
 そしてダグに追い詰められたレイターも、また逃げ場を失っていた。
(23)へ続く


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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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