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202407鑑賞ログ

 7月の鑑賞ログ。Filmarksはこちらから。
 タイトルの後ろの数字は製作年。ネタバレ含むので見たくない人は気をつけてね。
 記事内で用いている画像やあらすじは全部引用です。なにか問題などありましたらご指摘ください。
 7月はなんか……邦画見てないですね! 並べて気が付きました。まあでも8月は邦画見る予定あるから……バランス取れるか。この本数しか観てないとあんまここで喋ることないな。かなしっ。




7月のベスト

 悩むな~~~!! 悩むけど……ホールドオーバーズかも。唯一劇場で観た作品というのも大いにありますが……全体に流れる雰囲気とままならなさが好きでした。観られて良かった。


Pearl パール(2022)

ダンサーを志ざし、スターの華やかな世界に憧れるパール。人里離れた農場で、厳格な母と体が不自由な父に育てられた彼女の愛への渇望が、スターへの夢を育み、両親からの異常な愛が、その夢を腐らせていく……。籠の中の無垢なる少女が抑圧から解き放たれたとき、比類なき無邪気さと残酷さをあわせもつシリアルキラーが誕生する!!

Pearl パール公式サイト

 ずっと見たかったやつ。公開当時タイミング逃してたので、アマプラに下りてきてくれて嬉しかったです。前作であるところのXは未視聴なのですが、雰囲気がめちゃくちゃ可愛かったので気になっていた……。
 全体的に少女めいたポップなセンスで切り取られ、終始画角などにも可愛らしさに気を配られている愛らしい画面や彩色の作品。オープニング・エンドロールともに往年のアメリカ映画のような雰囲気があり、不穏さとのバランスがまたキュートです。
 この塩梅を上手いこと保っているのは間違いなく主演のミア・ゴスで、可愛らしさと狂気と無垢さを孕んだ利己的な姿勢の表現が卓越していました。
 序盤のガチョウ殺し、ここはいうてまだ殺さんやろwそれっぽい演出だけしておいて殺さないパターンwなどと舐めながら見ていたら全然さっくり殺してきて笑った。初っ端から異常性を隠さない潔さ。
 母親からの抑圧と束縛で雁字搦めのパールが解放されていく様が気持ち良いといえば気持ち良いのですが、序盤から容赦なくガチョウを殺してくるあたりからもわかるようにパールも別にそんなめちゃくちゃ頑張って必死に良い子を演じているというわけでもなく、全然普通に躊躇いなく母親の言いつけを破る。こいつが母親殺すの時間の問題すぎるだろ、と思っていたのでこここが辿った経緯は少し意外だったかも。結局殺すんですが。
 父親についても「邪魔だから殺す」ではなく「置いていくのが忍びないから殺す」という理屈に基づいており(このときは失敗したが)、頭のネジが基本外れている。本人にも自覚はあるようで、本人なりに夢を叶えて幸せになるために行動しているのだがどうにも癇癪が抑えられない上に特に説明もなく最初から選択肢に殺害が入り込んでいる人間なのでもう手に負えない。
 己の過ちを告白するシーンで上映技師の殺害についてはノータッチだったのもここは衝動的な殺害でありなんの理屈もなかったことを己で理解しているのか、言い訳どころか告白すらしなかったところは面白かったです。どうやっても取り繕えないことは言いたくないあたりは正常なのなんなんだよ。
 特徴的なダンスシーンが複数あり、どれもユニークで目が離せない。用いられるアイテムなんかもずっと可愛かったり不気味だったりでなんだかチャーミングなんですよね。疑似性交相手の案山子、どんどん蛆の集る豚の肉。こうして書くと異常性の象徴でしかないんですが……。
 義妹が告白を聞かされているシーンは今すぐ逃げろ! 早くこの家を出ろ! と手に汗を握る気持ちと行け! そこだ! こいつ殺せるぞ! 逃げられる前にいけ! という野次を飛ばす気持ちとの両方になれて楽しかったです。やっぱこういうのがシリアルキラーの出てくる映画の魅力ですね。
 パールの狂気的な笑顔がひたすら映されるラストカットも良い。


ホーム・アローン(1990)

驚異の世界的大ヒットを放った、スーパー・コメディ第1弾!パリでクリスマスを過ごそうと飛行機に乗り込んだ15人の大家族。だが、飛行機の中で思い出した大事な忘れ物は……8歳のケビンだった!家に取り残されたケビンは、一人の自由を思う存分楽しんでいたが、そこに2人組の泥棒が現れて……?

ホーム・アローン公式サイト

 プレイしているソシャゲのシナリオ内で明らかにこれがモデルの作品が出てきたので、どうせなら見直すかと思って視聴。
 ホーム・アローンといえばラインを大幅に超えていくガキの過剰防衛っぷりを楽しむ映画ですが、今見ると過剰防衛シーン自体は後半30分に集中しており、それ以外は家族の描写と泥棒とのすったもんだの伏線及び前振りに使われており、脚本内に一切の無駄が存在しないその完璧な構成に舌を巻きました。名作ってすごすぎる。あらゆる描写に意味があり、きちんと繋がっていくその脚本術を楽しむ作品でもあったんだなあと感嘆しました。
 作中で使用される讃美歌がわかるようになってたあたり自分の成長(大人になったのだな~という……)を実感できて面白かったんですが、Carol of the Bellsってあっちでも不穏な空気を連想させるものとして扱われてて笑いました。これやっぱちょっと怖いよね。これ書きながら口遊んでたら通話先のフォロワーに「え? 今なんか怖いこと起きてる?」って言われてウケました。せっかくなのでYouTubeにアップロードされてる動画のリンクを貼っておきます。オタクがCoC版も作ってるのでそっちもおすすめ。


 ただやっぱホリデーに家族と楽しむ作品としてはガキが泥棒相手にやらかす迎撃が初手から躊躇なくライン超えてて本当に面白い。絶対にこいつらを殺すという意思の強さがえげつないんですが、泥棒たちは泥棒たちで確実に死が見えてくる数々のトラップを食らっても一切引かないので怖かったです。その不撓不屈の精神はどこから来るんだ。
 全く覚えてなかったんですが、下ネタもほんの微量含まれててめちゃくちゃ笑いました。このへん家族と見て大丈夫なのかなあと不安になりつつ、実際私も家族と見ていたのでまあ大丈夫なのでしょう。
 あの頃はとにかく子どもが大人をこてんぱんにする作品としか思っておらず、それはそれですごく楽しく見ていたのですが、改めて見直すと家族の絆の話でもあり、ちょっと泣いてしまいました。
 やっぱ名作って何度見ても面白い。


SNS-少女たちの10日間-(2020)

2020年、1本のドキュメンタリーが世界を震撼させた。そこは巨大な撮影スタジオに作られた3つの子供部屋。幼い顔立ちの3名の女優が、“12歳・女子”という設定の下、部屋に設置されたPCを使いSNSで“友達募集”をしたところ、なんと10日間で2,458名もの成人男性がコンタクトをとり、卑劣な誘いを仕掛けてきたのだ。撮影されているとは気付かず、未成年に対する容赦ない欲望の行動は徐々にエスカレートしていき…。

SNS-少女たちの10日間-公式サイト

 これもずーっと見たいと思っていた作品で、ようやくアマプラに下りてきてくれたので鑑賞。
 チェコのドキュメンタリーなのですが、ま~~~~~……似たようなことって世界中どこででも起きているんだなあと暗澹たる気持ちになりました。
 未成年の時分からインターネット及びSNSに触れていた女性なら、大なり小なり似たような経験はあるのではないでしょうか? 悍ましいね。悍ましいよ。
 12歳の女の子が自分たちのテリトリーに現れた瞬間、とうに成人している、あるいは孫がいてもおかしくない年齢の人間が夥しい数群がってくるのが恐ろしい。作中でもはっきり異常者と明言されていましたが、本当に異常なんですよ。真っ当な成人は見知らぬ実在の未成年を恋愛・性愛の相手として選ばないはずなのですが、この年代の少年少女こそをはけ口として狙っている異常者が世界にはこんなにこんなにこんなにいて、もう、本当に嫌としか言いようがない……。
 こういう奴らって本当にテリトリー内にポップアップしてきた少年少女のことを自分のはけ口としてちょうどいい属性を持った性欲を満たすための道具としてしか見なしておらず、やりとりが始まった瞬間性器や自慰行為を見せつけてくる。本当に同じ人間として認識できないんだと思います。
 作中性的な意図を持っていないとして描かれていた青年がいましたが、彼にしても恋人がいるにも関わらず12歳の女の子と接触を持とうとした人間であることには変わりなく、正直別に真っ当な人間とは全く思えなかったです。私は恋人がSNSで12歳の少女と積極的に接点を持とうとしてたら普通にドン引きですけどね……。
 今はもう老若男女問わず誰しもインターネットから離れて生きていくことなど不可能に等しいので、幼い子どもを持つ親にこそ見て欲しい作品でした。これがドキュメンタリーというのが…………。嫌だよ~~ッッッ!


ファウスト(1994)

奇妙な地図に導かれた男が不気味な建物にやってきた。地下には劇場があり、錬金術の実験室や食堂にもつながる奇妙な場所だった。現れた悪魔に誘惑された男は、あらゆる快楽と知識と引き換えに、魔王・ルシファーに自分の魂を売り渡す契約を交わす。

期間限定無料公開時の記事

 上記からのチェコ繋がりというわけではないのですが、チェコ出身の監督として最も有名な人物のひとりであろうヤン・シュヴァンクマイエルの作品。ファウストは見たことなかったので、YouTubeの期間限定無料公開で話題になってたしこの機会に見るかーと思い鑑賞。結局期間内には見られなかったためアマプラで見ているのですが……。
 シュヴァンクマイエル作品って……やっぱり気持ち悪い!! です!! ホーム・アローンが一切の無駄のない脚本だったのに対し、今作(というかシュヴァンクマイエル作品全般)はこれってどこまで意味があってどこまで読み取ればいいんだ……!? という難解さとナンセンスさがドバドバ。でもこの生理的嫌悪感とアニメーションや音やセリフの気持ち良さがなんだかクセになってしまう。いつ見ても本当に食事シーンが汚ねえ。人形を使用した凌辱シーンなどもしっかり用意されており、そういった描写が好きな人にもおすすめ。暴力最高!
 あれだけめちゃくちゃかつ意味のわからない展開で物語が推し進められていくのに、全体通して見ると確かにひとつの物語として繋がっている構成の美しさ。
 この気持ち悪さと奇妙な美しさの両立が永遠に人々を魅了してやまないのでしょう。


ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023)

1970年冬、ボストン近郊。全寮制の名門バートン校の生徒や教師たちは、誰もが家族の待つ家に帰り、クリスマスと新年を過ごす。しかし、留まらざるを得ない者もいた。生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている古代史の教師ハナム。勉強はできるが反抗的で家族に難ありの生徒アンガス。ベトナム戦争でひとり息子カーティスを失ったばかりの料理長メアリー。雪に閉ざされた学校で、反発し合いながらも、孤独な彼らの魂は寄り添い合ってゆく――。

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ公式サイト

 今月劇場で映画観てねえ! ということにギリッギリで気付き、どうにか滑り込んだ一本。
 面白かった!! なんか結果としてチェコ作品とホリデーに置いてけぼりにされる作品しか観てないのか? みたいな月になっててウケます。
 教師であるハナムの役者さんが斜視の方なので斜視萌えのオタクに強くおすすめ。作中でも何度か言及され、斜視ならではの絆の表現もあり嬉しい。
 なんか良い意味で思っていたのとは違う展開が続いて面白い。置いてけぼりにされた少年たちが絆を深め孤独に寄り添いあっていく話なのかと思いきや、そこからさらに置いてけぼりにされる少年が発生する。あ……あんまりだよ!
 あんまりなんですが、そこから年代・性別・人種のなにもかもが違うそれぞれが寄り添うでもなく近くで暮らしていく日々が続き、その優しさが心地良い。
 もうひとりの主役であるアンガスがですね、上記の通り勉強はできるが反抗的で、家庭環境について事情を抱えているキャラクターで……「友だちという存在にみんな価値を重く置きすぎている」と本心から言う彼の見せるスマートだけれど不器用な気遣い、その上で複雑な家庭事情に由来する不安定な精神状態……お……オタクの好きな造形すぎる!!
 父親にどうしても会いたいと乞い、なんとか父親が入所している施設まで辿り着いて近況と「メリークリスマス」を伝えたときに父親から返される一言が、逆立ちしたって埋められないどうしようもない断絶を示していて、この映画の言葉の扱い方の上手さに愕然としました。
 全体的に寂しくて、満たされることなく欠けているそれぞれが限られた時間同じ場所で暮らしている、ただそれだけの優しくない優しさ。分かり合えることなどないと思っていた存在に見つける、どうしようもない似た弱さ。人生を支えるには至らない、けれどその時間があったことをきっとクリスマスが訪れる度に思い出すだろう日々。彼らが決して友だちになるわけではないのだろうなあという距離感もまた良いんですよね。
 オチについては賛否両論な気もしますが、軽率な行動の結果としては伴うべきものが伴ってしまっただけという気もして、これはこれでこの映画の持つ「優しくなさ」として良かったのかもという気もします。
 ハナムがああいう行動を選べるようになった、そのことに意味があると思うべきなのかなというふうに今は受け止めています。


総評

 7月は劇場で鑑賞した作品が上述した通り1本だけなのですが、やっぱり劇場で映画を観るという体験はものすごく好きなので今後も月に1~2本くらいはなんとかして観たいなあ……! と改めて思いました。
 どの作品も元々見たかったり好きだったりするものばかりだったので、全体的な満足感は高いです。ただその分やっぱりアンテナを伸ばしきれていないというか、新しい情報あんまり拾いきれてないかもな~というのも確かな実感としてあります。うーん。
 ただまあ8月はね、とうとう大本命! ラストマイルが公開されますから! これが私は本当に本当に本当に楽しみで……ものすごーく期待してしまっていますが、この作品ならば私の期待なんか軽々と超えていってくれるだろうと信じています。こんなふうに期待を寄せて信じることのできる作品がある人生の幸福!ワンチャンラストマイル周回妖怪になって他の映画マジで全然見てる時間ありませんでしたになる可能性すらある。
 なんにせよ、今後も無理のないペースで続けていけたらと思います。

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