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202409鑑賞ログ
9月の鑑賞ログ。Filmarksはこちらから。そのうちちゃんと更新します……そのうち……。
タイトルの後ろの数字は製作年。ネタバレ含むので見たくない人は気をつけてね。
記事内で用いている画像やあらすじは全部引用です。なにか問題などありましたらご指摘ください。
9月はいろんなジャンルを見ている感。かなりごった煮ですが、どれも面白かったです!
9月のベスト
9月のベスト……悩む……!! パリタクシーがまじでめっちゃ良かった、ものすごい泣きながら見てたんですが……この先の応援の意味も込めて、この動画は再生できません THE MOVIEで!
期待通りのものをお出ししてもらえて、めちゃくちゃ嬉しかった一作です~。今後の展開もあってくれ……。
この動画は再生できません THE MOVIE(2024年)
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ホラーDVD「本当にあったガチ恐投稿映像」シリーズを制作する編集マンの江尻とオカルトライター⻤頭の元に様々ないわくつきの映像が届く。倒産した映画会社の倉庫で発⾒されたいわくつきの DVD。⾃称世直し系動画が迷惑者を懲らしめるという名⽬で廃ビルを探索する⽣配信。お笑い芸⼈とグラビアアイドルによるどこか奇妙な街歩き番組。編集マンとしての知識や持ち前の洞察⼒で動画の裏に隠された秘密を推理していく江尻とそれを⾒守る⻤頭だったが…。
※今作品の感想はドラマシリーズ第一期終盤のネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧の際ご注意ください。
というわけでテレビ神奈川より放送されていた「この動画は再生できません」シリーズ最新作、この動画は再生できません THE MOVIE! 劇場版! おめでたーい!!
内容としては「投稿形式のホラーDVDを制作するおじさん二人が、視聴者から寄せられるいわくつきの映像に秘められた謎を紐解いていく」というもので、要するにホラーをベースにした仲良しのおじさん二人の萌えシリーズです。
ドラマは先に見ておくのが大前提の作りかな……。というか第一期のオチがオチなので、ここを先に知ってしまうとどうしても面白さと衝撃が半減してしまいます。ここはもう仕方がない。
現実的な答えを導き出しつつ終盤に意外性のあるオチを用意するのがひたすら上手いシリーズで、オチまでの話運びがとにかく面白い!
このシリーズに期待するものが全部詰められていた、素晴らしいエンタメ作品でした! やっぱり見ていてとにかく先が気になってしまう楽しさのある作品なんですが、シリーズ第二期から人死に・殺人要素が解禁されたのもあり、怖さで言うと今までで一番良かったです!
おじさん二人のバディものなので正直所謂キャラ萌え・関係性萌えみたいなところも大きい作品なのですが、江尻くんと⻤頭さんが今作でナチュラルに同居始めてて笑ってしまった。⻤頭さんって地縛霊とかではなかったんだ!? 江尻くんただでさえ仕事で爆になってるのに自宅に⻤頭さんいるのマジでもう彼女できたとてすぎる。⻤頭さんのリクエストなんでしょうが、遺影がしっかり飾ってあるのも面白い。警察官とか自衛官とかそのへんのラインの公務員ならともかく、彼氏の家に死んだ上司の遺影飾られてたら気まずすぎるだろ。
個人的にはドラマ二期あたりから本作における静と動のメリハリがかなりつくようになったというか、言っちゃうとこう……前半少し退屈になっちゃったなーと思う部分がないではないんですが、そこまで含めて後半がしっかりめちゃくちゃ面白いので問題ないです。二期あたりから期待値の飛び越え方がものすごくなってきており、結果的に満足度は跳ね上がっている。超面白い。
パンフレットの仕様も含め、本作の内容的にも使える予算が目に見えて増えてて感動もひとしおです。入場者特典が用意されているのにもビックリしたくらいなのに。
本シリーズは取り扱う内容的にも最近の撮影技術、みたいな部分の話が多かったのですが、劇場版は一気に世紀末~00年代初頭のセカイ系の雰囲気がふんだんに散りばめられていて大変良かったです。このコンテンツをこういう勧め方するの意外なんですが、本当にあの頃の厭世的で行き詰まったような空気感が好きな方におすすめ。いや、最終的には本シリーズのいつもの味になっていくのでアレなんですが……。
映画ならではの部分で言うと、作中で取り扱う映像が映画になったことに加え、エンドロールにもしっかりギミックが仕掛けられており心憎い!
ツッコミどころは多々ありつつ、いつもの流れとホラー要素をスケールアップ、そしてオチでもきっちり驚きを! と描かれた、楽しい劇場版でした。話……というか、今を生きる人間であり未来だってある江尻くんの前進が描かれたのも良かったですね。
続きも作ってほしい……作ってくれないことないよな!? それなりに続いてきた作品だからこそフォーマットが確立されており、その枠の内外で制作を続けるのは難しいとは思うんですが……制作陣的にはまだやりたい話はあるみたいなので、この先も長く続いてくれたら嬉しいですね!
銀河鉄道の夜(1985年)
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宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」を原作に杉井ギサブローがアニメーション映画化。登場人物のほとんどがネコの姿で描かれているのが特徴。星祭りの夜、一人で空を見上げていたジョバンニは、そこに現れた行先不明の汽車に乗り込む。
ふと映画の上映スケジュールをチェックしていたらタイミング合いそうだったので鑑賞。
銀河鉄道の夜ってあらゆるコンテンツのモチーフに使われ過ぎているため、そういった作品を見たり読んだり、原作もちらっと読んだり調べたりしているはずなのですが、なんかしっかり内容を思い出せないがち。それは私の頭が悪すぎるだけだろ。オタクならもっとしっかり宮沢賢治に向き合うべき。
登場人物が一部例外を除き全員動物に置き換えられているのですが、それがよりこの作品の空気を幻想的なものに仕立て上げている。生々しくて嫌な部分も、少しだけ遠のいて感じられます。物語を彩る音楽もかわいらしくって幻想めいていて良い。
そういえば銀河鉄道の夜も行きて帰りし物語なんですね。なんか……成長どころか喪失と同時に帰還したけど……。でも、ジョバンニは「ここよりはじまる」んですよね。カンパネルラと、どこまでもどこまでも一緒に。
細部がとにかくロマンチックで不穏で綺麗で、どこを切り取っても印象的な作品なので、カンパネルラの死という衝撃的であるはずの出来事もなんだか絹の布のようなワンクッションとともに受け止めてしまう気がする。
アニメーション作品としてすごく美しく作られていてとても良かったんですが、エンドロールで「春と修羅」の朗読が入るという本来であれば手放しで賛美するべき演出が、最近のインターネットのせいで一気にインターネットあじになってすごかったです。オタクが悪い。
いや別に誰も悪くはないんですが、ちょっとどうしてももう冒頭の美しい一文がインターネットから切り離せなくなってなってしまったというか。一部のオタクだけの話なんだけど。
もしかしたらなんのこっちゃわからない人もいるかもしれませんが、その感性を今のまま保っていてほしいので詳細は割愛します。
わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
うーん、インターネットは置いといて、やっぱり文章に幻想的な雰囲気とやわらかさ(これだけ漢字を使ってるのに!)があって良すぎる……。
ハリー・ポッターと賢者の石(2001年)
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J・K・ローリングの傑作ベストセラー小説『ハリー・ポッターと賢者の石』を映画化、全世界に魔法をかける。
幼い頃に両親を亡くし孤独で誰からも愛されない日々を送っていたハリーは、ホグワーツ魔法魔術学校への入学を許可されたことで人生が一変、額の傷に導かれるようにして運命の輪が廻り始める。
深いキャラクター造形、絢爛豪華な演出、魔法のアイテムや魔法界独特の文化、そしてスピード感溢れるスポーツ「クィディッチ」…想像を超えた世界を体験。あなたの家も魔法にかける。9と3/4番線から新たなる冒険が始まる!
説明不要!! 言わずと知れた有名作!!
もちろん私も例に漏れず全作鑑賞済みではあるんですが、9月はたまたまご縁がありまして、本作の続編にあたる舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」を観に行く機会に恵まれたため、舞台鑑賞後にそのテンションのまま本作を見返しました。よく言われることではあるんですが、ハリポタを比較的気軽な気持ちで見られるのって第三作である秘密の部屋までが限度で……。ハリーとシリウスの交流や、炎のゴブレットのダンスシーンとかも好きなのですが! が……。
相変わらずいつ見ても面白かったです。
2001年製作にも関わらず、壮大かつファンタジーな魔法の世界観を表現する美術・技術力に一切の不足を感じない。もちろん今の技術でブラッシュアップしたらさらにもっと良くなるんでしょうが、全然本作でしっかり満足できるというか……。今の子が見たらまた違うのかもだけど……。
時代を経て愛される有名シリーズならではの強みですが、やっぱり音楽が良いですね! ハリポタは! 誰もが知っているあのBGMが流れてくるだけで一気に世界観に引き込まれていく。
賢者の石、記念すべき第一作だけあってもーーーーキャストがみんな幼くってかわいいかわいいとにかく可愛い。人種柄かメインキャストの成長の速度たるやものすごいので、なんだかんだ「幼さ」を存分に堪能できるのって賢者の石が一番です。
まだハリーと友達になろうとしていた時期のマルフォイが見られるのもウケます。全体総量から考えると希少すぎる。
賢者の石というタイトル、今ならこれだけでファンタジー心を擽られるわくわくの詰まったものだということはよくわかるんですが、初見当時はなにぶん私自身も幼く、「賢者の石」ってゴールデンスニッチのことだったんだ! というなんにもわかってない理解の仕方をしたことを覚えています。
今でもこのときの間違った認識が謎に強烈に残っているせいで、ファンタジー作品を読んだときに「賢者の石」が出てきてもハリポタを連想する速度があまり早くない。たぶんハガレンでちゃんと理解した気がします。
本編内時間軸で人死にが出ることもあり、ハリポタは炎のゴブレットからが兎角暗くなる・重くなると言われがちで実際その通りではあるんですが、賢者の石のときのクィレル・ヴォルデモート周りの描写もしっかり不気味で悍ましいんですよね。そこに辿り着くまでのワクワクファンタジー少年少女アドベンチャー感でなんとなく誤魔化されてしまうんですが……。クィレルの後頭部ガチでキショすぎる。あんなもんキッズに見せるな!
かつてのダニエル・ラドクリフの容姿があまりに可憐すぎるだけで、ハリーってこの頃からしっかり性格悪くて面白い。まああの家庭環境で良い子に育つ方が怖いんですが……。賢者の石見る度にダーズリー家に預けるのはともかくダンブルドアってちゃんと養育費振り込んでる!?!? ってめちゃくちゃ不安になります。両親の遺産をあそこでやっとハリーが受け取れるのって苦しい。
作中で一番好きなキャラクターはルーナ・ラブグッドです。
シザーハンズ(1990年)
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ティム・バートンの映像マジックで贈る、甘く切ない現代のおとぎ話。
丘の上の広い屋敷に年老いた発明家が住んでいた。彼はたった一人で人造人間エドワードを作っていたが、完成間近に急死。エドワードはハサミの手のまま取り残されてしまった。化粧品のセールスで屋敷を訪れたペグは気の毒に思い彼を家に連れて帰る。エドワードはそこでペグの娘キムに恋してしまうが…。
実は未見だった作品。いい加減見るかーで鑑賞。
ティム・バートン監督作品だけあって世界観がやはり可愛らしく、御伽噺めいている。その上でメインに据えられるシザーハンズであるところのエドワードの造形の不気味さが良かったです。このバランス感覚がいかにもティム・バートンっぽくて良い。
作中における母の要素を一手に担うペグがまあやはり現実離れして優しく、両腕が鋏になっており自身も含めて触れるものみな傷つけてしまうエドワードにしかし誰もが優しい。ペグの娘であるキム以外。
キムはかなり最初からエドワードの存在を受け入れがたく思っており、どちらかというと一番観客の感情に近くて然るべき登場人物なのですが、キムの登場までにかなり「やさしいせかい」が描かれていくので、まあこの感じならキムもどうせ絆されていくのだろう……とある種の微笑ましさとともに見守ってしまう。
それはそれで間違いではないのですが、物語が進むにつれどんどんどんどん……話が……不穏に!! 全く別物ではあるんですが、不安な方向に話が転がっていく様をはらはら見守るこの感触、ダンサー・イン・ザ・ダーク鑑賞時にちょっと近いかも。悪口じゃないです。
あんなに優しかったはずの町の人たちがエドワードを悪く扱い始めていく中で、キム(と一家)だけはエドワードに寄り添ったままでいてくれる。
正直人死にが出るタイプの作品ではないと思っていたので、終盤の展開には結構ビックリしました。
シーン一つ一つどこを切り取っても絵になる作品なんですが導入から結末への収束も美しく、御伽噺として完成されていました。いや、御伽噺と括るには結構生々しく嫌な話もされたんですが……でもオチが綺麗なんだよなあ……。
パリタクシー(2022年)
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パリのタクシー運転手のシャルルは、人生最大の危機を迎えていた。金なし、休みなし、免停寸前。このままでは最愛の家族にも会わせる顔がない。そんな彼のもとに偶然、あるマダムをパリの反対側まで送るという依頼が舞い込む。92歳のマダムの名はマドレーヌ。終活に向かう彼女はシャルルにお願いをする、“ねぇ、寄り道してくれない?”。
人生を過ごしたパリの街には秘密がいっぱい。寄り道をする度、並外れたマドレーヌの過去が明かされていく。そして単純だったはずのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かす驚愕の旅へと変貌していく!
90分くらいでさくっと見られる作品ないかなーと適当に探して出てきたこちらを軽い気持ちで見始めたんですが、め……めちゃくちゃ面白かった……!!! もうすっごい泣いちゃって、公開当時出会えなかったことを大変惜しんでしまいました。
いい加減自覚があるんですが、私はこういうヒューマンドラマがとっても好き……。日本版キービジュアルの煽り文かなりしゃらくさいですが、こういうのはもう全部無視してください。作品の本質とは特に関係ないので。
フランス映画ってこうやって真っ当にお洒落に作られにくるとマジで細部のセンスが良い。タイトル通り舞台がパリなのでもうさらっと映る場面だけで目が楽しいんですが、その上できちんと苦しさを描いてきてくれてもうぐいぐい引き込まれる。
年老いたマダムであるところのマドレーヌの過去がしっかりものすごく、あっそこから……そこまで……そしてそんな……!? みたいな聞きごたえありまくる過去話がどんどん展開されていくので、擦れて疲れ果てたタクシー運転手のシャルルが思わず耳を傾けていってしまうのも納得。
チャーミングなだけではない老婦人と疲れたタクシー運転手のふたりが小さな旅の中で育んでいく絆がとっても良くって、マドレーヌの過去話にシャルルの今に、そして築かれていく性別も年代もまるで違う二人の友情が、もうほんとに、本当~~~~~に……良くって~~~~……!!(大号泣)
オチもうすっごい泣いちゃって、「そんなのって嫌!!!!」の感情と確かに残された絆と未来とで、もう……ぼろぼろ泣いちゃって……作品自体の方向性とはかなり違うんですが、アメリとかミッドナイト・イン・パリが好きな人は……好きなんじゃないかな……!!
今まで見てきたフランス映画の中でもトップクラスに好きかも。いや本当人間同士の絆の話で嬉しかった。
総評
というわけで名作多めの9月でした。良い映画ばっかり見られてほくほく。
応援バフでこの動画は再生できません THE MOVIEを9月ベストに選びましたが、気持ち的にはかなりパリタクシーに寄っていたのかも。でも本当に素晴らしい作品で……。最近とみに友情が刺さりがちなのもあります。友情って純愛すぎる。
今年の目標として走らせ始めた「映画をたくさん見る」ですが、この10月でそろそろ2024年の総鑑賞本数が100本行きそう。ていうかたぶん映画館に行って観た回数とかを含めると確実に超えてはいるんですがそれはそれ。
いい加減、いい加減外も人間が外出して問題ない気候になってきたので、この秋冬はまた映画館いっぱい行けたら良いですね。ショーン・オブ・ザ・デッドのリバイバル上映さすがにかなり観たい。破墓もちょっと気になっている。
12ヶ月のシネマリレーで上映予定の作品も何本か気になっているので、来年もそれなりに映画観に行けたらいいな。