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時制が混ざってるのなんでですか?

JLPT N4勉強中の受講生様からのご質問。
ペーペーのヨーコはもちろん即答できず
お持ち帰り案件。

質問

テキストに載っている「誰かが書いた日記」という形のスクリプトを読んでて
疑問が湧いてきたと。

タイトル:ついてない日
今日はついてない日だった。
〜忘れてしまった。
〜取りに行った。
〜ところだった。
〜転んでしまった。
足も痛いし、服も汚れるし、大変だった。

『みんなの日本語 初級Ⅱ 本冊』より一部引用

テンス

なんで
「足も痛いし、服も汚れるし、大変だった。」
なんですか。
「足も痛かったし、服も汚れし、大変だった。」
じゃないんですか?

たーしーかーにー!
なんで急に「た形」じゃなくなったんだ?
という疑問を持つのは当然ですよね。
我々ネイティブには至極自然な流れですけど
学習者様にとっては一大事。
どんなルールが適用されてんねん?
という疑問にはぜひお答えしたいところ。

過去を振り返って述べる

●過去を振り返ってその時の様子を語る時、従属節の時制は話者の視点によって変わる。
When looking back on the past and describing the situation at that time, the tense of the subordinate clause changes depending on the speaker's point of view.
という現象があります。
この時に使われる文法が「相対テンス」と「絶対テンス」
という概念です。

*relative tense VS absolute tense

例文

例)娘は 小さい時、よく 風邪を ひきました。(相対テンスrelative tense)

相対テンス

主節の「風邪をひきました」は過去のことですので、もちろんテンスは過去形。
従属節の「小さい時」は、話者がその過去の時点に戻ってその時点の視点で述べているため非過去形になっている。
という説明が成り立ちます。
これが「相対テンス」

例)娘は 小さかった時、よく 風邪を ひきました。(absolute tense)

絶対テンス

こちらは、主節も従属節も今の時点から過去を振り返って述べているので、いずれも過去形。
これが「絶対テンス」。
これは分かりやすい。

質問の答え

相対テンス、絶対テンスの概念を当てはめると、
質問の文の違いが分かります。

例文)足も 痛いし、服も 汚れるし、大変だった。

相対テンス

「足も痛いし、服も汚れるし」は「大変だった」その時点に視点が移動して、まるでそれが今、目の前で起こっているかのように非過去形で述べていると考えられます。
*The speaker sees the event as if it is happening in the moment or still relevant

例文)足も 痛かったし、服も 汚れたし、大変だった。


絶対テンス

これは、主節も従属節も過去の出来事として語っている。分かりやすい。
*The speaker sees the event as complete and distant.

まとめ

こちらで説明したところ、納得していただけました。
日本語は従属節の動きが結構複雑ですので、学習者様は大変です。
私もまだまだ知らないルールがたくさん。
(知らなくても使えるけど。ネイティブはな。)
引き続き勉強がんばろー!

参考

日本語の時制表現と事態認知視点 https://core.ac.uk/download/pdf/147422554.pdf

3.2 小説という談話環境との関り



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